相手を見るとイラついて仕方ないとか、長年連れ添ったせいか新鮮味がないとか、単身赴任不安だとか、愛ある関係を長く続けるのは大変なことですよね。

そんな時には、子犬の写真をどうぞ。研究によれば、かわいい写真を見たカップルは時間の経過とともに相手への好意が育まれ、結婚関係への満足度もアップしたということです。

結婚の満足度を上げる鍵は”考え方”にあり

研究を行ったのは、フロリダ州立大学のマクナルティー教授ら（Dr. James K. McNulty）。米国防総省の関係者から、配偶者と離れて任務に就く軍人らの結婚生活を守るための方法を概念化するように依頼されたことがきっかけになったそうです（退役軍人の離婚の可能性は、一般の人と比べて62%も高い[2]）。研究は、米国防総省の助成金の一部を使って行われました。

これまでの研究では関係の満足度は、パートナー同士の行動そのもの、または行動の認知や評価と関係づけて説明されてきました[2]。しかし一方で「結婚の満足度は行動が劇的に変わらなくても低下する」とする先行研究もあり、行動だけで満足度を変化させることは不十分とも考えられていました。そこで今回教授らは、相手への考え方を変えることに着目し、実験で”考え方の変化と関係の満足度の変化”の関係を明らかにしようとしました。

子犬写真は結婚生活の満足度を上げる

実験に参加したのは、結婚しているカップル144組（平均年齢28歳、婚姻期間は5年未満）。6週間の期間にわたり、3日ごとに画像セットを見せられました。参加者は2つのグループに分けられ、一方はパートナーの写真と子犬など良いイメージの写真セットを、もう一方はパートナーと無機質な写真（ボタンなど）の写真セットが提示されました。

参加者はさらに、2週間ごとのテストと質問調査により、写真セットを見た影響が確認されました。パートナーの写真と単語を組み合わせるテストにより相手への気持ち確認され、関係の質と満足度については質問票により調査されました。結果、子犬などの良いイメージを見たカップルは相手に対して良い感情を抱くことがわかりました。また、相手に対して良い印象を抱いた人は、結婚関係についても満足度が大きく向上することがわかりました。

好きでも嫌いでもなかったものを、好きなものと一緒に提示されることでポジティブな評価に変化させる手続きを『評価的条件づけ』と言います。マクナルティー教授は、この理論に基づき実験を行なったそうですが、実際の適用にあたっては懐疑的だったそうです。「評価的条件づけ理論は、これが”あるべき結果”だと示していました。ですが私は、既存理論に対しても、単純かつ結婚と関係ないものが人々の結婚に対する感じ方に影響をするというアイディアに対しても、懐疑的だったのです」とマクナルティー教授。なので結果にも「ちょっと驚きました」ということです。

人間って私たちが思う以上に、単純なのかもしれませんね。

根本的な解決は「実際に交流すること」

お相手と一緒に子犬の写真を見るだけで、幸せが取り戻せるというのなら安いもの。しかし、そうは言っても、可愛い子犬の写真が機能不全の不幸な結婚生活を救うことにはならないそうです。まぁそうですよね。今回の研究は、当初の依頼であった「離れているカップルが結婚における情熱を取り戻すための簡単な方法」について、その可能性を一つ示しただけに過ぎず、パートナーとの関係を改善する最良の方法はやはり、実際の交流にあるというのは変わりがないということです。

とはいえ、お互いの好意をアップさせるのに子犬の写真を介入させるというのは、良いアイディアのように思えます。犬が嫌なら猫でもウサギでもハムスターでも、ポジティブなイメージのものならきっと大丈夫。根本的な解決にはならないかもしれませんが、一緒に楽しい時間を共有できることは間違いありません。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Automatic Associations Between One’s Partner and One’s Affect as the Proximal Mechanism of Change in Relationship Satisfaction: Evidence from Evaluative Conditioning James K. McNulty, Michael A. Olson, Rachael E. Jones, Laura M. Acosta Psychological Science First published date: May-31-2017
[2] New Study: Puppy Photos, Pizza Make You Love Your Spouse | Time.com