子犬期の行動テストから成犬になってからの行動を予測することはできるのか?

サイエンス・リサーチ
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子犬のうちに成犬になってからの行動を予測できたら…と思う人は少なくないでしょう。一般家庭はもちろんのこと、警察犬やほじょ犬などの育成機関にとっては、早い時期に予測が立つことは労力的にも金銭的にも非常に助けになるはずです。

子犬の頃に行う行動や気質のテストは、成犬の行動を予見するのに役立つのでしょうか?

子犬の行動テストからの将来予測は難しい

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昔も今も探検好き image by Matthew Kenwrick / Flickr

2014年、Clever Dog LabのRiemer博士らが行った研究が出した答えは、「成犬の行動を特異的行動特性を予測するための初期試験の妥当性は限られている」というもの。研究者らはボーダーコリーを対象に、新生児期(2〜10日齢、99匹)、子犬期(40〜50日齢、134匹で前テストを行った93匹を含む)、成犬期(1歳半〜2歳、50匹)の3つの時期に活動を評価するテストを実施し、その結果を分析しました。

新生児期には、子犬が実験者の指をどれだけ吸うか、どれだけアクティブか、母犬から隔離された時にどれほど声を上げるかが確認されました。子犬期のテストでは、見知らぬ人への挨拶や、新しい環境を探索するかなどが確認されました。そして成犬では挨拶や探索に加え、脅威に対してどう行動するのかが確認されました。

結果、年齢間でのテスト結果の相関はほとんどありませんでした。唯一の例外は”探索行動”に関するもので、子犬期に探索を活発に行う犬は成犬になってもこの行動が多く見られたということですが、これ以外に目立つものはなかったそうです。この結果だけを見ると、子犬期の行動から成犬になってからの行動の特徴を予見することは難しいということになります。

生まれた環境が行動に影響する可能性はある

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お母さんといっしょ image by Jan Truter / Flickr

ちょっと残念な結果ですが、同時にちょっと嬉しくなる結果ではないでしょうか。家にお迎えした後の様々な経験が犬の行動を変えていくという方が、育てる側のやる気も上がってくるというものです。

一方で、犬が生まれた環境によって、将来の問題行動をそれなりに予見できるという研究も存在します。2013年に発表された研究[2]によれば、ペットショップで購入した犬は、成犬になってからの問題行動が起こりやすいということです。また、ブリーダーなどで母犬を見てから引き取った犬の方が、問題行動が生じる確率が低かったという研究[3]もあります。

紹介したClever Dog Labの研究は、同じ環境で生まれて育ち、一定の年齢になると家庭などに引き取られたボーダーコリーを対象にしたものです。すなわち良い環境で生まれ育ち、社会化期には適切な社交機会が与えられた心身共に健康な犬が対象になっていたのです。対象範囲を広げれば結果が異なる可能性があることは、心に留めておかなければなりません。

もし”最高の犬”を選びたければ、信頼できるブリーダーなどを選び、実際に会って触れ合うのが最良の選択のようです。コレン博士はブログの中で友人の話を例にとり、気質の安定した犬を飼いたいなら実際に子犬を見るべきだと述べています。ちなみに博士のご友人は、「抱っこして顔を近くに引き寄せたとの子犬の目に恐怖や嫌悪がないか」を見る方法をとっており、それは概ね成功しているそうです。

ちなみに上記のどの記述も、”保護施設出身の犬”については触れていないことを強調しておきます。保護施設にいる犬たちの出自は様々で、必ずしも劣悪な環境で生まれ育った犬という訳ではありません。あなたに出会うことで変わっていく”最高の犬”が、施設であなたを待っている可能性は十分にあります。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] The Predictive Value of Early Behavioural Assessments in Pet Dogs – A Longitudinal Study from Neonates to Adults (2014), S.Riemer , C. Müller, Z. Virányi, L. Huber, F. Range
[2] McMillan, F. D., Serpell, J. A., Duffy, D. L., Masaoud, E., & Dohoo, I. R. (2013). Differences in behavioral characteristics between dogs obtained as puppies from pet stores and those obtained from noncommercial breeders. Journal of the American Veterinary Medical Association, 242(10), 1359-1363.
[3] Westgarth, C., Reevell, K., & Barclay, R. (2012). Association between prospective owner viewing of the parents of a puppy and later referral for behavioural problems. Veterinary Record-English Edition, 170(20), 517.
[4] Companion Animal Psychology: Do Puppy Tests Predict Adult Dog Behaviour?

Featured image credit Christina Hart / Flickr

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