がんや糖尿病を探知する犬は、病気に関連する匂い分子を嗅ぎ分けることで、病やその兆候を特定します。犬を訓練するためには、まずはどの匂い分子が病気と関連するのかを同定しなければなりません。
イギリスの研究チームは、パーキンソン病を対象にした匂い分子の同定を進めると共に、犬を使った病の早期発見の手段を見出そうとしています。
マンチェスター大学のシルバーデール博士が率いるこの研究は、パーキンソン病患者ミルン氏(Les Milne)の事例に触発されてスタートしました。ミルン氏の妻であるジョイ(Joy Milne)さんは類稀なる鋭い嗅覚を持つ”スニッファー”で、診断の6年前に夫の匂いの変化に気づいたのだといいます。
研究チームはミルン夫人の協力のもと、着用済みのシャツを使った匂いの嗅ぎ分けテストを行いました。病気と診断された人6人とそうでない6人のシャツを使ったテストの結果、彼女は正確に患者が発する匂いを嗅ぎ分け、パーキンソン病を患っていることを特定しました。また、診断が出ていない一人についても、その”かすかな匂い”を頼りにパーキンソン病であると判断したそうです。8ヶ月後の診断によりその判断が誤りではなかったことが確認され、7人すべての患者の匂いを嗅ぎ分けることができました。
テスト自体は成功とも言えるものでしたが、ミルン夫人が嗅ぎ分けた匂い分子が何であるかはわからないままでした。そこで研究者らは犬を使って、新たにパーキンソン病の皮膚分泌物を検査する研究に乗り出したのです。
犬の脳の中の臭気解析に占める割合は、人間の40倍とも言われています。フワフワの尻尾を持つかわいい犬たちは、一流のバイオセンサーでもあるのです。
パーキンソン病は、脳の中の神経に異常が起こることで姿勢の維持や運動の速度調節がうまく行えなくなるなどの症状が現れる病気です。現在のところ確定的な検査はなく、脳内の関連する神経細胞が失われ始めることで診断されるそうです。このため早期発見が非常に難しく、早期に治療を開始することも困難です。嗅覚により匂い分子を特定できるようになれば、早期治療の開始により症状の進行を遅くすることができるようになるかもしれません。
マンチェスター大学らが行うパイロット研究では、2匹のラブラドールと1匹のコッカースパニエルが、700人の皮脂サンプルの嗅ぎ分けテストに乗り出すとのこと。研究者らと犬たちの活躍に期待が高まります。
h/t to Dogs could sniff out Parkinson’s disease years before symptoms appear
Featured image credit Jamie Montgomery / Flickr
糖尿病探知犬は人間の息に含まれる化学物質から低血糖症を探知する(英研究) | the WOOF イヌメディア
糖尿病1型の患者が低血糖発作を起こした時、その呼気にイソプレンという化学物質が含まれていることがわかりました。ケンブリッジ大学の研究者によるこの発見は、犬たちが低血糖症を嗅ぎ分けられる説明になる可能性を示しています。医療ジャーナル “Diabetes Care”に発表 されました。