皆さんこんにちは~ 梨、食べてますか?
こちらWOOFOO天国出張所では、みずみずしい梨が食べ放題!最近は洋梨も豊富で、ありがたいです。僕、読書犬パグのぐりも、毎日いただいております♡
「名犬ラッシー」に憧れて
さてさて、今月ご紹介するのは、『犬の力を知っていますか?』(池田晶子著 毎日新聞出版 2015年)です。著者の池田晶子さんは、『14歳からの哲学』(池田晶子著 トランスビュー 2003年)で有名な哲学者で文筆家。実は2007年に47歳という若さで亡くなられています。この本は、池田さんが亡くなられた後、著作権継承者である「わたくし、つまりNobody」が編者となって、生前に書かれた犬に関するエッセイを中心に編集された本です。
池田さんは、幼いころから動物が大好き。特にテレビで「名犬ラッシー」を見てからは、コリーに猛烈な憧れを抱いていました。が、住宅事情により、実家で飼っていたのは柴犬。おまけにこの子が、池田さんの父上に完全になついていたそうで。そんなことからも、「いつか自分で犬を飼いたい。コリーを飼いたい」と著者は思い続けていました。そしてそれが叶ったのが30代。憧れだったコリーを迎え、ダンディーと名づけて一緒に暮らし始めます。
人の心を無防備にする
コリーは大型犬。ダンディーと暮らしながら、著者は「犬の力」を感じます。
「犬の力」と、私は読んでいます。人の心をかくまで深く惹きつけるその力のことです。それはすなわち、人の心を無防備にしてしまう。それが彼らの力なのだ。(p18)
そして、無防備になった人間の心が、自分にとって心地よく、それでまた犬を愛する、と。犬はそのために神様が創られた生き物なのだ、とまで書いています。すごい。なんだかすごいぞ。犬愛が。
ダンディーは子犬の頃は子犬らしく、家の中でいたずらをして池田さんをびっくりさせたこともあるそうですが、そこはしつけをきちんとして、立派な大人になりました。池田さんのパートナーとして生活を共にし、旅行にも登山にも一緒に行き、楽しく暮らします。
だけど、当たり前ですが、犬は人より早く歳をとる。大型犬のダンディーも、10歳を過ぎたころからだんだんと弱りはじめるのです。持病も悪化し、たびたび獣医さんの往診を受けたり病院に行ったり。老犬介護について、こんなにも赤裸々に書かれている本を、初めて読んだよ。特に30キロ以上あるダンディーが、一度寝たきりになりそうになった時、著者が彼を支え、また立てるようにした顛末は感動的です。
犬との暮らしを哲学的に考える
この本の面白いところは、こうした犬との暮らしの中で、著者が実にいろいろなことを深く考え、それを言葉にして書き留めていることです。池田さんは、専門用語を駆使して考える、難しい哲学ではなくて、日常的に私たちが使っている言葉を使って哲学を語る人でした。だからでしょう。この本の中でも、たとえば老犬介護をしながら「死」について考えるのです。
著者曰く、私たちは、目の前にいる犬なり人なりの命が、「生きる」方向に向かっているのか、それとも「死ぬ」方向に向かっているのかを見極め、本人が望む方向に助けたい。でも、実は本人もどちらに向かっているのかがわからないのかもしれないから、命は難しい。特に野性味を失っている人間たちにとっては。だから、自分の意識がはっきりしているうちに、いざという時に自分は自分の命をどうしたいのか、考えなければ、と著者は書いています。これを、敬老の日が近づいたときに、老犬ダンディーと一緒に考えたそうです。
犬の本で、こういう内容の作品に、初めて出合ったなあ。あ、でもね、まったく難しくないんだよ。なんというか、池田さんが犬をきっかけに考えたことのいろいろが、普通の人が考えるよりも一歩深いところまで掘り下げられているところが面白いのね。
それに、愛犬との日常を普通につづった文章もたくさん含まれているから、どんどん読める。いろんな方向から「犬の力」を書き綴っているから。時には、「きっとこの人、会社では重役なんだろうな」というオジサマが、愛犬を前に「アタチ、エリっていいまちゅ。ヨロチクネ」と代弁している様子を描き、人をそうしてしまうほどの犬の力について語っています。あるよね、こういうの!
初代ダンディーは、15歳で天国にいきます。最後まで介護し、看取った池田さん。1年後、2代目ダンディーを迎えるのです。その後のことは本書に譲ります。
一人の文筆家であり哲学者である著者が犬とどのように暮らしたか。その暮らしの中から生まれた哲学的な考えを、楽しんでみてくださいね。
Featured image credit Scarlett2308 / Flickr
毎日新聞出版 (2015-08-28)
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