犬は人間が見ているときに表情豊かになることが、ポーツマス大学の研究により示されました。犬たちは人の視線を意識し、時には意図的に表情を変えることもあるとのことです。
動物は意図的に表情を作らない!?
人間と同じく、哺乳類のほとんどには表情があります。人間の表情も動物の表情も、感情に応じて無意識に変わるという点は同じですが、自発的・意図的に表情を変えることができるのは、人間のみだと考えられてきました。
つまり、動物は表情を意図的につくってコミュニケーションに活かそうとするのではないと考えられていたのです。
しかし私たち飼い主は、犬にお留守番をお願いすると、潤んだ瞳で口角を下げて「置いていかないで」の表情をすることを知っています。単なる感情の表出にも見えますが、私たちにアピールしようとしているようにも思えます。これは飼い主の飼い主による、単なる気のせいなのでしょうか。
気のせいではないのかもしれません!ポーツマス大学のカミンスキー博士らは実験により、犬は人の注目を浴びると表情変化の頻度が高くなることを示しました[1]。
(あの罪悪感を抱かせる悲しい目は、意図的に作られたものなのかもしれないのです!!)
家畜化の過程で”表情”も進化した
研究者らは24匹の犬を4つの状況設定に置き、その表情をビデオで記録しました。犬は1〜12歳、犬種はバラバラでしたが、全て家庭で飼育される犬でした。犬が置かれた設定は、人間が犬と向き合う設定(食べ物あり|なし)、人間は犬に背中を向ける設定(食べ物あり|なし)の4つで、撮影された犬の表情は、犬の顔分析ツールDogFACSにより分析されました。
結果、食べ物の有無には関係なく、犬は人間が見つめているときに多くの表情を示すことがわかりました。逆に人間が見ていない時は、たとえ食べ物があるときでも、表情が乏しくなることを発見したそうです。
調査結果を受けカミンスキー博士は、「犬は人間の注意を敏感に受けている。表情は単純な感情表現ではなく、積極的なコミュニケーションの試みである可能性がある」とコメントしました。
さらに、犬が家畜化の過程で表情も進化させた可能性にも言及しています。「イエイヌには独自の歴史がある。彼らは3万年もの間、人間の側で暮らし選択圧に晒されている。これが、私たちとのコミュニケーション能力に影響しているのではないか」
博士によれば、ほとんどの哺乳動物は、かなり似通った顔面筋を持っているとのこと。その中でも犬と人間は、非常に微妙で、かつ特徴的な表情を作り出すことができる点で似通っているといいます。犬は時に、人間、そして赤ちゃんと驚くほどよく似た表情をつくることができるのです(飼い主のみなさんが知っているようにね!)。
これまで、犬がコミュニケーションのために表情を使う能力があることを示した研究はありませんでした。カミンスキー博士は、「この研究は、犬の認知についての理解を前進させる」と自信を見せています。
もちろん、この結果がそのまま「犬は表情で人間をコントロールしようとしている!」ということにはなりませんが、見つめることで犬が表情豊かになるというのは、納得だし楽しくなる仮説ですよね。オマケコメントですが、猫は「リラックス、恐れ、欲求不満」の間で表情が大きく異なることがわかっています。ストレスのない猫は、頭を傾けて右を注視する傾向があるそうです[3]。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] J.Kaminski, J.Hynds, Paul & Bridget M. Waller, Human attention affects facial expressions in domestic dogs, Scientific Reports 7, Article number: 12914 (2017) doi:10.1038/s41598-017-12781-x
[2] Dogs are more expressive when someone is looking — ScienceDaily
[3] Dog Facial Expressions Are Directed at Humans – Seeker
Featured image credit Ellie Lord / unsplash