犬の身体では何が起こり何が作用して、老化が進んでいくのでしょう?
米国の研究者らは10年にわたる調査を通じて、犬の免疫系が年齢と共に変化し、感染症やストレスへの対応能力が低下することを示しました。
犬の老化は人間と似ている
研究を行ったのは、The Waltham Centre for Pet Nutritionの研究者ら。Walthamは、ぺディグリー®やロイヤルカナン®などでお馴染みのマースが所有する研究機関です。80匹のラブラドール・レトリバーについて、酸化ストレスマーカーなどが10年間にわたり計測されました。
老化とは、時間の経過と共に起こる変化すべてを意味しますが、一般的には生体が死に向かう際にみられる機能低下やその過程を指します。ヒトでは、炎症への過敏反応、酸化ストレスによる細胞DNAおよび細胞膜状のリン酸脂質の変化による疾患の増加などが注目されます。本研究は、犬についても年齢を重ねることで同様の変化が起こるかを確認する目的で行われました。
調査の結果、犬は年齢を重ねるに伴い酸化ストレスの増加(※1)、炎症レベルの上昇(※2)、細胞損傷の低下がみられることがわかりました。
論文の筆頭著者であるアレクサンダー博士は、「犬も人間のように、年齢を重ねるにつれ、低レベルの炎症および細胞に損傷を受けることがわかりました。この研究により、老化を防ぎ、遅らせるための介入のターゲットになりうるものが複数確認されました。新しい洞察は、より効果的なライフステージのサポートを提供するのに役立ちます」とコメントしています。
(※1) 8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-Hydroxydeoxyguanosine, 80HDG)レベルが51%
(※2) C反応性タンパク質(C-reactive protein, CRP)が30%増加
(※3) 熱ショックタンパク質(Heat Shock Proteins, HSP70)が86%減少
世界の犬の5匹に1匹はシニア
マースはまた、1匹以上の犬を所有する18歳以上の6,298人を対象とした調査(※4)の結果も併せて発表しています。調査結果の概要は、以下のとおりです。
- 世界のペットの犬の5匹のうち1匹はシニアである
- ほとんどの飼い主(76%)は、犬の年齢に応じてケアの方法を変えている。フードを変更したと答えたのは58%、散歩時間の短縮したと答えたのは54%
- ケアが難しいと答えた割合は、シニア犬の飼い主と若い犬の飼い主とではほとんど差がみられなかった(29% vs 25%)
- シニア犬の飼い主の65%は、獣医からのケア情報を重要だと考えている
- 栄養に関する情報(68%)と運動量に関する情報は(57%)は、飼い主がもっと知りたいと考える分野である
- 米国の犬の所有者の3分の2は、シニア犬は訓練済みで行動も良いという理由で、シニア犬の引き取りを考えていると回答した
(※4) オンライン調査。調査期間は2017年10月4日〜12日。対象となった国と回答者は、米国(1,103)、オーストラリア(1,049)、フランス(1,049)、日本(1,050)、アルゼンチン(1,001)
老化の仕組みが明らかになり、治療や介入の効果がわかってきたら、愛犬の健康寿命はもっと伸びるかもしれませんね。ご長寿ワンコが増えるような研究者たちの取り組みに、さらに注目が集まりそうです。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Janet E Alexander, PhD, Alison Colyer, MSc, Richard M Haydock, PhD, Michael G Hayek, PhD, JeanSoon Park, PhD; Understanding How Dogs Age: Longitudinal Analysis of Markers of Inflammation, Immune Function, and Oxidative Stress, The Journals of Gerontology: Series A, , glx182, https://doi.org/10.1093/gerona/glx182
[2] News Articles & Press Releases – Press Center | Mars, Incorporated
[3] Newly Published Research Shows That Dogs, Similar To Humans, Are Subject To Increased Cellular
Featured image credit Jan Szwagrzyk / unsplash
犬の老化〜シニア犬の年齢、ご長寿ワンコ、そして老齢犬に見られる特徴 | the WOOF イヌメディア
これから数回にわたって、老齢犬に関するお話をさせていただきます。以前、2回に分けてお届けした『ワンコのエイジングケア 』は、主に統合医療的な視点から執筆いたしました。今回はもう少し身近な、普段の生活に役立つ情報などを含めた内容にする予定です。