脂肪酸、タンパク質およびビタミン・ミネラルは、犬の皮膚や被毛の健康に重要な役割を果たす栄養素です。
この記事では、どの栄養素がどのように作用して愛する犬の髪や肌を健康にしてくれるのかを整理しています。
たんぱく質の役割
愛犬の被毛は、ほぼタンパク質で出来ています。摂取するタンパク質の量が少なく質が劣るものであれば、脱毛や乾燥などが現れます。日々のタンパク質摂取量のうち、30%超が被毛の維持のために使用されます[1]。
皮膚は、身体の中でもっとも大きい器官であり、水分、タンパク質、脂質などで組成されています。適切な量の栄養素が補給されなければ細胞膜は弱くなり、細菌やウイルスの侵入を容易にしてしまいます。
脂肪酸の分類と役割
脂肪酸(脂質の重要な構成要素)は、あらゆる動物の健康維持のために重要な栄養素で、特に健康な皮膚や被毛の維持に重要です。
脂肪酸のうち、炭素数が18以上で2つ以上の二重結合をもつ脂肪酸を多価不飽和脂肪酸といいます。私たちがよく耳にする「必須脂肪酸」や、「オメガ3、オメガ6」は多価不飽和脂肪酸の下位分類です。それぞれについて見ていきましょう。
・必須脂肪酸
必須脂肪酸は、種が体内で合成できないため食事から摂取する必要のある多価不飽和脂肪酸です。犬ではリノール酸、α-リノレン酸、猫ではこれにアレキドン酸が加わります。必須脂肪酸の不足は栄養欠乏を招きますが、市販のドッグフードの多くはこれらを含む十分な栄養素が含まれているので通常問題になることはありません。一方、低品質のフードを選んだ場合は必須脂肪酸が不足する可能性がありますし、完全な手作り食を与える場合はかなり注意をして素材や調理法を選択して不足しないように努めなければなりません。
・オメガ3、オメガ6
多価不飽和脂肪酸はまた、二重結合の一の違いによってn-3系列(オメガ3)とn-6系列(オメガ6)とに分けられます。
オメガ3には、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれ、魚油やアマニ油に多く見出されます。オメガ-6には、リノール酸(LA)およびその活性型、ガンマリノレン酸(GLA)、アラキドン酸(AA)が含まれ、ベニバナ、ヒマワリ、トウモロコシおよび月見草およびボラジオ油に見出されます。
市販ペットフードの多くには、オメガ6は十分な量が含まれますが、オメガ3は不足しています。一方、皮膚の問題に有益と言われるのはオメガ3脂肪酸です。オメガ3には抗炎症効果があるため、DPAやDHAを含むサプリメントの服用を勧める獣医師もいます。ただし、これらの有益な脂肪酸は脂肪分が豊富であるため、与えすぎは胃の不快感や嘔吐に繋がる恐れがあります。皮膚症状の改善を目的として与えようとする場合は、必ず事前に獣医師に確認してから与えましょう。
ビタミンとミネラル
ビタミンやミネラルは、犬の皮膚や被毛の健康に必須の栄養素です。
- ビタミンA:組成を繰り返す皮膚細胞および毛嚢の健康に必須の栄養素です
- ビオチン:健康な組織の成長を促進するのに役立ちます。ビオチン欠乏症は、健康な犬では起こりにくいものの、急速に成長する子犬でより起こりやすく、欠乏症の症状には、弱い被毛や髪色の変色、皮膚の皮膚の擦り傷やかさぶたの発生があります
- ビタミンE:強力な天然抗酸化物質であるビタミンEは、フリーラジカルの攻撃から皮膚細胞を保護します
- 亜鉛:皮膚のかゆみや炎症の他、細菌や真菌の皮膚感染症を予防します
- 銅:脱毛を予防し、髪色の維持や柔らかさ、光沢を保ちます
ということで栄養素はそれぞれに役割をもち、愛犬の皮膚や被毛に作用する訳ですから、不足分を補えばお悩み解消につながる可能性は十分にあります。しかし、特定の栄養素を過剰に摂取することは、問題の悪化や別の問題に繋がる可能性も十二分にあることを忘れてはなりません。
the WOOFのオススメは、健康な犬であれば信頼できるブランドのドッグフードを食べさせること、健康問題を抱えた犬なら獣医師と相談のうえ個体に合った食事を選ぶことです。サプリメントを使った栄養補助治療に興味がある場合は、必ず事前に獣医師に相談をしてから行いましょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] バーバラ・フュージェ, 『ペットの自然療法辞典』(2010)ガイアブックス
[2] How Nutrition Affects Your Dog’s Skin & Coat – IAMS
[3] Dog Food for Healthy Skin and Coat | PetSmart
Featured image credit dezy / Shutterstock