皆さんこんにちは。WOOFOO天国出張所勤務の読書犬・パグのぐりです。お元気ですか?
花粉は、今年はどうなのでしょう? 地上にいたとき、僕は花粉症ではなかったのですが、Nさん一家はみんな大変そうでした。Nさんはある年に友人から甜茶が効くと聞いて、それ以来12月くらいになると甜茶を飲み始めるそうですよ。今年も飲んでいますが、今のところまだ花粉にやられてはいないようです。
世界一有名なビーグル犬
さて、今回ご紹介する本は、あの、世界的に有名なビーグル犬が登場するコミックを題材としています。『スヌーピー こんな生き方探してみよう』(チャールズ・M・シュルツ、谷川俊太郎訳 ほしのゆうこ著 朝日文庫 2005年)は、コミック『ピーナッツ』を題材に、そこで登場人物や登場犬たちによって語られる言葉をもとに、人生についてちょっと考えてみませんか、という趣旨の本です。
あとがきによれば、この本は朝日新聞日曜版『21世紀に伝えたい宝物』の連載をもとにまとめた単行本2冊の内容を合わせて文庫にしたものだそうです。右のページには原作のコミックが、谷川俊太郎さんの訳と共に掲載され、左のページにコラムが書かれています。コラムの内容は著者のほしのさんが、日本で『ピーナッツ』の版権を持ち管理運営している会社の方々や、新聞社の方々と一緒に考えて書かれたものだそうですよ。
あらゆるテーマが登場
テーマは多岐にわたります。「友情」「野球」「安心毛布」「眠り」「雨」その他もろもろ。どれも内容は深いのですが、特に僕の印象にのこったものを少しご紹介しますね。
たとえば「野球」。ピーナッツの主人公、チャーリー・ブラウンは野球が大好き。ですが、決して上手とはいえません。投げても投げても打たれてしまい、満足のいく結果はなかなかのこせません。
そんなチャーリー・ブラウンのこれまでの野球人生を振り返ってみると、うれしかったことよりもガッカリしたことや、不愉快だったことの方が多いはず。それなのに、なぜ彼は野球をやめないのか。(中略)それは、チャーリー・ブラウンの野球に対する”好き“のエネルギーが、下らない疑問や理屈など軽く吹き飛ばしてしまうほど大きなものだからでしょう。(p17)
確かに、「好き」のエネルギーというのは、たとえその人が他の人から見て上手ではなかったとしても、それでも他の人の意見や視線も気にならないほどにそのことに熱中する活力を生み出すと思います。Nさんは12歳からチェロを弾いているけれど、まさにそうなんだって。チェロを弾くのが好きすぎて、今まで四半世紀以上続けてるの。 あ、Nさんの年齢がばれてしまう…ま、いっか(笑)。
「兄弟」の章では、ルーシーとライナスの姉弟が紹介されています。弟のライナスが生まれたことで、両親の愛を独り占めできなくなったルーシー。それでときどきに弟に心無い言葉をぶつけます。ですが、ライナスはルーシーを完全に嫌いにはなれないのです。
兄弟は運命的に同じ親の元に生まれ、一緒に成長していく最も身近な仲間。それぞれの調書や短所を知り尽くした上で、互いを気に掛け、深く理解しあえる”かけがえのない存在“だと言えます。(p35)
確かにそうかもしれません。僕も生まれた時は兄弟はいたけれど、みんなそれぞれに新しい家庭に入ったからあんまりよく覚えていないの。でも兄弟ってなんだか素敵な響きだなって思うよ。N家のnちゃんとsちゃんも、しょっちゅう喧嘩もするけれど、この前順番にインフルエンザにかかって、寝込んだときには、「まだ、nちゃんと遊んじゃだめ?」と何度も聞いてきたって。大事な仲間なんだろうね。
登場人物に大人はいないけど
こういった調子で、いろいろなテーマについて語られていきます。それにしてもおどろくのは、ピーナッツの内容がとても哲学的だということ。子どもと犬、鳥しか登場しない漫画なのに、その内容はどの年代の人にも響くのですから驚きです。
実際、作家の重松清さんが書かれた「チャーリー」という小説(『再会』重松清著 新潮社 2009年に収録)では、主人公である父親が、チャーリー・ブラウンに語り掛ける形で物語が進みます。不器用な息子を見ながら、昔の自分を思い出して、ちょっと切なくなる。そしてチャーリーに、心の中で語り掛けるのです。君はまだ、野球を続けているのかい?って。そんな父子の姿を描いた秀作です。実は僕、重松清さんの作品が大大大好きなの。犬がなかなか登場しないからこの連載で紹介できないのが残念ではあるのですが。ぜひこの作品も併せて読んでみてくださいね。
朝日新聞社
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Featured image credit Mark Anderson / Flickr