犬の性別〜オスとメスでは何が違うのか?

犬のカラダ
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犬を見慣れているプロであっても、顔だけでオスとメスとの違いを言い当てるのは非常に困難です。”女のコのように”優しい顔をしているオスもいれば、キリリと勇ましいメスもいます。

犬に”男女の違い”はあるか?

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犬の性別に関する言い習わしに「良い犬が欲しければ、雄犬を得よ。偉大な犬が欲しければ、雌犬を得て幸運を祈れ(”If you want a good dog, get a male. If you want a great dog, get a female and cross your fingers.”)」というものがあります。

平均的に”良い”のはオスで、ばらつきがあるのがメス…と、性別により違いがあることを示唆する言葉ですが、どうやらこれは特に根拠があるものではないようです。

他にも「メスはより積極的」「メスは保護意識が高い」「オスは愛情深い」「オスは訓練が容易」などなど様々な言説がありますが、いずれも科学的根拠はありません。多くの専門家は、犬の気質や愛情および行動は、生育環境とお世話の仕方などによって違いがでると考えています。

しかし一方で私たちは、犬も性別によって異なる部分をもつことを知っています。メスに睾丸はありませんし、オスは出産することができません。人間同様、犬たちも、解剖学的には男女の明確な違いがあるのです。また、去勢や避妊を行わない犬は、ホルモンなどの影響により行動の違いがはっきり出ることがあります。

今日は、犬のオスとメスの違いのお話。犬全般を対象にした一般的なもので、全ての品種や個体に当てはまるものではありませんが、どんな違いがあるのか知っておいても損はありません。

サイズ及び形状

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犬は、性別によって個体の形質が異なる現象(性的二型)がみられる生き物です。多くの犬種は性別によりサイズ(体格)が異なり、一般的にオスの方がメスより大きくあります。サイズ差は、大きな品種ではより大きく、小さな犬種では小さいことがわかっています。たとえばセントバーナードのメスは65-80cmですが、大型のオスだと90cmに達する犬もあります。一方、チワワのような小さな犬ではオスメスの違いはほとんど観察されていません。

犬種によっては、頭の形状が異なるとされる犬もいます。よく取り上げられるのがジャーマン・シェパードで、メスはより”女性的”と言われます。

メスの方が長い背中をもつ犬種もあります。Daily Dog Discoveryでは、サモエドとノールボッテンスペッツが挙げられています。

行動

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image by Bob Haarmans / Flickr

犬の行動は、どのように育てられ訓練されたかによって異なります。生育環境からの影響により愛情深く育つコもいれば、攻撃的になるコもいるのです。オスまたはメスの選択は、飼い主が好きな方を選べば良いと言えそうです。

ただし、メスにはヒート(発情期)があり、これが行動に影響するという点は明らかです。ヒートの時期のメスは落ち着きなく活発になり、血中から分泌物を産出してひっきりなしに排尿をしながら歩きます。一方のオスは、匂いに誘われてメスの誘惑に応えようとする行動をします。

この他、出産後か排卵期のメスに、自らの領域を守ろうとする行動が強く出ることがあります。出産後のメスは、子犬を保護しようとしますし、排卵期のメスはオモチャや靴下、あるいは衣服などに執着して”秘密基地”に保管することがあります。

行動に大きく影響するのは、性別より避妊や去勢の方が大きいかもしれません。避妊後のメスは気持ちが安定し、攻撃性が低く穏やかになることが観察されています。オスについても同様で、未去勢では支配的な傾向がみられた個体も攻撃性が低く穏やかになると言われています。

気質

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一般的に、オスとメスの犬の間には気質に大きな違いはありません。 ただ、メスはオスに比べて頑固で独立心に富み自らの領域を守ろうとする傾向があるということ、オスは他の犬に対して攻撃的になる側面があることが観察されています。オスの攻撃性はテストステロン(男性ホルモンの一種)からの影響であることが指摘されており、去勢によって概ね解決ができるものと考えられています。

気質の違いも行動と同じく、性差というより個体差、あるいは去勢・避妊による違いの方が色濃く出るものです。The Barkの中でMcConnell博士が、1965年の感情反応性に与える性別の影響を探究した研究を振り返っていますが、オスとメスの違いはほぼないとまとめられています。

トレーニング

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メスは、身体が小さいために成熟が早く、(早い時期から)訓練が容易になると言われています。また、メスの方が集中力が高いと言うトレーナーもいます。オスは遊び心に溢れており、長い時間の集中が苦手という意見もあるようです。

一方で、ショーなどの大舞台では、オスの方が熱心に取り組むことから強さを発揮するいう意見もあります。こうした高いレベルでの競争になると、ヒートの時期をもつメスより継続的にトレーニングできるオスの方が強いのかもしれません。例えば、過去15年間のインターナショナル・シープドッグ・トライアルの15人の受賞者のうち、オスは12匹でメスは2匹でした。

ただし、トレーニングについて性別による差が存在することを明らかにするのは、非常に難しいことです。大きな試合に出場できるほど強い犬たちには驚くほどのお金がかけられおり、良い成績が犬の性別によるものか、トレーナーの力によるものか、あるいはかけたお金によるものかはわからないからです。

一般の飼い主によるトレーニングでは、飼い主側の思い込みや期待が影響してくることもあると想像できます。「このコは女のコだから」と考えて積極的なトレーニングを避けるといった行動の方が、性別よりもトレーニング成績に影響しそうです。

かかりやすい病気

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image by Jelly Dude / Flickr

犬のオスメスでは身体が大きく異なりますので、かかりやすい病気も異なります。生殖器の病気がこれに該当します。

メスの生殖器は、卵巣、卵管、子宮、膣、外陰部からなります。子宮蓄膿症はメスにのみ見られる病気で、悪化すると命の危険を伴います。また、偽妊娠もメスのみに見られます。プロラクチンというホルモンの影響によるもので、薬剤の投与により症状は抑えられます。

オスの生殖器は精巣、精巣上体、精管、前立腺、陰茎、包皮、陰嚢からなります。高齢になると前立腺肥大症を発症するリスクが高まります。また精巣腫瘍(ガン)を罹患する可能性も高くなります。

▪️以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Male & Female Dogs: Personality Differences | PEDIGREE®
[2] Male or Female Puppy: Which is Better? | petMD
[3] What are the Differences Between Male and Female Dogs? | The Bark
[4] Daily dog discoveries

Featured image creditRamonki/ shutterstock

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