「いくら腹ペコ犬でも石は食べないんじゃないの？」と思いますよね。

でも、食べちゃうコもいるのです。まずは実例をご紹介しましょう。

15分で109個の石を食べた子犬の話

11週齢のドーグ・ド・ボルドー（※）のソー（Thor）は、具合がすごく悪そうで、まっすぐには歩けない状態にありました。飼い主はすぐに彼を連れ、動物病院に直行しました。ちょっと確認しただけで、胃の中に石が入っているとわかったし、お腹の中でゴロゴロと転がる音がしたからです。

ソーの吐瀉物の中には、車寄せに使われる赤い小さな石も混ざっていました。

動物病院では緊急手術が行われ、ソーのお腹の中から合計で109個の石と南京錠が取り除かれました。すでに溶けていた石や吐き出した石もあったことから、ソーがお腹に納めた異物の数はそれ以上だったと考えられます。

飼い主は、ソーが小石をそんなにたくさん食べていたことには全く気づかなかったと言います。ソーは、すでに健康を取り戻していますが、飼い主はこれ以上石を食べさせないようにするために、当面は口輪をつけると決めたのだそうです。

飼い主は、「口輪は使いたくなかったけど、（石を食べる習性がある以上）仕方ない」とコメントしています。

※ドーグ・ド・ボルドー（Dogue de Bordeaux、ボルドー・マスティフ）は、フランス原産のマスティフ犬種。

石を食べるのはなぜか？

ソーのように石を食べてしまう犬は、案外たくさん存在します。

これは、異食症（Pica、ピカ）と呼ばれる食べ物以外のものを摂取する行動の一つで、健康上の問題から精神的な問題まで様々なものが影響して起こると考えられています。

石を食べる理由としては、一般的に次のものが考えられます。

• 栄養障害や栄養不良：身体に必要な栄養分が足りていない状態、とくに鉄欠乏性貧血や亜鉛の欠乏は異食症を引き起こす恐れがあります。鉄欠乏性貧血は、体内に鉄が不足することによりヘモグロビンが作られなくなることで生じる貧血のことで、人間の場合はしばしば氷食症や土食症を引き起こすと言われています
• 胃腸の問題：炎症性腸疾患（IBD）、胃腫瘍、鉤虫、およびバランスの取れていない食事は、しばしば異食症に関連します。胃腸に不調がある場合、空腹でない時も空腹であるかのように感じて目に見えるものも食べてしまうことがあります。腸の出血で貧血を起こしていることも、石を食べる原因になり得ます
• 行動の問題：ストレス解消のため、あるいは退屈しているか、注意を引きたいときに石のような奇妙なものを食べることがあります。脳内の化学物質の不均衡によって強迫性障害を起こしていることもあります
• 飢えや虐待：虐待や飼育放棄、あるいはホームレスだったために飢えや苦しみを経験している犬は、苦しかった時代には石をも食べていたかもしれません。奇妙に見えるこの行動は、サバイバルの中で身につけた習慣という可能性もあります

愛犬が石を食べていたら

愛犬が石を食べていたら、飼い主さんがまずすべきことは、獣医師に連絡することです。原因がなんであれ、石を食べることは非常に危険な行動ですから、対処を検討しなければなりません。

動物病院では、石を食べる原因を特定するために病歴や身体検査などが行われるでしょう。原因が身体の不調であれ、行動の問題であれ、投薬、行動療法、栄養に関するアドバイスなどが行われるでしょう。

飼い主としてできることは、栄養の管理（食事の見直し、フードの変更など）、生活環境の改善（石の多い場所は避ける、庭の石を取り除くなど）およびストレスを減らす（運動量を増やす、一緒にできる活動を増やす）ことです。犬が虐待などを経験している場合や、深刻な強迫性障害の場合は、治療は難しくかなり時間がかかります。犬を変えるより行動範囲にある危険なものを取り除くなど環境を変える方が簡単で手っ取り早いことがあります。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] This silly pup swallowed 109 stones and a PADLOCK – and was left feeling really pawly – Mirror Online
[2] How Can I Get My Dog To Stop Eating Rocks? – American Kennel Club

Featured image creditJames Barker/ unsplash