「褒めて育てる」というのは、犬にも当てはまるのかもしれません。オレゴン州立大学の研究によると、信頼する人間からの励ましは、犬の問題解決能力を高めるのに役立つ可能性があるそうです。
研究は、Applied Animal Behaviour Science誌に掲載されました。
研究を行ったのは、オレゴン州立大学 Human-Animal Interaction Labの博士課程学生、Lauren Brubaker氏ら。Brubaker氏は、同じ解決課題が提示された場合の災害救助犬とペット犬の行動を評価しました。
犬たちに与えられたのは、ソーセージが入っているパズルボックスを2分以内に開けるという課題。実験参加犬59匹(ペットの犬が31匹と災害救助犬が28匹)で、災害救助犬は飼い主とは別に訓練を行う点でペットの犬とは異なるため、比較対象として選ばれました。
実験は、実験室で行われました。犬たちは飼い主と一緒に実験室に入り、そこで飼い主がボックスに食べ物を入れる様子を見せられます。その後犬は、(1)自分だけで、(2)飼い主と一緒に(ただし飼い主は何もしない)、(3)飼い主が励ましてくれる、という3条件下で課題解決に取り組むことになります。
(1)では飼い主はボックスを犬に見せた後、それを床に置いて部屋を立ち去りました。(2)では飼い主は、ボックスを床に置いた後、3歩下がって直立し、犬とのコミュニケーションを避けました。(3)では飼い主は、ボックスに触れることはありませんでしたが、言葉やジェスチャーを使って励ましや賞賛が贈られました。
結果、(1)の単独での場合では、2匹のペット犬が課題を解決し、(2)では3匹のペットと2匹の災害救助犬が課題を解決しました。(3)の励ましがある状態では、災害救助犬では9匹が成功しましたが、ペット犬は2匹の成功にとどまりました。
この結果は研究者の事前の予想(=単独でも災害救助犬が好成績を収める)とは異なるものになりました。Brubaker氏はこの結果について「ペット犬と飼い主とのコミュニケーションより、災害救助犬と飼い主とのコミニケーションの方が(問題解決に)効果を発揮するようだ」とコメントしました。
そして、「飼い主の行動や(飼い主の)犬に対する期待、そして日常生活の中で犬にどのように関与しているかが、犬の問題解決に影響している可能性がある」というように、飼い主の励ましは犬の行動に影響していることもわかりました。励ましがあった場合は、犬が課題解決に挑戦する時間は長くなったというのです。
ただしペットの犬の場合は、励ましがない場合(2)と励ましがあった場合(3)では、成績には影響がありませんでした。ペットの犬はしばしば、パズルをおもちゃのように扱うようになることがあるため、ソーセージという目的を忘れてしまった可能性があるとのこと。一方の災害救助犬は、飼い主からの励ましがあると「ボックスを開けるという仕事をもらった」と考え、与えられた仕事に真摯に取り組む傾向があるようです。
成績はどうであれ、励ましがあるとボックスに向かう時間が長くなるという点は見逃せません。「何をやらせても上手にできない」「覚えがよくない」と嘆くより、ちょっとくらい出来なくても諦めず、励まし続けることはとっても大切。飼い主が先に諦めてはなりませんぞ。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Brubaker, L., & Udell, M. A. (2018). The effects of past training, experience, and human behaviour on a dog’s persistence at an independent task. Applied Animal Behaviour Science.
[2] Human encouragement might influence how dogs solve problems | Oregon State University
Featured image creditWyatt Ryan/ unsplash
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