【犬語翻訳家】あなたの怒った顔を見ると犬は口を舐める

サイエンス・リサーチ
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愛犬が自分の口をしょっちゅう舐めているのは、あなたが原因かもしれません。

英国とブラジルの動物行動学者らは、犬は怒っている人間の顔に反応して自らの口を舐める傾向があると発表しました。

人間の怒った顔が口舐め行動の原因なの!?

研究を行ったのは、サンパウロ大学(ブラジル)とリンカーン大学(イギリス)の研究者ら。17匹の家庭犬の協力を得て、犬が人間の表情にどう反応するかがテストされました。

社会の中で生きていくためには、他者の感情に適切に対応することが大切です。これまでの研究は、犬は人の笑顔や怒った顔を区別することを示しています[2][3]が、相手の感情表現を見た犬がその感情を理解した上で反応しているのかはわかっていませんでした。

今回の研究で研究者が注目したのが、犬の”口舐め行動”です。口舐め行動は、興奮や食べ物への期待から行うと言われていますが、一方で短期(または急性)ストレスへの応答である[4]という可能性も示唆されているものです。これまでの研究で口舐め行動は、騒音や電気ショックや床に押し付けるといった外からの刺激との関連は指摘されていますが、感情的な刺激との関連を特定されていませんでした。

研究者らは犬の口舐め行動について、その発生が怒った顔のような負の刺激と関連しているのかを調査しました。そして、犬は人間の怒った顔を見たときに頻繁に口を舐めることを発見しました

口舐めは人間に対するメッセージなのかも


実際に使われた画像刺激 Mouth-licking by dogs as a response to emotional stimuli

実験では、協力犬17匹に犬と人間の白黒写真(怒った顔、笑った顔)を見せ、口舐め行動がいつ、どのような刺激によって発現するかが確認されました。画像はスクリーンに5秒間表示され、画像は音声と共に提示されます。

実験の結果、犬の口舐めは「人間の怒った顔」への反応として現れること多いがわかりました。また聴覚刺激(=音声)にではなく、怒りを表す視覚刺激(=画像)に反応することもわかりました。

研究者らは、(怒った顔のような)負の感情的な視覚刺激は、犬によって嫌悪感として認識された可能性が高いと述べています。つまり犬たちは、人間が”怒った顔”をするのは、怒りや嫌悪などの負の感情を抱いたからだとわかっており、その反応として口舐め行動をしちゃう可能性があるというのです。

そして、嗅覚によるコミュニケーションが優先される犬がこうした視覚コミュニケーションを使うのは、人間のためではないかという推察もなされています。リンカーン大学のミルズ教授は「犬は人間とのコミュニケーションを促進するために、口舐めなどの視覚的表現を使用している可能性があることを示しています」と述べています。

犬の口舐め行動は「あなたの怒りは理解できたよ」とか「まぁまぁ落ち着いて」とか、そうした犬のメッセージが込められているのかもしれませんね。口舐めがカーミング・シグナルであることが、科学的に検証されたって感じでしょうか。


研究は、人間の怒りと犬の口舐めとに1:1の因果関係があると主張するものではありません。犬たちは他の理由でも口を舐めることがあるでしょう(例えば「そのオヤツ、早くちょうだい!」)。

しかし、愛犬があなたのことをジッと見つめ、口を頻繁に舐めているなら、彼らはあなたの秘めたる怒りに気が付いているのかもしれません。そんな時は犬の可愛らしさに免じて息を整え口角を上げ「怒ってないよ〜」と笑顔になってみましょう。怒った顔ばかりでは、あなたも犬もストレスが溜まってしまいますものね。

◼︎文献および参考にしたサイト
[1] Albuquerque, N., Guo, K., Wilkinson, A., Resende, B., & Mills, D. S. (2017). Mouth-licking by dogs as a response to emotional stimuli. Behavioural Processes.
[2] Nagasawa, M., Murai, K., Mogi, K., & Kikusui, T. (2011). Dogs can discriminate human smiling faces from blank expressions. Animal cognition, 14(4), 525-533.
[3] Racca, A., Guo, K., Meints, K., & Mills, D. S. (2012). Reading faces: differential lateral gaze bias in processing canine and human facial expressions in dogs and 4-year-old children. PLoS one, 7(4), e36076.
[4] Beerda, B., Schilder, M. B., van Hooff, J. A., & de Vries, H. W. (1997). Manifestations of chronic and acute stress in dogs. Applied Animal Behaviour Science, 52(3-4), 307-319.

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