犬は人間の表情がわかるのか〜嬉しいときや怒っているときは、顔の表情から判別されているみたい

サイエンス・リサーチ
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愛するご主人を「じぃぃぃ〜っ」と見つめるワンコたち。

彼らは、私たちが見せる表情の違いを見分けることができるのでしょうか。そんな疑問に一つの答えをくれる研究が、2015年3月に発表されていましたよ〜。

犬たちは顔の表情を見分けることができる

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なにがいいたいのか、わかるよ © Aleksandar Mijatovic / Shutterstock

ウィーンにあるメッセーリ研究所(Messerli-Research-Institute)のクレバー・ドッグ・ラボ(Clever Dog Lab)の研究員が行ったのは、犬たちが人間の「喜んでいるときの表情」と「怒っているときの表情」を見分けられるかという実験です。

犬たちが人間の顔の上下半分が隠された写真をもって訓練され、続いて行われる「テスト」では別の条件下でも同じ感情表現をしている人間の顔を判別できるかを試されたというものです。たとえば、訓練では顔の上半分だけ見せられていたワンコが、顔の下半分を見せられたときでも「喜んでいるときの表情」を正しく回答できるか、ということを試したのですね。

仮に犬たちが「喜んでいるときの表情」を目の形で覚えていたとしたら、顔の下半分を見せられてもそれが「喜んでいるときの表情」かどうかは判別できないはずです。しかし、多くのワンコたちは条件が異なっても正しい答えにたどり着けたようです。

研究者たちは論文の要約[1]の中で、「人間の表情の識別するにあたり、犬たちは、人間の表情について記憶を利用している」と結論づけました。また、心理学者で人間と動物の対話に関する専門家であるリンカーン大学のグオ博士(Dr Kun Guo)はこの結果を受け、「この結果が、犬が感情表現の中身を理解していることを証明しているとはいえない」としながらも、犬たちがテンプレートのようなものをもっているようであり、実際に犬たちが「喜んでいるときの表情」と「怒っているときの表情」が区別できるようだと述べています[2]

人間の感情表現を「弁別できる」ってどんなこと?


Dogs Can Differentiate Between Happy and Angry Human Faces – YouTube / YouTube

この研究は、大きな問いである”how humans and their canine companions interact”(人間と飼い犬は、どのように交流するのか)を解き明かそうとする試みの一環だそうです。人間同士と同じように、異種間であっても他者と親交を深めるためには「感情」というものが一つのキーになりそうですよね。

ところで、動物が感情をもつのか、そして他者の感情表現に反応するのかという問いに対しては、納得のいくような研究はいまのところでてきていません。動物たちは「なんらかの刺激に反応する」ようだけれども、それが感情表現に反応しているかどうかはわかっていないというわけです。そこで、一歩すすんだ理解を得るために行ったのがこの実験なのですね。

犬たちにはまず、「弁別学習(discrimination learning)」の課題が与えられます。20匹の犬を対象に、モニターに映った人間の「喜んでいるときの表情」と「怒っているときの表情」を識別させる課題です。具体的には、人間の「喜んでいるときの表情」と「怒っているときの表情」の上半分、または下半分を弁別刺激として、「喜んでいるときの表情」に鼻タッチできたら報酬を与えるというものです。できるようになったら識別できている(弁別)ことになります。

学習を終えたら、条件を変えても「喜んでいるときの表情」を識別できるのかを確認します。たとえば、「表示される写真の条件(上半分か、下半分か)は同じで、訓練のときにはみたことのない人物の顔」でも識別できるのか、というテストです。顔半分が隠されていたり、慣れしたしんだ顔の人間なくてもできるから、「嬉しいときの顔」というテンプレートをもっているのではないか、という結論が出せたのですね。

「怒っているときの表情」は避けたいようです

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こわ〜い © Susan Schmitz / Shutterstock

ところでこの実験では、「怒っているときの表情」に鼻タッチする学習をさせられちゃったコもいたようです。鼻タッチを上手にできるようになる訓練の段階にも時間がかかったそうで、研究の主任研究員のハーバー教授(Prof. Ludwig Huber)は「こうした反応は、犬が怒った表情に触れたくないという気持ちの現れのように考えられます。つまり、犬は表情を解釈し、おそらく怒った表情は自分たちが好まないものであると実際に分かっていることを暗示する証拠である私たちは考えています」と語ったそうです。

怒っているときは、表情からわかっちゃうみたいですよ!

翻訳:吉川ろっこ


[1] Müller, C. A., Schmitt, K., Barber, A. L., & Huber, L. (2015). Dogs Can Discriminate Emotional Expressions of Human Faces. Current Biology, 25(5), 601-605.
[2] Dogs ‘can tell difference between happy and angry faces’ – BBC News
[3] 中島義明 (Ed.). (2011). 『心理学辞典』. 有斐閣.

Featured image by Lindsay Helms / Shutterstock

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