犬はあなたの「怒り」や「恐れ」表情をかなり正しく読み取っている(研究)

サイエンス・リサーチ
この記事をシェアする

最近発表された研究では、犬は人の表情を区別できるだけでなく、背後にある感情も理解している可能性が示されました。

ポジティブな情報を処理するときと、ネガティブな情報を処理するときでは、活動する脳の部位が異なることも、わかったそうです。


犬は人間と仲良く暮らすなかで、人との効率的なコミュニケーションを可能にする特定のスキルを高めてきました。これまでの研究では、犬は、嗅覚(人の体臭)や聴覚(人の発声)を刺激する感情てきな手がかりに対し、脳の非対称な反応が観察されていました。

今回の研究は、視覚情報を与えたときに、犬の脳はどう反応するか、また生理的活動(心臓活動)にどう影響するかを確認する目的で行われたものです。

研究を行ったのは、イタリアのバーリ・アルド・モロ大学の科学者たち。26匹のペット犬の協力を得て、彼らが人の表情の写真にどう反応するのかを調べました。

犬たちは、人の顔(男性2、女性2)の表情をとらえた写真を見せられます。写真のモデルは、「可能な限りの強く」6つの基本的感情(怒り、恐怖、幸福、悲しみ、驚き、嫌悪)の表情を作るように言われており、犬はこの6つの表情に、中立的な表情を加えた7つの表情の写真を見ることになるのです。

実験室の設定は、中央にはフードの入ったボウル、その両サイドに写真を表示するためのモニターが置かれています。実験室に犬が導き入れられ、フードを食べ始めると、両サイドのモニターで写真が4秒ごとに切り替わるスライドショーがはじまるという流れです。これに対する犬の反応は、ビデオカメラと無線システム(心臓活動を記録する)によって記録されました。

2226 1 thewoof

image by Matt Aunger / unsplash

結果、犬は、人間の「怒り」「恐怖」「幸福」などの強い感情からの表情を見たときに、より大きな身体反応(頭や視線の動き)と心拍数の上昇を示しました。また、これらのイメージを見た後は、再び食べ始めるまでに時間がかかることもわかりました。

さらに、犬が「怒り」「恐怖」「幸福」の表情を見たときに、頭を左に向けることも観察されました。一方、「驚き」の表情のときは、頭を右に回しました。「悲しみ」「嫌悪」のときは、あまり反応がありませんでした。

Marcello Siniscalchi博士は、この発見は、人の基本的感情を処理するために、脳の別の部位を使うという先行研究の成果を支持するものとコメントしています。「怒りのようなネガティブな感情は、犬の脳の右半球で、ポジティブな感情は左半球で処理されているようだ」

この解釈によれば、犬は「驚き」表情を、リラックスした無害な状態だと認識していることになるようです。

では、「幸福」のときに頭を左側に回すというのは、どう解釈すべきでしょうか。研究者によれば、犬の笑顔の解釈は人間と異なる可能性があるそうです。音声情報(笑い声、嬉しい時の甲高い声)を伴わない口角をあげて歯をむき出しにする表情は、犬同士のコミュニケーションにおける「攻撃前の「引っ込んでろ!」という時の表情」を思い起こさせるのではないか、という仮説です。

この結果は、犬や他の哺乳動物で行われた他の研究の、脳の右側が心臓への交感神経流出を調節する上でより重要な役割を果たすことを示したこれまでの結果を支持するものです。

犬は人間の表情によって伝達される感情的な手がかりに敏感であること、そして、基本的な人間の感情を処理するために、脳では別の場所での処理を行なっていることが確認されたと言えるでしょう。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Siniscalchi, M., d’Ingeo, S., & Quaranta, A. (2018). Orienting asymmetries and physiological reactivity in dogs’ response to human emotional faces. Learning & Behavior, 1-12.

Featured image creditSam Manns/ unsplash

the WOOF イヌメディア > すべての記事 > イヌを知る > サイエンス・リサーチ > 犬はあなたの「怒り」や「恐れ」表情をかなり正しく読み取っている(研究)

暮らしに役立つイヌ情報が満載の「theWOOFニュースレター」を今すぐ無料購読しよう!

もっと見る
ページトップへ