the WOOF専属ライター犬、ライチがお届けする世界の犬ニュース。今日はネパールから、ヒマラヤ山脈のBaruntseの登頂に成功した野良犬Meraのおはなしです。
ネパールでの登山に関する記録を文書化する組織”Himalayan Database”のBierling氏は「ネパールで登頂に成功した犬の話は聞いたことがない」とコメント。記録のうえでは7,128メートルの山頂に到達したMeraは、”最も高い場所に到達した犬”となりそうです。
2018年11月9日。Meraと名付けられた野良犬が、エベレスト山のすぐ南に位置するBaruntse登頂に成功しました。
Baruntse山頂の標高は7,128メートル。エベレストの標高8,828メートルと比較すると見劣りしますが、勾配は急で挑戦的な山なのだそう。Meraは爪をアイゼンのように使い、傷つきながらも時に楽々と山頂に辿りつき、無事に下山しました。
Meraが登山ガイドのDon Wargowsky率いるチームに合流したのは、1ヶ月に及ぶ遠征の10日目のことでした。
Baruntseの前に挑んだMera Peak登頂を終えたチームの前にあらわれた彼女は、他の登山家ではなくWargowskyが気に入ったようで、ウロウロと周りをうろつくようになったそうです。
懐いてくる犬を気に入ったWargowskyは、彼女にベッドとジャケットを貸してあげ、テントで3週間パートナーとして過ごしました。
ネパールは狂犬病が蔓延しているため、野良犬と接触することは推奨されません。常に食べものや寝る場所に困っていたであろうMeraは、寝床と食べ物をくれるWargowskyが大好きになったのでしょう。一度だけ、急勾配に怯んでチームを離れたことはありましたが、それ以外は忠実に、人々のあとを追いかけたのです。
最初は犬に関心を抱かなかったシェルパも、Meraのど根性を目にすると、敬意をもって接するようになったそうです。傷を負っても血を流しても、登り続けることをやめなかったMera。Wargowskyはこうコメントしています。「彼ら(シェルパ)は、こんなことを経験したことがなかったんです。彼女は特別な犬で、遠征に幸運をもたらしたと言うようになりました。祝福されてると言う人もいました」
それでも7,000メートル級の山に挑むことは、やはり大変難しいもの。山頂アタックに際しては、チームはMeraにお留守番を命じました。追いかけて来れないようにとキャンプにロープで繋いだのです。しかしMeraはロープを必死に引きちぎり、1時間もしないうちにチームに追いついたのだといいます。
そこからは、急勾配と氷河、強い風、寒さとの戦いでした。
「今まで経験した中でもっとも寒かった」と言う厳しい寒さの中、自然なスタイル(つまり素っ裸)のMeraは涼しい顔で、チームの先頭を歩くWargowskyを先導していきました。「彼女は自分のしていることにとても自信をもっているようだったよ」
高度による影響も問題です。Outsideによれば、犬も人のように高山病になることがあるそうです。しかしMeraはまったく平気。具合が悪くなっていく人間たちとは異なり、元気に前を歩んだのです。専門家によれば、これはおそらく先祖から受け継いだDNAの影響によるもので、彼女の先祖とおぼしきマスティフは、高所に生理学的に適応できる素因をもっているそうです(Meraはマスティフミックスと推測されています)。
兎にも角にもど根性犬Meraは、7000メートル級の山を制覇しました。登頂に成功しただけではありません。登りより難しいと言われる下りにおいても、Meraが人の手を借りることはありませんでした。むしろチームの一歩先を元気に歩み続けたのです。
山を降りたMeraは、一躍有名犬になりました。セレブリティとして扱われ、飲食店も大歓迎。カフェでもWargowskyの足元で寝ることが許されました。
ハッピーエンドといきたいところですが、残念ながらWargowskyとMeraはお別れすることになります。シアトルを本拠地として活動するWargowskyは、彼女を連れ帰ることができなかったのです。
しかし現在、彼女は幸せ。Meraは遠征隊のベースキャンプのマネジャー、Kaji Sherpaに引き取られ大切に育てられています。なんと新しい名前ももらったそうです。Baruntseを制覇したからBaruなんだって。名誉なお名前だよね。
大好きなWargowskyとは別れることになりましたが、ゴハンもたっぷりともらえているそう。体重も順調に増え続けているそうですよ。
h/t to The First Dog Ascent of a 7,000-Meter Himalayan Peak | Outside Online