犬の中には行動上の問題を抱えた犬もいます。
いわゆる「”問題行動”がある犬」というやつですが、これに対して「犬は悪くない。飼い主が犬を訓練できていないのが問題だ」という人がいます。
「犬ではなく飼い主を訓練すべし」というのは、愛犬家としては正しいように思えます。しかしそれは、いつでもどんな状況でもどんな犬に対しても当てはまることでしょうか。
人間が”問題行動”の原因となる場合
確かに、訓練やトレーニングが不十分だったり、悪い習慣を正すことなく成長してしまったケースもあります。”問題行動”の根底にある恐怖、不安、ストレスの原因を飼い主がつくりだしていることは少なくありません。
たとえば以下のような誤りは、犬の行動上の問題につながるものです。
その1:ボディランゲージを無視する
犬のボディランゲージについて学ばず、誤った解釈してしまうケースです。「尻尾を下げる」「耳を後ろに倒す」など、明らかに「いやだ」という意思を表明しているのに、無理矢理他の人や犬に近づけようとする行為がこれにあたります。犬の意図を無視した行動により彼らはストレスや恐怖心を爆発させ、吠えたり噛んだりという極端な意思表明をするしかなくなってしまうのです。
その2:恐怖やストレスの対象に向かわせる
いやなものや苦手なものに対して、「何回か経験すれば慣れるだろう」と手順を踏まずに対象に(無理に)対峙させるのも、行動上の問題を大きくする行為です。行動修正の方法には、問題となる状況に暴露する「脱感作(だつかんさ)」というものがありますが、この方法を使うときの暴露は注意深く徐々に行わなければならないものです。段階的ではなく急激な暴露は犬に恐怖や不安を爆発させるものであり、問題となる行動をエスカレートさせるリスクが増すだけです。場合によっては犬を変えるのではなくストレス因子を完全に取り除くような環境整備をする方が良いこともあります。
その3:誤ったトレーニング
心身を傷つけるような罰を与えるトレーニングは、一時的に問題行動を引っ込める効果はあっても根本的な解決にはつながりません。罰は、問題行動の原因である恐怖や不安を増大させ、行動をさらにエスカレートさせるものにもなりえます。
また、一貫性のないトレーニングも、犬の不安やストレスを増大させる原因になります。「昨日は抱っこしたのに今日はダメ」「ママはNoだけどパパはOK」などの一貫性の欠如は、犬には理解が難しくストレスです。
飼い主の対応だけが問題ではない場合
前項で説明したのは、犬の行動上の問題が「犬の正常行動の範囲内におさまる場合」あるいは「正常行動から少し逸脱した場合」の話です。もしも犬が抱える問題が「重大で深刻で病的あるいは異常ともいえる」場合においては、話がまったく異なってきます。
犬の中には周囲に危害を加える恐れがあるほど攻撃的だったり、不安に耐えきれず何時間も大声で吠え続ける犬もいます。遺伝的素因のため単純にそのように生まれてくる犬もいれば、過去の経験から回復困難な深いトラウマに苦しむ犬や、行動に影響するような病気を抱える犬もいます。
問題を抱えた犬であっても、その後のケアや環境によって落ち着くケースはもちろんあります。しかし、どんなにトレーニングを頑張っても、どんなに環境を整備してあげても、反応してくれない犬もいます。
この場合は、犬の行動の責任を飼い主に押し付けても問題は解決しません。飼い主さんの中には最善を尽くしたのにうまくいかなかったと恥じたり罪悪感をおぼえたりする人もいます。これはとても不幸なことです。場合によっては犬の存在がストレスになり、罰を与える誤った訓練に頼ってしまうこともあるかもしれません。
「犬の中には問題を抱えた犬もいる」ということ認識しましょう。そしてそうした犬とご縁のあった飼い主さんが前向きに問題解決に向かえるよう、(心の中だけでも良いので)応援しましょう。
petMDでは、何が正常で何が異常なのかを認識するために、自らで以下の問いかけをすることを勧めています。いずれかに該当する場合は、犬が異常な行動をとっている可能しえがあるとして専門家への相談が推奨されています。
- その犬の行動は、あなたが飼う他の犬と違うか?
- その犬は、病的な行動により自らを傷つけているか?
- その犬はアンハッピーか?
- その犬は、私が他の犬と行ってきた典型的なトレーニング方法に反応しないか?
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