君がいなくちゃ、始まらないのだ~『犬が虹を渡るとき一番に思い出すのはあなただろう』

本・映画・テレビ
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皆さんこんにちは! WOOFOO天国出張所勤務の読書犬・パグのぐりです。

お元気ですか? 梅雨入りしてから、地上の飼い主だったNさんは「洗濯物が乾かないー」と文句を言っていましたヨ。お散歩に出られないワンさんも多いのかしら。そんな時はおうちでたくさん遊んであげてくださいね!

犬が起こす人の化学変化

犬が虹を渡るとき一番に思い出すのは あなただろう

さて今回ご紹介するのはいろいろな犬と人との交流を描いた本『犬が虹を渡るとき一番に思い出すのはあなただろう』(秋山みつ子と犬仲間たち著 竹書房 2014)です。著者の秋山さんが出合ったエピソードが10編収められています。

病気でなかなか外に出られず、性格も消極的になりがちだった飼い主を外に向けさせてくれた犬、認知症になり、時に家族につらくあたってしまっていたおばあさんが、若いころに飼っていたけれど手放さざるを得なかった犬を再び飼い始めたことで、劇的に変わっていった話など、どこにでもいそうな家族や家庭に、犬が飛び込むことで化学変化が起きる様子がつづられているいます。

柴犬がつないでくれた縁

Shiba smiling

photo : MARCOS VASCONCELOS/ Flickr

もちろん、最初から犬を飼っていた家庭で起きたことが書かれた物語も。中でも僕が好きなのは「和恵×モコ(柴犬)の物語」です。和恵は40代後半。夫とモコとの3人暮らしをしています。ある日、同じマンションの住人の、林さんというおじいさんが自治会費の集金にやってきます。あいにくその時、高熱を出してふらふらしていた和恵。そんな和恵とモコを見て、林さんは急にモコの散歩をかってでてくれます。とまどう和恵。それは他人にモコを預けるとまどいだけではなく、実は林さんに、亡くなった自分の父親が重なったからなのでした。和恵の母親が亡くなってから、疎遠になっていた父。最後に会った時、帰り際に父が和恵に渡そうとしてくれた、あるもの。それがこの物語の名わき役です。

なぜ林さんはモコの散歩をするといってくれたのか? それには大きなわけがありました。林さんの家でもかつて、柴犬を飼っていたことがあるのです。亡くなった奥さんが本当にかわいがっていた「花」。奥さんも花も天国に行ってしまったのですが、あの、和恵が熱を出して大変だったとき、林さんはモコを連れて妻のお墓に出向いていたのです。それが後日、モコによって和恵の知るところとなり、ちょっとぶっきらぼうな林さんと和恵の間に、何か温かいものが流れるようになります。そして極めつけが最後のシーン。和恵が自分の父親との間に残していた後悔を、溶かすような出来事が起こります。僕、ジーンとして泣いちゃった。ぜひ読んでみてください。

性格を変えてくれたレトリーバー

もう一つ、犬が飼い主の性格をも変えてしまう大きな存在であることが書いてあるのが「田村くん×ボルボ(ゴールデン・レトリーバー)の物語」です。田村は会社員。内気で、時々ミスもしてしまい、うかない毎日を送っています。そんなある日、同期の村田から「東京に転勤になったから、犬を預かってもらえないか」と頼まれます。犬といっても大きなゴールデン・レトリーバー。田村はとまどいましたが、村田の家でボルボと対面したとき、なぜかとてもおとなしいボルボの中に引っ込み思案の自分を見たような気がしてほうっておけなくなり、なんとその日から預かることにしてしまうのです。

ボルボは環境が変わったからか、田村の家でも最初はおどおどしていました。きっと慣れればもっと元気になってくれるはず、と思っていましたが、その状況は変わらず。そしてある日、東京へ行った村田から、なぜボルボがこんなにおとなしいのか、その本当の理由を聞かされて衝撃を受けます。

しかし、衝撃を受けて終わるような田村ではありません。だったら、と自分がどれだけボルボといられることがうれしいかを、ボルボにわかりやすいように伝えようと、その日から必死に努力をするようになりました。大げさに笑ったり、ひんぱんにボルボに声をかけたり。その涙ぐましい努力は、最初はボルボに向けてのことだったにもかかわらず、田村の職場での姿勢にもよい影響を及ぼして、仕事もプラスに向かうようになったのです。

そしてある日、会社帰りにふと自分の部屋の窓を見上げた田村は、カーテンがふわっと動いた気がしました。そして玄関を開けてみると…。人と人は言葉があるし、相手の表情から自分の言いたいことが伝わっているかどうかがわかりやすいけれど、人と犬は共通の言葉がないから、その分相手の表情やしぐさに敏感になって思いを受け取ろうと努力するよね。田村も毎日そうしながら、ちょっとずつボルボと心が通うようになっていきます。保護犬を家族に迎え入れた人にも参考になるようなお話でした。

愛犬はあの場所で待っていてくれる

White toy poodle

photo : FLCK_chik/ Flickr

最後の章は、あの有名な「虹の橋」をテーマにしたお話しです。トイプードルのプリンはある日、飼い主のお母さんがちょっと買い物に出た間の短い時間に急死してしまいます。まだ9歳。とにかくふさぎこむお母さんに、お父さんや独立していた娘も心配します。そしてお父さんがある日ネットサーフィンをしている中で「虹の橋」の詩に出会って…。

僕が地上での命を終えたのが9歳、おまけに前日まで元気だったのに朝になって急に、という状況がこの本の話にあまりに似ていて、Nさんは一瞬ボーゼンとしていました。でもね、読み終わってから「そうだよね、またぐりに、会えるよね」と言ってくれてた。きっと愛犬を見送ってきた人たちがこの本を読んだら、みんなそう思えるんじゃないかな、と思います。

著者の秋山みつ子さんは、これまでたくさんの犬と飼い主に出会って、ノンフィクションを書かれてきた方。秋山さんの犬への温かいまなざし、そして、飼い主との心の交流があってこそ生まれた一冊だと思います。


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