危険な犬?それともいじめられっ子?〜”Bully Breed”ってなんだろう

動物愛護・保護
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米国のWeb記事を見ていると、ピットブルやボクサー、ボストンテリアなど、日本ではあまり馴染みのない(お散歩などで遭遇しないような)犬がよく登場することに気がつきます。

さらに、記事などで取り上げられる視点の多さにも驚かされます。可愛い動画や忠犬ストーリーのほかに、人を傷つけたなどの事故・事件、さらには「闘犬は犬の権利を脅かす」などといった社会的テーマとしても登場します。

今日は、何かと話題になる彼ら、「ブリー・ブリード(Bully Breed)」という総称で呼ばれるワンコさんについてのお話です。

ブリー・ブリードってどんな犬?

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わたしもブリーです © Ivonne Wierink / Shutterstock

Care2記事で挙げられているブリー・ブリードは以下の14種。全て列挙したら、長〜いリストができてしまいました。

  • ヴィクトリアン・ブルドッグ
  • スタッフォードシャー・ブル・テリア
  • ルネサンス・ブルドッグ
  • アメリカン・ピット・ブル・テリア
  • オールド・イングリッシュ・ブルドッグ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ブル・マスティフ
  • ブル・ドッグ
  • ブル・テリア
  • ボストン・テリア
  • アメリカン・スタフォードシャー・テリア
  • アメリカン・ブルドッグ
  • アルファ・ブルー・ブラッド、ボクサー

このように、幅広い犬種がブリー・ブリードに入ります。これらの犬種の多く(特にピットブル品種のワンコ)には「攻撃的で危険」という不当な評判がつきまとっています。

本来は忠誠心が強く愛らしいペットなはずの彼らが、ブリー・ブリードという名前のもとに不当な扱いを受けるのは、なぜなのでしょうか。

どうしてこんな名前がついたの?

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なんで、どうして? © Monika Obermajerová / Shutterstock

「ブリー(Bully)」とは、いじめっ子、いじめ(脅し)、威張り散らすなどの意味をもつ、恐怖や脅迫を連想させる言葉です。ブリー・ブリードという名称のせいで、これらの犬たち(ここからは「ブリーたち」と呼びます)が社会に危険をもたらすからだと信じてしまう人が多いのも、致し方ないところだと思います。

しかし、この名前は彼らの気性や行動とは全く関係がありません。実は、ブリーたちの血統や歴史が元になっています。ブリーたちは全て、モロッサーという頑健な骨格や垂れた耳を持ち、短いマズルに特徴がある古代ギリシャ原産の犬種[1]から派生しています。今日、わたしたちが知るブリーたちは、モロッサーとオールド・イングリッシュ・ブルドッグやマスチフ品種などの他の犬種を掛け合わせて生み出されました。

もともとは家畜や領地を守るために改良された品種ですが、次第に他の宜しからぬ目的に使用するブリーダーと飼い主が出てきます。19世紀にイギリスで行われていた牛攻め(bull baiting ※)などがそれで、ここで使われるbull(雄牛)という単語がブリー(bully)につながったのではないかと考えられています。

※ 雄牛に闘犬をけしかけるイギリスの見世物。賭け事。[2]

イギリスからアメリカへ〜ヒーロー犬として活躍する犬も

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Sergeant Stubby” by Stubby: Terrier Hero of Georgetown. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.

20世紀になると、アメリカに多くのブリーたちが上陸します。暴力的なドッグ・スポーツはイギリス議会に禁じられたこと、そしてこの頃に大きく増加した米国移住者がブリーたちを連れてアメリカに渡ったことで、米国でのブリー犬口増加に貢献したようです。

アメリカに渡った犬たちは、様々なお仕事で活躍するようになります。しかもそれは、人々の役に立つ素晴らしいお仕事だったようです。たとえば、スタビィ(Sergeant Stubby)という名前のブリー(犬種ははっきりせず、ボストン・テリアかブル・テリアかと言われている)は、第一次世界大戦で多くの兵士たちの命を救う大活躍を見せ、軍曹の地位にまで上り詰めました[1]

彼らの様々な活躍により、ブリーたちのアメリカでの人気に火がつきます。第二次世界大戦には、愛国プロパガンダの象徴的役割を果たすようになります。1950年ごろになると、アメリカを象徴する犬となるブリーたち。

そんな彼らがなぜ、「社会に危険をもたらす」イメージをもたれてしまったのでしょう。

不当な評判から愛されるペットへ

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愛されちゃって、どうしよう © Lunja / Shutterstock

イメージは本質を隠してしまうもの。ブリーたちに「不穏な」イメージがつきまといはじめ、本来の気質や性質が覆い隠されてしまうようになります。

1980年代に、「ギャング」たちがブリーたちを飼い始めたことが、そのイメージをつくった原因の一つだとアニマル・プラネットでは分析しています。そして、ブリーたちが絡む事件や事故をメディアが大きく取り上げたことも理由の一つとしてあげています。ブリーたちだけに限らず、放置や虐待をされたり、きちんと訓練やしつけがなされていなければ、犬たちは事件を起こしてしまうものです。愛情なく育てられたブリーたちや、彼らが起こす事件・事故が、クローズアップされるにつれて、「恐ろしい」「危険」などといったイメージばかり広まることになったというわけです。

しかし、さらに時がたち、現代にいる私たちは、たくさんの愛されブリーたちを目にすることになります。これは、多くの犬の専門家や動物愛護活動に従事する方達の「不当なイメージを払拭しよう」とする長年の努力の成果でもあるのです。優しく、社交的で忠実といった本来の気質を、その活動を通じて発信し、かつてのように「アメリカを代表する犬」として広めようとしています。


本来の気質に関係なく、不当な評判ばかりが目立ってしまったブリーたち。これでは、いじめっ子というより、いじめられっ子だなあ、と思ってしまいました。人間の都合で誤った印象を持たせてはいけないし、誤った印象を持たれないようにしっかり訓練しないとダメだよね、とも思いました。

 
h/t to What is a Bully Breed? | Bully Breeds | Animal Planet , 翻訳:anu-ric


[1] Molosser – Wikipedia, the free encyclopedia
[2] Bull-baitingの意味 – 英和辞典 Weblio辞書
[3] Sergeant Stubby – Wikipedia, the free encyclopedia

 
Featured image by Rita Kochmarjova via shutterstock

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