モントリオールの”危険な犬”排除の条例、施行が停止される

世界の犬事情
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カナダ・モントリオール市のブランテ市長は12月20日、昨年12月施行のピットブルの飼育規制関連条例の中断を発表しました。2016年から議論され、二転三転が続いてきた”モントリオールのピットブル問題”に、一応の終止符が打たれたことになります。

”モントリオールのピットブル問題”

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image by Crystal Alba / Shutterstock

”モントリオールのピットブル問題”とは、ピットブルタイプの犬の飼育を規制する法律を巡る一連の騒動のこと。市は、2016年6月発生の犬の咬傷による女性の死亡事件を受け、9月に特定犬種を規制する条例を採択します。

この条例の元でモントリオール市民は、ピットブル(アメリカンピットブルテリア、アメリカンスタフォードシャーテリア、スタッフォードシャーブルテリア、ミックスなど広範囲の品種を含む)を新たに迎え入れることはできず、既存の飼育者は外での口輪着用とリードの使用が義務付けられ、150ドルの許可証の購入が必要となります。新規譲渡ができないことや、飼い主負担の増大から、飼育放棄や殺処分に繋がるとして愛護団体や愛好家たちは激しく反発。条例の曖昧さを指摘するなどの努力が実り、条例の施行は10月に一旦延期となりました。

しかし、その後も市議会の姿勢は変わらず、12月にケベック州控訴裁判所が施行と認めたことで、規制条例が有効となったのです。

愛護団体や愛好家は、この決定にひどく落胆しました。が、ただ手をこまねいて受け入れただけではありませんでした。カナダ全土が犬たちの支援に名乗りをあげ、犬たちは陸路や空路を使って”避難”を始めたのです。中には1,900マイルを旅した犬もいました。

新政権が条例の品種規制を中断

この潮目を変えたのは、新たな市長を迎えた、新市議会でした。動物に関する規制等を担当するSauve市議会議員は、ピットブルの規制を定めた条例は12月20日の承認により中断されると発表、特別な犬種が危険なのではなく、全ての犬が潜在的に危険な犬と考えて市民の安全を守る方向にシフトする姿勢を打ち出しました。

新しい市の規制のもとでは、”ピットブルタイプの犬”に特別なライセンスの購入や口輪の着用は必要ありません。その一方で、品種に限らず攻撃的だと判断された犬は規制下に置かれることになります。また、特定以上の体重の犬はハーネスの着用が義務付けられます。

改正された動物規制細則は2018年に市議会に提出される予定です。

長らく裁判所での戦いを続けてきたモントリオールSPCAは、今回の発表を勝利として歓迎しました。SPCA弁護士のGaillard氏は「12月20日から、どんな見た目の犬でも養子に出せることになったことを、非常に嬉しく思います」

一方、犬の咬傷事件で亡くなった女性の遺族は、この決定に非常に落胆したとコメントしています。品種別規制を支持する家族は言います。「今後も多くの死者が出るだろう」

くしくもアメリカでは、”ピットブルタイプ”の2匹の犬による女性殺害事件が発生しており、品種による規制問題自体は今後も議論が続きそうです。モントリオールでは今後も、より効力を発揮する細則を定めるため、犬の専門家や科学者と協議を行う予定だということです。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Appeal court overturns suspension of Montreal’s pit bull bylaw | Montreal Gazette
[2] Montreal suspends pit bull ban, will consult before reworking bylaw next year | CTV News

Featured image credit Matthew Lyon / Shutterstock

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