ヴィクトリア流のトレーニングってどんなもの?英国人カリスマドッグトレーナーの考え方に迫る
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ワンコたちと暮らす飼い主さんにとって、「しつけ」は大きな関心ごとですよね。トレーニングには興味がある、でも様々な理論や考え方があって、どれが正しいのか効果はあるのか、よくわからないというのが飼い主さんの本音だと思います。
the WOOFも正直、「どのトレーニング方法が良い/正しい」ということはわかりません。ただぼんやりと「正しい方法」があるのではなく、個体ごとに適した方法があるんじゃないかなぁというように思っています。
よくわからない・・・のであれば、調べてみるが吉!
ということで、様々なトレーナーさんやトレーニング手法、さらにはその考え方について簡単にまとめてみることにいたしました。かなり不定期に更新する連載のような形になります。
ちなみに、よくわからないとか言っちゃってる人たちが調べるものです。「これが良い」「正しい」などと主張するものではありません。また解釈にも間違いがあるかもしれません。間違いを見つけたり、ご意見のある方は、ぜひコメントをくださいねー。
ヴィクトリア・スティルウェルのポジティブ・トレーニング
今回は、いわゆる「カリスマ」と呼ばれるドックトレーナーの一人、英国人ドッグトレーナーのヴィクトリア・スティルウェル(Victoria Stilwell)さんをご紹介します。
現在、日本でも『美人ドッグトレーナー ヴィクトリアが行く!』(It’s Me Or The Dog (Us Versino)|アニマルプラネット)が放映されており、知名度も上昇中であろうヴィクトリアさん。2005年にスタートしたこの番組は、すでに100エピソードを数え、なんと100カ国以上で放送されているというから驚きです。みんな、ワンコのトレーニングに悩んでいるのね・・・。
ヴィクトリアさんは主に、「ポジティブ・トレーニング(positive training)」を提唱されています。ポジティブ・トレーニングとは、『犬と人間とが信頼、尊敬、愛情に基づく共通言語を築き上げ、この共通言語を使って犬が正しい行動を選択できるように導くこと』と定義づけています。とにかく、「イヌとヒトとの信頼」がとても大事で、支配や優劣という考え方や罰によるしつけは行わない立場だそう。ちなみに、このポジティブ・トレーニングという言葉は、科学的な裏付けのある用語ではないよ、という注意書きがありました。
ポジティブ・トレーニングの4つの柱
ポジティブ・トレーニングは、以下の「4つの柱」に支えられています。4つ揃ってはじめて、イヌとヒトとが信頼と愛情に裏打ちされた長期的な関係を構築できるとヴィクトリアは唱えています。
- 正の強化を使う(the use of positive reinforcement)
- 懲罰的方法を避ける(Avoiding the use of intimidation, physical punishment or fear)
- 支配・優位といった概念を正しく理解する(A comprehension of the often misunderstood concept of dominance)
- 犬の目線に立って犬について深く理解しようとすること(A commitment to understanding the canine experience from the dog’s point of view)
1. 正の強化を使う
心理学を学んだことがある方ならお馴染みの「正の強化」という概念を使っていこうという考え方ですね。ここでいう正の強化とは、スキナーの実験的行動分析の立場からの定義「オペラント行動(自発的反応)に対して正の強化刺激を随伴的に出現させることにより、当該オペラント行動の生起頻度を増大させる操作およびその過程[1]」を指していると思われ、乱暴な言い方をすれば報酬を使って望ましい行動を引き出そういう試みであります。
「正の強化」とともに「負の罰」と声による指示を組み合わせ、ワンコが望ましい行動を選択できるように導くというのが、トレーニングの中心となる考え方のようです。ここで「負の罰」というのは「正の強化刺激の除去」のことであり、たとえば、犬の好きな食べ物や飼い主の注目、玩具など、ワンコにとって嬉しいモノ・コトを取り除く除くことをいいます。
まさに「褒めて育てる」考え方ですね!
2. 懲罰的方法を避ける
体罰や恐怖を使うわないよ!というのが2番目の柱です。(犬が)対立的/懲罰的なテクニックにより訓練された場合、その効果は長続きしないだけでなく、犬が攻撃的になる可能性すらあることが、研究により示されているそうで、「毒をもって毒を制することに効果はない」とヴィクトリアは主張しています。
「電気ショックや犬の助骨あたりにサッと蹴りを入れたって、犬は大丈夫」っていう考え方も(とくに古い訓練方法を推進している人には)あるようですが、そんな「罰」を与えるより「痛くない」やり方があったら、そちらを選択したいですよねーと言っています。
3. 支配・優位といった概念を正しく理解する
「ヒトが主導権を握るべきだ」という主張は、ワンコたちの飼い主さんなら一度は聞いたことがあるかもしれません。犬には支配ー服従の本能があるとか、「アルファ」「トップドック」「群れのリーダー」などのリーダー的存在を必要としているといった考え方から、イヌとヒトとの関係においてもリーダーが必要であり主導権は人間が取るべきである、といった文脈で使われることが多いのではないでしょうか。いわゆる「ドミナンス理論(dominance theory)」に基づく考え方ですね。
ヴィクトリアは、イヌとヒトとの間の支配や優位について、(トレーニングにおいては)「あまり考えなくても良いのではないか」と言っています。「イヌの問題行動は、人間との支配欲や主導権争いから起こるものではない」のであって、ドミナンス概念をトレーニングに持ち込むと、不幸せなイヌを生むだけだと主張しています。「犬はわたしたちを支配しようとしているのではない。単に、彼らの世界のルールに従って生きているだけ。懲罰的なトレーニング手法を使う必要はない」という考え方が根本にあるようです。
支配するのではなく、お互いに信頼できる関係を築こうよ!とここでも言っていますね。
4. 犬の目線に立って、犬について深く理解しようとすること
忘れてしまいがちですが、かわいい我が子は「イヌ」であってヒトではないのです。イヌは彼ら独自の知覚世界に生きていて、見えているものも聞こえているものも、それらの刺激の理解も、ヒトとは全く異なるのです。
ワンコの認知している世界をわたしたちは見ることはできません。でも、彼らのどのように認知しているのかを推察することは、きっと問題行動の解決に役立つよ!とヴィクトリアさんは言っています。人間の言葉を理解させるのではなく、犬の言葉を理解しようと努めることで、お互いの絆が深まるし、結果として問題行動の解決策を模索するときの助けにもなるよね、というのがトレーニングの基礎となる考え方のようです。
以上、4つの柱という基盤のうえに、実際のトレーニング時にはクリッカー等のさまざまなテクニックが使われています。どのように「褒めて伸ばす」のか見てみたい〜という方は、ぜひ番組をご覧ください。契約してないよーという方は、いくつかの動画がYouTubeなどで公開されているようですのでそちらをチェックしてみてね。
h/t to What is Positive Training? | Victoria Stilwell Positively, 翻訳:バリケロ
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 中島義明 編(1999)『心理学辞典』有斐閣
Featured image by arturasker / Shutterstock
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