一卵性双生’犬’が南アフリカで誕生〜胎盤を共有した2匹、同一ゲノムを持つと確認される

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アイリッシュ・ウルフハウンドの母犬が、南アフリカ病院で’一卵性双生犬’を産んだニュースです。多胎のイヌが多胎児を産むことは当たり前なのですが、同じ遺伝子を持ち、同じ胎盤を共有した双子が公に確認されたのは史上初だということです。


南アフリカの動物病院で働くKurt de Cramer獣医師にとって、その日も平凡な1日になるはずでした。

腹部の緊張に苦しむ母犬に帝王切開を施すことも、彼にとっては特別なことではありませんでした。彼が行う手術数は年間約900件。知識も経験も豊富な彼は、ちょっとやそっとでは動揺しないほど手術には慣れっこになっていたのです。

しかし、出産を控えたアイリッシュ・ウフルハウンドの様子は彼に、「いつもと違う感じ」を抱かせました。母犬の膀胱が、異常なほどに大きく盛り上がっていたのです。胎水が多いのであろうと推測し、胎児を取り出そうと切開した彼は、思いもよらない光景を見ることになります。彼が目にしたのは2匹の胎児。1匹しかいないはずの場所に胎児が2匹いて、同じ胎盤を共有していたのです。

さて、ここで多胎について確認してみましょう。多胎とは、二人以上の胎児を同時に宿すこと。犬にとっては一般的に観察される出生形態であり、だから通常、犬猫の一腹の仔は双子などとは呼ばれずに「兄弟」と呼ばれ扱われます。

多胎は卵生と膜性によって分類されます。卵生による分類では、一卵性(一つの卵細胞が一つの精子と受精)、二卵生(二つ以上の卵細胞が排卵され、別々に受精・着床)にわかれます。一方、膜性による分類では、羊膜と胎盤により3つに分けられます。2絨毛膜2羊膜双胎(羊膜により分けられ、胎盤は2つ)、1絨毛膜2羊膜双胎(羊膜により分けられ、胎盤は一つ)、1絨毛膜1羊膜双胎(胎児は同じ空間と胎盤を分け合う)の3つです。最後の、同じ空間と胎盤を分け合う1絨毛膜1羊膜双胎は人間では珍しくタリスクも高いタイプだということです。

胎盤を共有するのは、犬であっても珍しいケース。26年の経験を持つde Cramer獣医師も、このケースは初めてだったそうです。驚きつつ冷静に観察した彼は、性別が同じで似通った柄を持つ2匹の胎児が「同じゲノムを持つ一卵性ではないか」と思い至り、血液サンプルを分析に回しました。結果、2匹が一卵性双生’犬’であることが確認されたのです。

これまでにも、周囲が気づかないうちに一卵性双生’犬’は誕生していたのかもしれません。同腹から産まれる仔がよく似通っているのは珍しいことではありませんからね。しかし、公に「一卵性である」と確認されたのは史上初のこと。当件はアウトラインにまとめられ、8月26日のReproduction in Domestic Animalsに掲載されました。

飼い主目線からすると、これまでにも存在していたんじゃないの?と言いたくなる今回の発表。ポイントは「存在したかしないか」ではなく「確認できるか」というところにあるようです。同腹の仔はよく似ているし、胎盤を食べることは一般的。科学的に確認するチャンスには、なかなか恵まれないそうなのです。遺伝子検査を行った研究者は「遺伝子で双子が確認できたのは、ラッキーだったというより他ない」と喜びを語っています


この2匹には、他に5匹の兄弟がいるそうです。同時に生まれた7匹のうち2匹が一卵性だったととのこと。6週齢時に再度行った検査では、双子とそれ以外の5匹のゲノムが異なっていることが確認されています。

Featured image Kurt de Cramer

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