犬に咬まれる危険について、真剣に考えたことはありますか?
「えー、最近は野良犬も見かけないし散歩のときはリードを付けてるでしょ。突然咬まれることなんてないんじゃない」というのが、割と普通の反応だと思います。
犬に襲われるおそれは十分にある
しかし、場所が変わればルールも変わる。外出時のリードの利用が必須ではない国もありますし、野良犬がたくさん暮らしている国というのももちろんあります。
現在私が住んでいるイギリスでは、犬をリードに繋ぐことが義務化されていません。公園に行くとフェンスで囲まれた遊具で遊ぶのが人間の子供で、犬はその周りの芝生を自由に走り回っており、住み始めた当初は「これって逆じゃない?」と困惑したものです。
日本でも、飼い主さんの不注意で脱走することや、リードが抜けてしまい逃走などというリスクもありますよね。
日本における2012年の咬傷事故の件数は4,198件と、10年前の6000件超という数字に比べると減少傾向にはあります。しかし、このうち野犬は84頭であり、圧倒的に飼い犬によるものであることには驚かされます。「咬傷事故発生時における犬の状況」を確認すると、放し飼いが1,063件、けい留中が2,031件であり、リードに繋がれていようといまいと事故が起こるときには起こってしまうことがわかります[1]。
犬に突然襲われる、咬まれるという事故は、思っているより身近なものなのです。
犬に襲われたら、どうしたらいいの?
それでは犬に襲われたときはどう行動したら良いのでしょうか。
アメリカ人獣医師ソフィア・イン(Sophia Yin)氏のブログ記事、”Dog Bites: What To Do When You’re Attacked“に基づいて考えてみましょう。
獣医師であり、熱心なランナーでもあるイン氏の毎日は、犬に咬まれるリスクと隣り合わせなんだとか。治療行為はもちろん、ノーリードの犬と対峙することもしばしばあるそうです。でも、過去20年間で咬まれたのは数回のみ、しかも軽症で済んだということです。
その秘訣について彼女は、「第一には冷静になること。叫び声を上げたり逃げたりすると、かえって犬を刺激してしまいます」と述べています。
・犬は捕食行動をするんだよ〜お互いに落ち着くことが最大の防御
犬には狩猟行動が本能として残っていると言われます。狩猟行動や捕食行動というと、獲物に忍び寄って襲いかかり噛み殺して食べるという行動を指します。犬は、この捕食行動が変化した行動をとるのです。すなわち、犬の場合は追いかけても捕まえても殺したり食べたりするとは限らず、また、たとえ生き物でなくても、ボールやバイクなど動いているものを追いかける[2]」行動をとるのです。
「犬が来た!」と逃げまどうと、犬の「追いかけたい」スイッチをオンにしてしまいます。
最大の防御は、落ち着くことです。
- 脇に寄って静かに立つ(君のテリトリーには侵入しないよ、という意思表示)
- 腕を組んでおく(腕を振り回したい衝動を抑えましょう)
- 視線を犬からはずす(敵意はないですよ、という意思表示)
・それでも攻撃は続く〜怖すぎる状況で出来ること
そうはいっても、そんなに簡単にいかない場合もありますよね。そもそも、犬がいることすら気が付かない状況でいきなり襲われたときはどうするのかという問題もあります。
必要なのは守りの姿勢です。
- 犬に背を向ける(顔や喉などの急所を守ろう)
- 手を握っておく(指を守ろう)。防御するなら前腕を使う
- 地面に押し倒されたら丸くなる(膝を曲げて両手は首の後ろにまわしてボールの形に)
とにかく非常事態に陥ったら、弱い場所(顔、お腹、指、喉)を守るための姿勢をとるようにしてください。噛まれてしまったら、無理に引き抜こうとしないでください。引くのではなく、むしろ犬の喉に向って押し込む方が良いと言われます。犬が苦しくなって口を開けるからです。
犬が攻撃するのは恐怖心から
あなたに向ってくる犬の多くは、噛み付こうとしているわけではありません。恐怖心から、突進したり、吼えたり唸ったりすることが多いのです。あるいは、活発な犬ならば、ただ遊びたいだけなのかもしれません。
犬が来た!ぎゃーこわい〜と思っても、叫び声をあげるのはNGです。特に女性やお子さんは注意したいところ。私の経験からすると、女性や子供の甲高い声は犬を興奮を引き出してしまうようです。へっぴり腰で手や棒などを振り回すのは最悪です。とにかく落ち着いて落ち着いて。
私の家には2頭のイヌ家族がいます。うち1頭は、「ウーッ」とと唸り声をあげてしまうことがあるのです。この子は実は極端に臆病で、会った事のない犬や、見かけ(?)が怖そうな犬に出くわすと大きく迂回して私達のところに戻ってきます。迂回は無理な状況にあっては、「ウーッ」と唸って「近づくな、あっち行け!」と主張します。強面な容貌も相まって、側からみると立派なコワイ犬。でも本当は、恐怖に怯えているんですよね。
とはいえ、自分の容貌を棚にあげて、他の犬を怖がるとはナニゴトか!と思わずにはいられません。
あまり考えたくない状況ではありますが、もしもの事態に陥ったときのため、「逃げない、叫ばない」という対策を覚えていてくださいね。これが、あなたを被害者にしないため、そして犬を加害者にしないための方策です。
[1] 3.動物による事故 (1)犬による咬傷事故件数 | 環境省
[2] 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ