雪を愛する犬にとっては、冬はお楽しみの季節でもあります。キリリと冷たい空気の中で思いっきり走ったり、ふわふわの雪に飛び込むのは、とっても楽しいことかもしれません。
しかし、冬には冬の病気のリスクがあるのです。寒い時期にかかりやすい病気には、以下のようなものがあります。
低体温症
低体温症(hypothermia)とは、深部体温(直腸温,膀胱温,食道温,肺動脈温など)が正常な生体活動の維持に必要な水準を下回ったときに生じる様々な症状の総称です。放置すると罹患動物は凍傷の兆候を示すか、または死亡する可能性があります。
低体温症は軽度(32~35℃)、中等度(28~32℃)、重度(28℃以下)の三段階に分類されます。軽度では元気がなくなり震えが見られ、中等度では筋肉の硬直や血圧の低下、浅い呼吸などがみられます。重度では心音は極めて弱くなり、呼吸困難、昏睡状態、瞳孔が開くなどの症状があります。
寒さに強いといわれる犬ですが、寒い環境に長時間放置されれば低体温症はどんな犬でもなりえます。とくに体温調節機能が未熟な生まれたばかりの犬や年若い子犬、機能に衰えがみられるシニアはなりやすいと言われます。
低体温症を防ぐためにすべきこと
- 寒い場所に長時間いさせない(冷たい床や風の通る場所にも注意)
- 被毛が濡れたらしっかり乾かす(雪遊びや雨の日の散歩、シャワーの後は完全に乾かす)
- 寒さに弱い犬種(短毛)、若齢・老齢犬には洋服や靴を着用させる
低体温症が疑われるなら
- 毛布などでくるんだり、湯たんぽをあてがったりして体温を上昇させる
- かかりつけ動物病院に連絡する。動物病院では身体の外側からだけでなく内側から温める処置(胃洗浄、浣腸、そして静脈内への輸液など)や投薬なども検討される
凍傷
凍傷(frostbite)とは、極端な低温により細胞や組織が損傷を受けた状態のことです。
凍傷の症状には以下のようなものがあります。重症になると回復しても皮膚の感覚が失われたり、組織が壊死して切除を余儀なくされることもあります。
- 皮膚の変色:皮膚が青白く、または薄い灰色のようになる。重症になると黒っぽく変色する
- 皮膚状態の変化:しなびた状態で、触れたときに冷たい。さらに進むと腫れたり水泡が形成されたりする
- 痛み:触れたときに痛がる
凍傷を防ぐためにすべきこと
- 極端に寒い時期は、屋外での活動を制限する
- 被毛が濡れたらしっかり乾かす
- 寒さに弱い犬種(短毛)、若齢・老齢犬には洋服や靴を着用させる
凍傷が疑われるなら
- 毛布などで身体全体をくるみ、暖かい部屋へ移動する
- 患部をぬるま湯で温める(患部をマッサージしないこと)
- かかりつけ動物病院に連絡。重症になると切除が必要になるおそれもあるので、早い段階で動物病院で処置してもらうこと
- 容器はしっかり閉め、犬猫の肉球の届かない場所に保管する
- 使用の際は不凍液をこぼさないように注意。こぼれたら徹底的に清掃する
- 使用済み容器は放置せず、適切に処分する
- すぐに動物病院に連れて行く。不凍液中毒に限らず毒物を摂取した場合は治療までの時間が長ければ長いほど予後が悪くなることを覚えておくこと
- ワクチンの接種:病原体(Bb、CAV-2、CPIV)に対してはワクチンが開発されている
- 栄養管理、体調管理に注意し、体力、抵抗力、免疫力を高く維持する
- 衛生管理がしっかりしているドッグホテル、サロンなどを選ぶ
- 免疫力が正常な成犬の場合は、通常2週間程度で自然に治癒するが、6週齢~6ヶ月齢の子犬では重症化しやすいので、はやめに獣医師に相談する
- 罹患が疑われる動物は同居動物から隔離し、ウイルスが広まらないようにする
不凍液中毒
寒い時期は不凍液を使用する機会が増えるため、不凍液中毒(エチレングリコール中毒)のリスクも高くなります。
エチレングリコールとは、無色の甘味をもつ液体(2価アルコールの一種)で、犬猫には中毒症状を引き起こす危険なものです。不凍液以外にも様々なものに含まれますが、不凍液は犬が好む甘味を有していることや、エチレングリコール濃度が非常に高いことから少量でも致命的な悪影響を起こすことから、特に注意です。
不凍液中毒の症状は、吐き気/嘔吐、発作、昏睡などがあり、アルコールを摂取したいとき状態に似ています。時間の経過とともに心拍数や呼吸数の上昇がみられ、さらにすすむと嗜眠、鬱血、よだれ、うつ状態、発作、そして最悪の場合は死に至ります。
不凍液中毒を防ぐためにすべきこと
不凍液摂取が疑われるなら
くしゃみ、鼻水、鼻詰まり
人間と同じように、犬や猫は風邪のよう症状をみせることがあります。くしゃみ、うっ血、涙目、咳、鼻水、といった風邪の症状が見られることは、犬猫でもかなり一般的です。
ちょっとした咳、目が涙に濡れている、鼻水がタラリと出てくる、少し元気がない場合は、愛犬の身体がウィルスに降参しないようお世話をしましょう。部屋を暖かくして湿度が低くなりすぎないよう気をつける、身体を清潔に保つ、暖かい食べ物を与えるなどです。
若齢犬や老齢犬に症状がみられるときは、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。水や食事を取らなくなったり、気になる症状が1〜2週間続くようなら、より深刻な病気などが考えられます。獣医師に相談しましょう。
ケンネルコフ
ケンネルコフは、伝染性の高い呼吸器疾患で、気管および気管支の炎症により咳(空せき)や発熱などの症状が長く続きます。
不衛生な飼育環境や、体力および抵抗力の衰えなどが誘因となってウイルスや細菌に感染することでしばしば発症します。狭く囲われた動物用の施設(病院、訓練所、保護施設)にいること、冬季の気温、ストレスなどはすべて、ケンネルコフ発症のリスクを高めます。
ケンネルコフを防ぐためにすべきこと
ケンネルコフが疑われるなら
Featured image creditMaria Evseyeva/ unsplash