我らが愛しき犬たちは、食事以外のさまざまな目的で口や歯をつかいます。
そのため、何らかのトラブルに見舞われると、犬たちの生活の質はグググっと大きく下がってしまいます。
犬のお口トラブルにはどんなものがあるのか、ざっくりと確認しておきましょう。
異物による傷
犬たちが噛んでモノを確かめたり、咥えてモノを運んだりするのは皆さんご存知のとおりです。犬は良いものも悪いものも、硬いものも尖ったものも口にすることがあり、これが歯などに詰まって悪さをすることがあります。たとえば、オモチャの破片や棒により口の中を傷ついてしまい、その傷口にウィルスが入り込んで炎症を起こすことは少なくありません。
普段から、犬の口の中を定期的にチェックするよう心がけましょう。歯、口蓋(口の中の上側の部分)、歯茎に何も詰まっていないことを確認します。口臭が異常にキツい場合も要注意です。感染を含む病気の恐れがあります。
歯の破折・咬耗
硬くて硬いモノは、歯が割れたり折れたり、すり減ったりする原因になります。
破折(はせつ:歯が割れたり折れたりひび割れること)や咬耗(こうもう:噛むことによって歯がすり減ること)は犬には一般的で、衝突、引っ張りっこ、乱暴な遊び、あるいは固すぎるガムやオモチャなどでも生じることがあります。
歯が損傷した場合、すき間から細菌が歯の神経に入りこみ、神経が細菌に感染してしまいます。神経は、かなり痛みながら死んで腐って、さらに腐った神経の中で細菌が繁殖し化膿します。痛みや腫れがみられるだけでなく、進行するとアゴの骨にまで悪影響が及ぶことがあります。
破折や咬耗は、噛むものをコントロールすれば十分に避けられます。硬すぎるオヤツやオモチャは与えないよう、岩や柵やケージを噛み続けることのないように、気をつけましょう。なんらかのきっかけで歯が折れたり割れたりしたときは、痛みなどの症状がなさそうに見えても動物病院で検査をしてもらうようにしましょう。歯の根っこや奥の奥が傷ついているかもしれません。
口まわりのイボ(口腔疣贅)
イヌ口腔パピローマウイルス(the canine oral papillomavirus,)は、犬の唇や歯茎、舌に口腔疣贅(簡単にいうとイボ)を生じさせます。幸いなことにパピローマウィルスによって発生するイボは良性で悪化することはまれ[1]。免疫力があがるにつれ自然に治癒します。ただし、いちどに大量に発症することがあり、重症になると治癒までに数ヶ月かかったり、傷つけて出血することもあるため、念の為動物病院で確認するようにしましょう。
不正咬合
犬にも不正咬合(ふせいこうごう:歯並びと上下の歯の噛み合わせに異常があること)はあります。極端な場合、痛みがあったり飲食に不自由することがあり、その場合は歯科矯正が行われます。
乳歯遺残
乳歯遺残(にゅうしいざん)は、本来抜けるべき乳歯がそのまま口内に残ってしまうこと。本来は不要である歯が残ってしまうと、永久歯が正常に生えるうえでの障害となり、またその他のお口トラブルの原因となることもあります。
歯周病
歯周病は犬ではもっとも一般的な健康問題のひとつであり、犬猫の多くが3歳までに歯周病の兆候がみられるとも言われています。
歯周病は、お口の中の細菌によって引き起こされる感染症です。お口の中の細菌は、そのまま放置すると歯垢(プラーク:犬の歯の表面に付着するネバネバとした物質)をつくりだし歯周病を引き起こします。歯垢は取り除かなければ硬化して歯石に変化し、歯の表面に強固に付着します。この歯石の中や周りにさらに細菌が入りこみ、毒素を出し続け歯周病を進行させます。
歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり腫れたりしますが、この段階では痛みがある場合もない場合もあります。さらに進行すると歯を支える土台が溶けて歯がグラグラしはじめ、最終的には歯を失うことにもなりかねません。歯周病の細菌は血流をつうじて他の器官に移動し、悪影響を及ぼすことがあります。
幸いなことに歯周病は、毎日のハミガキや定期的な動物病院での検診・クリーニングにより予防することができます。
歯根膿瘍
歯根膿瘍(しこんのうよう)は、歯の根元に炎症が生じ、膿がたまった状態のこと。犬の”ほっぺた”が膨らんだようにみえるので、びっくりする飼い主さんは少なくありません。歯の亀裂や破損、歯周病の進行などにより感染が起こった場合に生じるとみられています。
痛みを伴い、飲食にも不自由するようになるので、早めに動物病院で検査を行い治療を開始しましょう。膿が周囲に広がる可能性があります。
その他の炎症
口内炎:犬も口内炎(口腔粘膜の炎症)になることがあり、これはかなり痛みを伴うことがあります。
歯肉炎:歯石が歯肉組織の中や下に食い込み始めると、歯肉は刺激を受け炎症を起こし、歯肉炎と呼ばれる状態になります。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 6 Common Mouth Conditions in Dogs | petMD
Featured image creditKuttelvaserova Stuchelova/ shutterstock