犬のデンタルケア〜歯科検診と歯科治療は必要なの?

健康管理
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犬にとっても歯の健康は、健やかで快適に暮らすうえで欠かせないものです。

犬たちの健康を維持するために、飼い主のわたしたちが、デンタルケアの必要性と重要性を理解する必要があります。

[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] この記事の監修者

ゼファー動物病院 上條圭司(かみじょう けいじ)院長

麻布大学獣医学部卒業後、横浜市内の動物病院にて研修。1990年に東京都八王子市にて動物病院開業、現在に至る。Team HOPE 副代表。

犬にもお口のケアは必要です

ペットの犬にも歯磨きや歯科治療が必要だというと、驚かれたり、不思議に思われたりすることがあります。

「野生動物は歯磨きなんかしない(だから犬には必要ない)」とか、「カリカリやオヤツで汚れは取れている」というイメージが、”歯磨き不要”という考えに繋がっているのだと思われます。

確かに、野生の犬は歯ブラシもフロスも使いません。彼らの食べる自然で新鮮な食べ物(とくに生肉中の軟骨、靭帯、腱など)は天然のデンタルフロスとして作用するため、歯の健康を保つのに役立つのです。

カリカリやデンタルトリーツを食べること、デンタルトイを齧ることは、野生の犬の食餌と同じく、歯を綺麗にするうえでの助けにはなります。表面上の汚れを落としたり、お口のニオイを改善するうえでは一定の効果は得られるのです。

しかし、お口のトラブルを予防するうえでは、これだけでは不十分です。歯と歯茎の間にたまる汚れを除くことはできませんし、歯石や歯垢の蓄積、これに伴う炎症などの問題にも対応することはできません。実際、野生の動物でも歯肉炎などの問題は発生しています[1]

加工食品や、ときに人間の食べ物すら口にするペットの犬には、人間と同様のお口のケアが必要なのです。

  • 日々のデンタルケアは、ワンコの息を爽やかにしてくれます
  • 歯周病は治療が困難。治癒よりも予防​​するほうが簡単です
  • デンタルケアにより、口臭、痛み、歯の折損の原因となる歯科疾患を予防することができます。人間同様犬たちも、歯肉炎、歯周病、歯の喪失、感染症などに苦しみます
  • 歯科疾患は全身の健康に影響します。歯周病の細菌は、心臓、腎臓、肝臓などの疾患に関連していること、そして炎症も糖尿病や心臓病などに関連していることがわかっています[2]。デンタルケアは、病気の予防に直結するものです

獣医師による検診や治療は必要か?

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犬の歯に溜まった歯石と歯垢(プラーク) image by Igor Chus / Shutterstock

わたしたちが歯科治療を必要とするのと同様に、ペットの犬も検診や治療を必要としています。

・犬の歯周病は気づきにくい

ペットの犬の80%が3歳までに歯周病を患うと言われています。歯周病は腫れや痛みを引き起こしますが程度はそれぞれで、多くはまったく気づかれません。また、痛みがあっても犬たちは、それを上手に隠して普段どおりに振る舞うものです。

歯周病を適宜治療しなければ、歯茎は炎症を起こして出血や痛みを引き起こすばかりか、歯根が非常に深刻な影響を受けて、一部の歯が緩んで脱落することがあります。

深刻な状態になる前に、犬の”秘密”を暴き適切な治療を受けさせるためにも、獣医師による定期的なチェックが必要です。

・生え変わりが正常かを確認する必要がある

犬にも歯の生え変わりがあり、乳歯が抜け大人の歯が生えてくるものです。しかし、ときに乳歯が残ってしまい、炎症や歯石の蓄積などの歯科問題を引き起こす原因となる事があります。

乳歯が全て抜けているか、42本の歯が正常に生えているかを確認するためにも、獣医師のチェックは大切です。

・獣医師がみるのは歯だけではない

飼い主のわたしたちにできるのは、愛犬のお口をアーンして、歯が綺麗か汚いか、損傷がないかを確認する程度です。しかし獣医師は、より広い範囲で観察し、より深く検査することで問題点を特定します。歯科用X線検査により肉眼では見えないあごの骨や歯根部のポケットなどを観察することもできますし、歯周ポケットの診査(歯周プローブ検査)により腔内所見だけではわからない歯肉縁下の情報を得ることもあります。

愛犬が語らぬ痛みや不快感の原因を明らかにするためには、専門的なケアが必要なのです。

・歯科問題の進行を遅らせることができる

歯肉炎は、獣医師の歯科治療とフォローアップケアにより回復が可能です。歯周病は完治を目指すことは困難ですが、在宅でのケアや定期的な病院でのクリーニングにより、病状の進行を遅くすることは可能です。

・獣医師の歯科治療では将来の感染の可能性も減らすことができる

獣医師の歯科治療では、歯の表面の目に見えるプラークと歯石だけでなく、歯茎下の細菌も除去されます。エナメル傷を滑らかにするための研磨や骨折した歯または感染した歯の除去または修復により将来の感染の可能性を減らします。ここまでの徹底した治療には、麻酔下での検査と治療が必要です。

お家でのケアは必要か?

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image by Kachalkina Veronika / Shutterstock

獣医師による歯科治療は非常に重要ですが、日々のお家でのケアも同じくらい大切です。

少なくとも1日おき、好ましくは毎日、とっても忙しいときでも1週間に1回は、歯を磨くようにしましょう。

犬のお口の中では私たちの口の中で起こるのと同じ生物学的プロセスが進行しています。歯の表面を覆うバイオフィルム(ぬるぬるした粘着物)は72時間放置すると石灰化し、薄い膜を形成します。これが時間の経過にともない積み重なり、「プラーク」と呼ばれる厄介な黄褐色の塊になります。

定期的なブラッシングはバイオフィルムを破壊し、歯垢・歯石の蓄積を防止または低減するのです。お口の健康を守る最善の方法は、ペット用のプロダクトを使って(ペット用の歯磨きやジェル)、歯ブラシまたはガーゼなどで毎日歯を綺麗にすることです。歯磨きが難しい場合は、経口リンスやプラークおよび歯石除去の有効性が確認された食品等を使うこともできます。この場合はぜひ、獣医師に相談してください。

お家ケアは、愛犬のお口の健康をより良いものにし、プロの歯科治療の間隔を長くするのに役立ちます。


毎日のお家ケア、そして専門家による検査と治療は、爽やかな息を守るだけでなく、長期的には出費を抑えることにもつながります。

ご長寿犬を目指すなら、歯のケアは欠かせません。次に動物病院を訪問したときにはぜひ、歯科の問題について話し合ってみてくださいね。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Wildlife Dental Health – Veterinary Medicine at Illinois
[2] Animal Dental Care is Important – University Veterinary Hospital
[3] Dental care – The Kennel Club
[4] Pet Dentistry: Why Dogs (and Cats) Need Dental Care Too | petMD

Featured image creditBCFC/ shutterstock

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