エチレングリコールを含む不凍液等は、犬猫にとって非常に危険です。犬では重度の急性腎不全を引き起こし、猫では死に至る場合もあります。
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エチレングリコール中毒とは
エチレングリコールとは、無色の甘味をもつ液体(2価アルコールの一種)で、水と混ぜて不凍液などに用いられます[1]。犬猫には中毒症状を引き起こす危険なものです。
不凍液摂取による中毒が多いため、エチレングリコール中毒は寒い時期に注目されますが、不凍液以外にも、色素(塗料や顔料)、溶剤、油圧ブレーキ液、乾燥防止剤、写真用塗料、保冷剤などにも使用されているため、年間にわたり注意が必要です。
とはいえ、やはり気をつけなければならないのは不凍液です。不凍液は犬が好む甘味を有しており、エチレングリコール濃度が非常に高い(95〜97%)ため、少量の摂取も危険です。少量でも、脳、腎臓、肝臓をなど身体の各器官には致命的な悪影響を及ぼします。致死量は、犬では2〜3ml、猫で0.64mlです[2]。
エチレングリコール中毒の症状
症状は摂取直後から現れ、アルコール中毒に似ています。エチレングリコールは肝臓で代謝されますが、このとき作られる代謝産物(グリコアルデヒドやグリコール酸エステル、シュウ酸エステルなど)が臓器の損傷やその他の症状を引き起こします。
エチレングリコール中毒には3つの段階があります。
・ステージ1:摂取後30分から12時間
- 吐き気・嘔吐
- 元気がなくなる
- フラフラする、運動や歩行の失調
- 筋肉のひきつれ
- 眼球がチカチカと急速に動く
- 頭をブルブルと振る
- 反射能力の低下排尿回数の増加と異常な喉の渇き
・ステージ2:摂取後12〜24時間
心拍数の上昇や呼吸数の上昇などの心血管系の兆候
・ステージ3:摂取後36〜72時間
重度の急性腎不全が起こります。症状には、食事をとらない、嗜眠、鬱血、よだれ、口臭、昏睡、うつ状態、嘔吐、発作、そして死亡が含まれる
エチレングリコールを摂取したら
できるだけ早く動物病院に連れて行くことが非常に重要です。摂取から治療までの時間が長ければ長いほど、予後は悪くなります。
診断は困難を伴うことがあります。症状が他の病気や外傷と区別がつかない場合や、エチレングリコールが代謝分解されている場合などがあるためです。嘔吐物または糞便を持って行くことは、獣医師の判断を助けます。愛犬の病歴や発症前後の状況についての詳細な説明も助けになるでしょう。診断は通常、病歴、身体検査、血液や尿の検査、超音波検査およびそれらの組み合わせにより行われます。
治療は、体内へのエチレングリコールの吸収を防いで排泄させ、毒性を防止する目的で行われます。エチレングリコールの吸収の前か後かで治療が異なることが多く、摂取後すぐ(1〜2時間)であれば、嘔吐や胃洗浄ののち、活性炭と硫酸ナトリウムの投与が行われます。時間が経過してエチレングリコールが吸収された後なら、輸液により尿量を増やす方法(同時に脱水の補正)が取られるでしょう。
治療期間は摂取から治療開始までの時間の長さに比例します。すぐに身体から排出できた場合は家に連れ帰ることができるかもしれませんが、治療が遅れた場合は数週間の長期の治療が必要になることもあります。
エチレングリコール中毒の予防
エチレングリコールが犬猫に中毒症状を引き起こすものであることを認識し、それらを使用する場合にはペットを近づけないことがもっとも有効な予防です。
- 不凍液の容器はしっかり閉め、ペットの肉球が届かない場所に保管しましょう
- 不凍液をこぼさないように注意しましょう。こぼれた場合は、直ちに徹底的に清掃してください
- 保冷剤を置きっ放しにしないよう注意しましょう
- 使用済みの不凍液や不要な保冷剤は、適切に処分しましょう
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] エチレングリコール – 環境省
[2] Antifreeze Poisoning in Pets: Diagnosis, Treatment and Prevention
[3] Pet Poison Helpline | Antifreeze Poisoning in Dogs and Cats
[4] Veterinary Manual
ホリデーシーズンは犬のチョコレート中毒に注意を | the WOOF イヌメディア
the WOOF イヌメディア サイエンス・リサーチ ホリデーシーズンは犬のチョコレート中毒に注意を