犬猫の立場はどうなる!? ニホンジカは’最もペット向き’(オランダ研究)

サイエンス・リサーチ
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オランダ、ワーゲニンゲン大学(Wageningen Univeristy)の研究者が、ペットとするのに適した哺乳類のリストを発表しました。ペットの両雄である犬猫は「種が多い、自由に動き回る範囲が広い」などの理由で評価の対象から除外されており、ペット向きナンバーワンを示すものではありませんが、’ペット向きの動物’が何を指すのかを考える良い材料になると思います。

1位はニホンジカ(Shika deer)、ワラビーが後を追う

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ナンバーワンです♡ image by John Carkeet / Flickr

オランダの動物研究者たちが結集して、90の哺乳類についてペットにするのに適しているかを評価する試みを行い、結果を発表しました[1]

結果、最もペット向きであると判断されたのはニホンジカ(Shika deer, 学名:Cervus nippon)。東アジアに分布するシカの一種で、私たちが普通にシカと呼んでいるあの動物です。ちなみに名前に’ニホン’と入っていますが、日本固有種ではないそうです[2]。第2位はスナイロワラビー(学名:macropus agilis)、第3位はダマヤブワラビー(学名:Macropus eugenii)とワラビー軍団が後を追っています。

4位のラマ(学名:Lama glama)や5位のマレーパームシベット(学名:paradoxurus hermaphroditus)など、上位を占めるのはいずれも馴染みのない動物ばかり。名前を聞いただけで姿を想像できる方は、かなりの動物ツウですね。

動物たちへの先入観と差別を減らすための評価

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image by kommunicate.this / Flickr

『ペット向き動物のランキング』と言うと、お遊びみたいに聞こえますが、この取り組みの目的は動物への理解促進と権利保護にあるようです。

オランダでは2013年に施行されたthe Dutch Animals Actを受けて、いわゆるエキゾチックアニマル(伴侶動物として飼育される特殊な動物)を飼育する人が増加しています。こうした流れを受け、研究者たちには動物たちの性質をよりよく知ってもらうこと、そしてペット家族を選ぶ際に先入観やイメージだけでなく、客観的な情報も加えて判断してもらいたいと思ったようです。

the Dutch Animals Actでは、特別な知識やスキルを持たなくても飼うことができる動物、すなわち元々の(大きく)性質を変えずともペットとしての生活に適応しやすい動物を’適切(suitable)’としています。よってここで言う’ペット向き’とは、サイズや見栄えではなく、固有の性質をもってペットとしての生活を送ることができる度合いのことを言っていると考えて良さそうです。

固有の性質を変えずに幸せに生きられる動物は?

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image by Behavioral Ecology of Captive Species: Using Bibliographic Information to Assess Pet Suitability of Mammal Species | Animal Behavior and Welfare

動物はその進化の歴史の中で、環境適応のために固有の性質を育んできました。人間社会に馴染む性質もありますが、中には抑制しなければ適応することが難しい性質・行動もあります。例えば恐怖にさらされた時やストレス環境に置かれた時、自分や人間に危害を加えるような性質・行動です。この性質を抽出し、分析・評価したのがこの研究です。

研究者たちはフレームワーク及び評価基準を定め、90の哺乳類についてその生態、欲求(食餌、性、安全)、人間への危険度、生活圏を限定された場合の幸福・健康度合いなどを評価しました。フレームワークは広範な書誌データの文言を抽出し分類して構築され、文献からの抽出文言や専門家からの評価を統計分析して最終的なリストにまとめられました。客観性を維持するために、データの収集、分類、評価はそれぞれ別のチームが行ったそうです。

研究者たちはフレームワーク及び評価基準について定期的に見直しを行い、より正しく評価できるものに修正したいとしています。

また、この結果を見て「犬よりワラビーを飼った方が良いのかも」と思う人がいたら、ちょっと待って。論文の筆頭著者であるKoene氏(Paul Koene)は、シカやワラビーが街を歩いているのを予想するわけでもないし「犬や猫は特別なペット。ワラビーは彼らに取って代わるわけではない」とコメントしています。


ところでシカといえば奈良公園…ですが、奈良公園に生息するシカは国の天然記念ぶつに指定されている野生動物です。個人が捕まえたり傷つけたりすることは違法行為ですので、ペットにしちゃお!なんて考えないでくださいね。

ところで、気になるのは犬猫は私たちと生活を共にするために、どの程度固有の性質を曲げなければならないのか?という点です。いつかそんなこともわかる日が来るのでしょうか。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Koene, P., Rudi, M., & Ipema, B. (2016). Behavioral ecology of captive species: using bibliographic information to assess pet suitability of mammal species. Frontiers in veterinary science, 3.
[2] ニホンジカ – Wikipedia

Featured image credit Daniel Stockman / Flickr

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