普段何気なく見ている犬の仕草には、犬たちのいろいろな気持ちが隠れています。
犬は、ボディーランゲージ(身体言語)を使って他の犬に気持ちを伝えています。同様に、飼い主である人間にも、肉体の動作を利用して、自分たちの気持ちを伝えていると言われています。
イヌの気持ちを表す動作〜カーミング・シグナル
ノルウェーのドッグ・トレーナー ルーガス氏(Turid Rugaas)は、犬たちがお互いの気持ちを伝え合い、集団生活の中での不要な争いを避けるための仕草を「カーミングシグナル(Calming Signal)」として、30ほどに分類しました。
ルーガス氏によれば、「いくつかのシグナルは、ほどんどの犬に共通して使われますが、それ以外は、犬によって使われたり、使われなかったりする」そうです。人間と一緒で、犬もボキャブラリー豊かなコとそうでないコがいるのかもしれませんね。
犬がよく見せる8つのストレス・シグナル
犬がストレスを感じたときによく見せる、カーミング・シグナルをご紹介します。わたし自身がよく目にしたもの(残念ながらストレスを感じさせているんですね・・・)で、皆さんも「あ~、あれね!」と思い浮かぶようなものだと思います。
あのお馴染みの仕草には、どんな気持ちが隠されているのでしょうか。
1. あくびをする(Yawning)
動物病院の待合室で待っている時、飼い主さんに怒られている時など、よく見られる仕草ですよね。眠たいとか、誤魔化しているのかと言われがちですが、「もうやめて!」と思っているときに出る仕草だそうです。病院の待合室なら「もうやめて!帰ろうよ」でしょうし、飼い主に怒られている時には「もう怒らないで!」と言っているのでしょうね。
決して真面目に話を聞いていないという訳ではありません。実は、すごく不安とストレスを感じていて、一生懸命「もうやめて!」と言っているのです。
2. 鼻や口をなめる(Licking)
舌をだして鼻や口をなめているときは不安を感じているときや、相手に「敵意はないよ、落ち着いて」と伝える時に使う仕草です。カメラを向けた時にこの仕草を見せるときは「なんだか落ち着かないなぁ」でしょうし、散歩でほかの犬に会った時にこの仕草を見せる時は「落ち着いてね、仲良くしてね」の気持ちの表れでしょう。
3. 前足をあげる(Lifting one paw)
犬が招き猫のように片足だけをあげたり、片足を飼い主にのせたりすることがありますよね。一見飼い主の注意をひくためだけの行動のように見えますが、じつは犬が緊張していたり、不安なときに自分を落ち着かせようとしている仕草でもあるのです。「あ〜、怖いよ〜。まてまて、ちょっと落ちついて」と自分に言い聞かせているときにでる仕草です。
4. 地面の匂いをかぐ(Sniffing the ground)
初めてのドッグランに入ったり、動物病院に入ったり、そんな時、急に地面の匂いを嗅ぎはじめることがあると思います。これは犬が不安や緊張を感じていて、自分を落ち着かせようとしている時に出る仕草です。人間が緊張すると深呼吸して「落ち着け、落ち着け」と言い聞かせるような感じかもしれませんね。
5. 固まる(Freezing)
まるでフリーズしたように動きがとまるような仕草を見せたときは相手に対して「なにもしないよ!だから嫌なことしないでね」と伝える時や、「逃げたいけど逃げられない!」とどうしていいか分からなくて混乱した時に見せる仕草です。犬がこの仕草を見せたときは何か困っているんだなと理解してあげて下さい。トレーニング中に強い口調で命令した時にこの仕草を見せたら「もう怒らないで!」と訴えてる場合もあるでしょうし、「何言われてるか分からない」と混乱している場合もあるでしょう。
6. 体を震わせる(Shaking Off)
知らない場所に連れてきた時、見知らぬ人に囲まれた時のように犬が緊張している時、体が濡れたあとにするように全身をブルブルっと震わせることがあります。これは犬が嫌がっていて、そして「もうやめて!」と思っている時に出る仕草です。
7. 首をかく(Scratching)
動物病院で待っている時、飼い主に怒られている時、よくみせる仕草ではないでしょうか。「もう嫌なんだよ!やめて!」という気持ちが表れています。まるで話をそらしてごまかしているような仕草にもみえますが、実は強いストレスが隠れているのです、
8. 目をしばたかせる(Blinking)
まばたきが増えるように目をしばたかせている仕草が増えるときは、相手に敵意がないことを伝えて「仲良くしよう」と伝えている時や「なんだか嫌だなぁ・・・」とストレスがかかっている時に見せる仕草です。見知らぬ人に抱っこされている時に目をしばたかせているときは「嫌だなぁ・・早く終わらないかなぁ・・」でしょうし、散歩中にほかの犬と会った時に見せる場合は「仲良くしようね。私は友好的よ!」と愛想よくしている場合もあるでしょう。
仕草の中にある犬の気持ちには、「自分が考えていたものと違う」というものも沢山あったのではないでしょうか。人間は自分たちのやり方を犬に押し付けてしまいがちですが、彼らなりのやり方や表現方法があることを理解しなければならないんですよね。
落ち込んだり、悲しい気持ちでいるときに、側に寄り添ってくれることって少なくはないですよね。きっと犬たちも、人間の気持ちを懸命に読み取ろうとしているのでしょう。わたしたちも一生懸命、犬の気持ちを理解しようと努力すれば、よりよい関係が築けるのではないかとおもいます。
◼︎以下の文献を参考に執筆しました。
[1] トゥーリッド・ルーガス. (2009). 『カーミングシグナル by.トゥーリッド・ルーガス』. エー・ディー・サマーズ
[2] ヴィベケ・S. リーセ, & 藤田りか子. (2011). 『ドッグ・トレーナーに必要な「深読み・先読み」テクニック: 犬の行動シミュレーション・ガイド』. 誠文堂新光社.
[3] ヴィベケ・S. リーセ . (2014). 『いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック』. 誠文堂新光社.
[4] 西川文二. (2013). 『しぐさでわかるイヌ語大百科 カーミング・シグナルとボディ・ランゲージでイヌの本音が丸わかり!』. ソフトバンククリエイティブ.
Featured image by Kachalkina Veronika / Shutterstock
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by Fido 散歩する犬達が、トイレのために必ず立ち止まる場所があります。 犬の飼い主たちは、そこは単なるお気にいりの場所としか思っていません。しかし、当の犬達にとっては、それ以上の意味を持つといいます。