犬の歩きかたは、犬それぞれ。品種や、トレーニングおよび生活環境、または健康状態によって、あるいは地形、情緒の状態、疲労の程度などに影響を受けるので、犬ごとに異なります。
とはいえ、犬に共通する歩きかたもあります。速度や特徴から、おおむね5つに分類されます。
常足(なみあし、ウォーク、Walk)
3本の足がいつも身体を支えている歩行です。各脚が順次持ち上げられます。左の後肢で犬の踏み台に続いて左の前脚が続きます。その後、犬は右の後肢を歩いて、次に右の前足を歩きます。犬の頭と首は、前肢がスイングするときに下がり、下に置かれたときに引き上げられます。
荷物を引っ張るときの歩行はパワーウォーク(Power Walk)と呼ばれます。幅は短くて遅く、頭を下げて重心を前方に移動させ、前肢の推進を助けます。
ウォークより早く、ペイスやトロットよりも遅い歩きをアンブル(Amble)といいます。同じ側の脚が一緒に前進している(常に地面にある)ように見える点が特徴です。ウォークから他の歩様に移行するときにみられます。
側対歩(そくたいほ、ペイス、Pace)
ペイスは、同じ側の脚が一致して動く歩きかたで、たとえば左前脚と左後脚が地面を蹴るような動きをします。少し速度が早いだけで、全ての点でアンブル に似ています。
この歩様は、筋肉が発達していない子犬や、エネルギーを節約する必要のある太りすぎの犬にみられます。または疲労や身体が衰弱しているときにもみられます。
ペイスは、ドッグショーの歩様審査で審査対象とされません。ただし、犬種によっては容認されており、AKCはオールド・イングリッシュ・シープドッグ、ポリッシュ・ローランド・シープドッグ、ナポリタン・マスティフはペナルティを受けません。
速足(はやあし、トロット、Trot)
トロットはもっとも効率的な、身体の対角線の両端にある足が一緒に接地するリズミカルな2ビートの歩行です。すなわち、対角線上にある右前脚と左後脚が前方に移動し、その後に左前脚と右後脚が動きます。その間に全ての脚が空中にとどまる時間を挟みますが、ほとんど目立ちません。
トロットは、犬の身体の両側を同じように働かせる必要がある歩様であり、運動量を必要とする犬に適しています。
駈足(かけあし、キャンター、Canter)
キャンターは3ビートの歩行で、四肢のパターンが左右で異なる非対称歩行です。動きは、後脚、反対側の後脚と対角線上の前脚、もう一方の前脚の順です(例:左後脚→右後脚と左前脚→右前脚)。 トロットより遅いこともありますが、ギャロップに素早く移行することができます。滑らかで省エネルギーであるため、長距離を移動するためによく使用されます。
襲歩(しゅうほ、ギャロップ、Gallop)
ギャロップは最も速い歩行であり、これも非対称歩行と分類されます。シングルサスペンション・ギャロップとダブルサスペンション・ギャロップの2種類があります。
シングルサスペンションギャロップは、犬の背骨が曲がって始まり、地面に2つの後足があり、一方の足(前足)がもう一方の足の前にわずかに先行しています。その後、犬は脊柱を伸ばし、前足を前方に伸ばし、一方の足(先の足)を他方の足よりわずかに先に地面に当てます。その後、犬は脊柱を屈曲させて後足を前方に戻し、再びサイクルを開始します。
ダブルサスペンション・ギャロップは、グレイハウンドやウィッペットなどのサイトハウンド犬種にのみみられる歩様で、犬は前脚を前方に伸ばし、後脚を後ろに伸ばして4本の脚が地面から完全に離れます。スピードは出ますが体力を大きく消耗させるため、長い距離を走るには不向きです。
犬の一般的な歩くさまについての知識を持っておくと、怪我や疲労、病気などからくる歩行異常を認識し適切な行動をとることができます。ときどき少し時間をとって、愛犬の歩く姿をじっくりと観察してみてくださいね。気になることがあれば、獣医師に相談しましょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Looking Over the Gait: The Basics of Canine Movement – American Kennel Club
[2] Textbook of Small Animal Orthopaedics – Chapter 91 Normal And Abnormal Gait
[3] Gaits FOOT-FALL PATTERNS
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