歩き方は犬それぞれ〜イヌの歩行や走りに関する6つのお話

犬のカラダ
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動物の歩きや走りといった動作は、単純に見えても実は複雑。なかなかに奥が深いものです。

今日は犬の歩きや走りについてのお話です。

1. 前脚と後脚は何が違うのか

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image by Mark Robinson / Flickr

イヌを機械にたとえると、身体の後ろの部位(hindquarters)が身体を動かすエンジンの役割を果たします。前脚をふくむ部位は、駆動の段階ではそれほど大きな役割を果たしませんが、体重を支える、進行方向の舵取りをする、ブレーキをかけるなどの様々な役割を果たします。体重の60%ほど(品種によっては75%)を担うのがフロント部分で、ジャンプした場合などの着地の影響を受けるのもこの部分です。

2. 肉球の状態は歩き方に影響を与える

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image by Alan Levine / Flickr

犬の歩行に肉球は大きな役割を果たします。厚くて頑丈な肉球は、衝撃を吸収します。ザラザラした肉球をもつ犬は、より踏ん張りがきくため、牽引力が高くなり、迅速に回転(方向転換)することもできます。犬たちの華麗、かつ力強い動きを支えているのは、健康で頑丈な肉球なのです。

3. 動物種が違えば歩き方も違う

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image by Keith Luke / unsplash

動物が動くときの、反復的に使う四肢のパターンをGait(歩くさま、歩様)といいます。

犬の歩きかた、走りかた〜Gaitの5分類 | the WOOF イヌメディア

Gaitは、身体の構造や動物の生活環境・習慣等、様々なものから影響を受けるため、動物種間で大きく異なります。四足歩行動物の歩行パターンはそれほど豊富にはありませんので、どれも似ているように見えますが、実は大きく異なるのです。

たとえば、犬の歩行を考えるときに馬との比較はよく行われますが、馬と犬とは身体のつくりが大きく異なるため、単純な比較はできません。17または18の助骨をもつ馬に比べ、犬の助骨は13で、容量が少なく短い消化器を有しています。

このため犬は脊柱を屈伸させて前方に駆動するための大きな力をつくることができます。また、橈骨と尺骨があることにより、鋭くて正確なターンを描くこともできます。さらにグリップがきき繊細な感覚をもつ肉球の存在は、犬たちに、より複雑な歩きを可能にします。

グレイハウンドがするように、前後の脚を伸ばして走ることは、馬にはできません。これは訓練や気合の問題ではなく、そもそもの身体のつくりが異なるからできないのです。

4. 品種間でも違いはある

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image by Ekaterina Brusnika / Shutterstock

動きに影響を与えるのは動物種だけではありません。同じ犬という種であっても、品種やブリーダーの違い、トレーニング、経験、健康状態、地形、情緒の状態、疲労の程度など、様々な要因が影響を与えるのです。様々な品種の犬の歩行の違いを記述した比較文献はほとんど存在しませんが、品種の違いから歩きにも違いをもたらすことは疑いないことでしょう。ある犬の”正常な’歩行特性は、別の犬には難しい歩行となる可能性もあるのです。

5. 犬の歩様についての研究

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image by https://wellcomeimages.org/indexplus/obf_images/0c/9e/afe315f90cc39c1ec107f7105dba.jpg / wikipedia

犬の歩行に関する科学的研究は、写真の発明とともに19世紀後半に始まりました。 それまでも歩く犬の姿は絵画などに描かれていましたが、あまり正確なものではありませんでした。犬の歩行の最初の研究は、英国の写真家で、映像による動きの先駆的な研究を行ったEadweard Muybridgeによって行われました。1880年代にペンシルバニア大学の支援を受けて行った研究では、動物園の動物や人間の日々のアクションを連続して撮影し、後の研究に大きく貢献しました。1888年には、レースのグレイハウンドのストライドをシーケンスとしてまとめています。

6. ユニークな歩行をする犬種

グレイハウンド、ウィッペット、その他のサイトハウンドは、ダブルサスペンションギャロップ(Double Suspension)またはロータリギャロップ(Rotatory Gallop)という、背中をバネにするユニークな走りをします。この走法では、4本脚を身体に引きつけるときと4本脚を前後に伸ばしきったときに、脚が完全に地面から離れます。

ミニチュア・ピンシャーや、イタリアン・グレイハウンドは、馬のように前脚を高くあげるハックニー歩様(hackney gait)をします。これは、他の品種では正常から外れた不正歩様と言われます。

チャウ・チャウは品種に特有とされるStilted Gaitをします。後脚の動きが制限されて、直線的な動きしかありません。チャウ・チャウでは問題のない歩様ですが、他の品種では検査が必要になります。

ボーダー・コリーは、頭を低く下げる脚を小さく持ち上げる「ステルス」と呼ばれる動作で家畜を追うことがあります。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Looking Over the Gait: The Basics of Canine Movement – American Kennel Club
[2] Textbook of Small Animal Orthopaedics – Chapter 91 Normal And Abnormal Gait
[3] Gaits FOOT-FALL PATTERNS

Featured image creditRoman Seliutin/ shutterstock

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