犬の中には、ゴハンやオヤツ、さらには咀嚼した食べ物を隠すコがいます。
せっかく手に入れたウマウマを貯蓄するという謎行動。彼らは一体なぜに、そうした行動をするのでしょうか?
動物の”ためこみ行動”
野生動物の中には、ためこみ行動(ホーディング[Hoarding]やキャッシング[caching])をするものがあります。ホーディングもキャッシングも、野生動物の食糧の貯蔵をさしており、もっとも一般的には、食糧不足に備えて豊富なときに貯蔵することですが、動物の中には熟れるまで貯蔵する「熟成キャッシング(ripening caching)」という行動をする動物もいます。
ホーディングは主にげっ歯類の行動に用いられ、キャッシングは鳥に関して一般的に用いられる言葉ですが、行動そのものはどちらもよく似かよっています。
人についてもこの「ホーディング」という言葉が使われることがあります。大量の物品を度を越して蒐集する行動パターンは、「ホーディング障害」とか「強迫的ホーディング」などと言われます。アニマル・ホーディング(animal hoarding)は日本語では多頭飼育崩壊などと訳されています。
ペットの犬の食べ物隠しも、canine hoardingなどと表現されます。
なぜ犬は食べ物をためこむのか?
ホーディングの理由として考えられているのは、「飢餓動因との関係」「欲求不満経験」「環境要因」「生理要因」です。ペットの犬の場合は、飢餓に備えていた野生時代の名残と、不安な心持ちが理由として考えられます。
・野生時代の名残
食べ物を隠しておけば、空腹になったときでも確実に食事にありつける…というのが第一の理由です。いつ食べ物にありつけるかわからない生活をしていた野で暮らしていた犬は、狩猟の成果により食べられる量が制限されていました。このため、食糧が豊富にあるときにこれを隠しておき、狩猟に失敗したときなどに備えていたのです。
現代の「食う寝る」が保証されているワンコにも、この本能が残っているというのが、考えられる最大の理由です。
・不安な心もち
犬が置かれている環境に不安を感じているときも、食べ物を隠す可能性があります。
他の犬に脅かされていると感じたり、飼い主の近くで食べるのが苦手だったり、広いスペースで食べることに慣れていない場合などは、不安から「あとで食べよう」と食べ物を隠すことがあると言われます。犬が緊張や不安を感じているようなら、静かに落ち着ける場所で食事させると良いかもしれません。あなたの犬が緊張している、不安な、または恥ずかしがりな人格を持っている場合は、彼自身で静かな場所で彼を食べたいかもしれません。
それは医学的な問題か?
「食べ物を残して隠す」というと、心身の健康に問題があるのではないかと考えてしまいがちですが、一般的には健康上の問題とは関連がないと言われています。
医学的な問題を抱える動物は、食べ物を完全に無視し、まったく食べない(あるいは食べられない)もので、それを隠すことはありません。一方、与えられたフードが嫌いな犬は、他のものをオネダリするかもしれませんが、嫌いなフードを隠すことはありません。食べようとするが痛みなどから食べられない犬は、食べようとして失敗する(食べ物を落とすなど)ことはあっても隠すことはありません。
食べ物を隠す行為は、重い罪ではありませんが、飼い主にとってはヘンテコかつ迷惑な行為でしかありません。腐って嫌なニオイを発するようになる前に、やめていただけるようお願いしておきたいところです。
ためこみ行動を防ぐ方法のひとつは、一度に与える食事の量を減らし、回数を増やすことです。食べ物を残すことができなければ、隠すこともできません。もうひとつの方法は、食べる環境を変えること。臆病で慎重な性格のコの場合は、静かな環境でゆっくり食べさせると改善することがあります。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Canine Hoarders: Why Do Dogs Bury Food?
[2] Hoarding (animal behavior) – Wikipedia
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