中国原産の10犬種

犬種
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長い長い歴史をもつ中国を原産国とする犬をご紹介します。その多くは、祖先を何世紀も遡ることができる、長い歴史をもつ犬たちです。

中国固有の犬種は、1780年ごろまで国外に知られておらず、1800年代に入ってようやく密輸の形で国外に登場しました。

1. チャウ・チャウ(Chow Chow)


image by Jens Schott Knudsen / Flickr

紀元前から中国にいた大型犬、チャウ・チャウ(熊狮犬)。もっとも古い品種の一つに数えられるこの犬の誕生は、3000年以上前だと言われています。2004年に発表されたDNA分析では、チャウ・チャウは遺伝子的には秋田犬にもっとも近いことが示されました。

一見するとライオンのような容姿の大型犬。顔まわりに豊かに広がる被毛と青黒い舌、アーモンド型の目に特徴があります。フワフワの毛の下には筋肉質の身体が隠されており、狩猟犬、番犬、ソリ引き犬、食用犬として、長きにわたり人々の生活を支えてきました。独立心が強く見知らぬ人には警戒するため、ときに獰猛との評を受けることがありますが、誤った刺激がなければ攻撃することはありません。早くからの訓練で、社会性を育むことが非常に重要です。

2. 重慶犬(Chinese Chongqing dog)

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image by Deanna / Flickr

中国の重慶原産の犬、重慶犬(じゅうけいいぬ)。シャー・ペイの祖先と言われることもある古代犬種で、誕生は2000年以上前と言われます。強靭で丈夫な身体をもち、非常に勇敢であるため、中国では狩猟や番犬などとして重宝されてきました。ほとんど人間の介入なしに自然に繁殖してきた品種であるため、品種の特性は不安定で定まっていません。

3. クンミング・ウルフドッグ(Kunming Wolfdog)

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image by Bigsteeve / Wikipedia

クンミング・ウルフドッグ(昆明犬)はもともと中国の雲南省で軍事目的に使われていた犬。中国が身体能力が高い賢い犬の作出を目指して、独自に繁殖した犬種です。1950年代に誕生したオオカミとのハイブリッドで、外貌はジャーマン・シェパードに似ています。作出データは国家機密として扱っていると言われ、犬種に関する情報は多くありません。1988年に中国で公式に認められ、軍用犬、警察犬などとして使用されはじめました。

4. ペキニーズ(Pekingese)

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image by teel s / Flickr

中国の首都、北京の名を冠したペキニーズは、DNA分析により2000年以上の歴史を持つことが確認されている犬です。長きにわたり霊魂を追い払うことができる神聖な犬として崇められ、中国皇室のみが所有を許されていました。1860年の英仏連合軍の北京占領の際に、数匹が英国のビクトリア女王への贈り物とされたことで死を免れ、同時に英国進出をも果したました。

壮麗な被毛をもつペキニーズですが、美しさを維持するためには、1週間に1時間ほどのブラッシングが必要です。活動レベルはそれほど高くないため、集合住宅での飼育にも向いています。明るい性格ながら、独立心が旺盛な「皇帝の犬」です。

5. パグ(Pug)

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image by Daniel Sandoval / unsplash

大人気の鼻ぺちゃ犬、パグ(巴哥)。もっとも古い歴史をもつ犬種の一つで、紀元前400年前にチベットの仏教寺院でペットとして飼われていたと伝えられています。古代中国では、皇帝や支配階級の愛玩犬として豪華な暮らしを満喫していました。彼らは他のアジア地域に勢力を伸ばし、14世紀ごろにはすでに日本にも持ち込まれていたそうです。18世紀にはヨーロッパに広がり、イギリスで人気を得て標準化されました。

短い鼻の小型犬。短毛でダブルコート、毛色はフォークとブラックの2色。暑さに弱く寒さに弱いこの犬種は、短吻種ならではの多くの健康上の問題を抱えています。たくさんの運動が必要な犬ではありませんが、健康を保つためには犬種の特性を十分に学び、普段から細やかにケアをすることが大切です。

6. シャー・ペイ(Shar Pei)

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image by ccho / Flickr

皮膚にシワがよる、非常に特徴的なした容姿の犬、シャー・ペイ(沙皮狗)。闘犬として知られるこの犬は、勇気と粘り強さで賞賛されています。

シャー・ペイは、「砂の肌」を意味する広東語で、広東省の広州近郊で誕生したと考えられています。漢王朝時代(紀元前202年〜220年)の彫像にはシャー・ペイと思われる犬が描かれており、この時代にはすでに誕生していたことが伺えます。狩猟、追跡、牧畜、そして番犬として使役されていましたが、闘犬が普及してきたことで強制的に戦う犬として駆り出されたのです。

シワの寄った肌に困り顔が特徴ですが、この他にチャウチャウと共通する青黒い舌という顕著な特徴も有しています。非常に知的で忠誠心が高い犬ですが、同時に頑固なところもありますので、早期の社会化が必要です。また日々の長めの散歩も必須です。

7. シー・ズー(Shih Tzu)

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image by Robert Nunnally / Flickr

流れるような美しい被毛をもつ小型犬、シー・ズー(獅子狗)。ラサ・アプソとペキニーズの交配から生まれたと考えられています。紀元前624年の絵画に描かれているのがシー・ズーだと見られることから、この頃にはペットとして飼われていたものと推測されています。中国皇帝から愛されたこの犬は、1930年代にイギリスに持ち込まれたことをきっかけに、ヨーロッパを中心に人気を得ました。

献身的で遊び心いっぱいの小さなライオン、シー・ズー。美しい被毛を維持するためには、定期的なグルーミングが必要です。小さくて可愛い犬ながら下毛が密生しており、思った以上に寒さに強い犬です。

8. チベタン・マスティフ(Tibetan Mastiff)

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image by timquijano / Flickr

中国チベット地方を原産地とする超大型犬。中国、インド、モンゴル、ネパール、チベットの遊牧民族や家畜たちを外敵から守り続けていました。非常に忠実で恐れ知らず。クマや虎でも怯むことなく攻撃できます。もっとも古い歴史をもつ犬種のひとつで、その起源を正確に遡ることはできません。

6000年前には家畜化されていたという説もあり、他の品種の遺伝子の源になっている可能性があります。紀元前1100年ごろの記録に家畜の保護をした大きな犬についての言及があり、これがチベタン・マスティフであると考えられています。最近話題にのぼるのが高価格化で、2000年代半ばから大きく高騰しはじめ、2010年には1億円超で取引される犬も登場して話題となりました。しかし2013年ごろから飼育の難しさや事故の多発などにより人気が陰りをみせています。

9. チベタン・スパニエル(Tibetan Spaniel)

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image by Ladykransteer / Wikipedia

ヒマラヤ山脈近くで2,500年以上前に誕生したとされる小さな犬。シー・ズーと同様にライオン風の外貌をもつことから、チベットの修道寺院で大切に飼育され続けたとみられています。警告吠えに優れていたことから、番犬としてもおおいに活躍しました。名前にスパニエルとつくがスパニエル種ではなく、チベットとつくがFCIでは中国を原産国としています(チベットからは抗議の声が上がっている)。

10. 下司犬(Xiasi Dog)

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image by LauraKelsch / Wikipedia

下司犬(シャーシィ)とは、中国の貴州を原産とする狩猟犬、番犬、家畜管理の犬。強い筋肉をもつ彼らは、脚が速く、機敏で、訓練が容易であることで知られています。白く短い被毛に尖った耳を持ち、富をもたらすと信じられていました。

おまけ:チャイニーズ・クレステッド・ドッグ(Chinese Crested Dog)

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image by batwrangler / Flickr

名前に”チャイニーズ”がつくものの、アフリカのヘアレス犬種(アフリカン・サンド・ドッグ)が先祖だと考えられている犬。頭部、尻尾、足の部分にしか毛がないというユニークな容姿が名前の由来で、この外貌が満州人の辮髪(弁髪)を彷彿させるとしてこの名で呼ばれるようになりました。部分的に毛がある犬と、ほとんど毛がない犬がおり、皮膚の色も真っ白から黒と様々です。このユニークな容姿から海外に多く輸出されたため、中国国内の政策変更があっても絶滅を逃れることができました。

元気で活発、飼い主を喜ばせることが大好きな犬。トリックも得意で、飼い主の注意を引くためにせっせと芸を続ける健気な犬でもあります。猫のように高い場所に座るのを好むと言われています。

◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] CHINESE DOG BREEDS | Facts and Details
[2] Chinese Dog Breeds
[3] 8 Dog Breeds that Originated in China
[4] 12 Dog Breeds Of China With Histories As Unique As Their Looks – iHeartDogs.com

雪を心から愛する8犬種 | the WOOF イヌメディア

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