愛犬が落ち着く前のクルクル、ドスン。神妙な面持ちでベッドやクッションの上をクルクル回るのは、なんとも不思議な行動ですよね。
犬たちはなぜ、クルリと回ってから身体を横たえようとするのでしょうか。
先祖の安全確認の名残り
この可愛らしくも謎な行動は、安全ではない場所で寝なければならなかった彼らの先祖が、安心できる寝床を作るために行ったものの名残だそうです。さらに詳細な理由は以下のとおり様々に推測されていますが、一言でいば「安全の確保」。これに尽きるということに、多くの専門家が同意しています。
自分と家族の安全を確保するために、最も簡単な方法は草むらなどを脚で踏み潰すことでした。これにより、(1)周囲の状況を確認し脅威がないかを確認する、(2)害虫やヘビなどを追い払う、(3)石や棘、小枝などを探して取り払うことができました。
草を踏み潰す効果としては、(4)周囲の草が目隠しの役割を果たしてくれる、(5)平らな場所を作ることで他の動物に自らの存在をアピールする、といったこともあったようです。なぜ「回るのか」ですが、安全を確保し暖かさを維持する上で、お腹を守る丸まり姿勢と合致することが一つの理由になりそうです。
「平らで心地よい場所を作るためにクルクルするのか?」を実験で確認
しかし、これらの理由は専門家たちの推測にとどまっているようです。『デキのいい犬、わるい犬』などで有名な心理学者のスタンレー・コレン博士の調査では、「犬はなぜ寝る前にクルクルするのか?」を科学的に検証した論文というのは存在しないのだそう(強迫性障害などをテーマにしたものは除く)[2]。
そこで博士は犬31匹の協力を得て、「平らで心地よい場所を作るためにクルクルするのか?」を実験しました。1m×2mのケージの中に、(a)平らなラグを敷いた場合、(b)しわや凹凸ののあるラグを敷いた場合、で犬らの行動がどう異なるのかを確認しようとしたのです。飼い主がケージ側で目視で犬たちの動きを確認しました。
結果、15分間の実験中にラグの上で1回以上旋回した犬は(a)で全体の19%、(b)では55%だったそうです。平でなラグでクルクルする犬は約3倍にのぼり、「平らで心地よい場所を作るためにクルクルする」という説は「そうらしい」と証明された格好となりました。
心配すべきはどんなこと
クルクル行動をしたからといって、「可愛い愛犬の”野生”の現れか?」とか「そのうち遠吠えをし始めるのか?」などの心配はありません。現代では必要のない行動でも、現在の彼らにとって安全を脅かしたり必要な習慣に反するものでなければ、有用でなくともずっと続くことは珍しいことではないからです。
ただし、旋回が異常とも言えるほど長く続くとか、鳴き声を伴うなどといったときは、不快感や痛み、不安から回っている恐れもあります。ベッドなどを何度も踏みならしても快適に見えないようなとき(落ち着きがない、うめき声をあげるなど)には、関節炎などの神経の痛みや健康上の問題を想定し、獣医師に相談することをお勧めします。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Why Do Dogs Walk in Circles Before Lying Down?
[2] Why Do Dogs Turn in Circles Before Lying Down? | Psychology Today
Featured image credit Larry Vincent / Flickr
【犬の謎】犬におへそはあるのか〜あるなら一体、どこにある? | the WOOF
以前、『 ゴミ箱に捨てられていたチワワ、セラピー犬になって人を救う 』という記事を配信したのですが、その中に「救出された時の彼女には、まだ臍帯がついていました」という記述があります。 臍帯とは、いわゆるヘソの緒と呼ばれるもののこと。ということは、犬にもおへそがあるはず…なのですが、おヘソを見たり触ったりした記憶は私の中にはありません。