突然ですが、勉強はお好きですか?
学生時代にもっと勉強しておけば良かったと思う方も、もう勉強なんてこりごり!と思っている方も、様々だと思います。でもそれが、「犬と一緒に学ぶ」というプログラムだっら、どうでしょう?そんなプログラムを受けてみたいと思いませんか?
そんな夢のようなプログラムが、米大学でスタートしたというのです。しかも単位も貰えちゃうんですよ!
大学が提供する介助犬トレーニングプログラム
ユニークなプログラムを提供しているのは、ノースカロライナ・ウィルミントン大学(University of North Carolina Wilmington:UNCW)です。地域連携の一環として、大学と非営利組織”paw4people“が共同で「介助犬トレーニング(ADTP)」を展開することになったということです。プログラムは、2011年秋に設立されました。
プログラムは、4コースの段階的にレベルアップするプログラムで、修了すると修了証が授与されほか、大学の授業単位としても認められるそうです。最初の2コースで学生に「社会における介助犬の状況、役割、機能」の理解を促し、その後、実地研修と実習を通して介助犬のトレーニング法を学ぶステージにすすみます。学生と介助犬は多くの行動を共にし、犬たちは「人間の日々のくらし」や介助動作を学びます。
こうした段階を経て学生と犬は、ユーザー(ここでは「介助を必要とする人」の意味で使っています)への引き渡しの段階へとすすみます。介助犬が学んできたことを伝える手伝いをするのも、学生たちの役目です。
もちろん、専門家の十分な指導と支援があるからこそできることでしょうが、参加する学生の責任や負担は大変はものだと想像できます。素晴らしいプログラムだとは想いますが、一朝一夕に実現できるものではなさそうですね。
参加する学生は専攻も目的もさまざま
このプログラムはレクリエーション・セラピー(※)を学ぶ目的で設計されているそうです。しかし、集う学生たちの専攻は生物から心理学まで幅広いのだとか。就職のための地域貢献や奉仕活動と捉える学生も多い一方で、ボランティア活動そのものに興味を持つ学生も参加しています。
※ レクリエーション療法(Recreation Therapy)とは、レクリエーション的に治療を進めていくもので、リハビリテーションの一環として、作業療法のなかに組み込まれたりするが、レクリエーション的効果と治療効果を共存・合併した形態で疾病・障害の軽減を促進し、社会的、身体的かつ精神的健康の回復を図るための療育アプローチである[1]。
さまざまな目的があるとはいえ、多くの時間を費やす必要があるうえ、生きている犬や人間と接する必要があるプログラムですから、学生の学びも大きいようです。参加したことで「自分が何を大切に思ってきたか、これから何をしていきたいかがわかってきた」と語る学生もいます。paws4peopleの創設者兼CEOのヘンリー氏(Kyria L. Henry)氏は「生き方そのものに関与する(lifestyle commitment)」と表現しています。
学生たちは何を学ぶのか
Donate today to give independence and help another paws4people Service Dog be placed, free of charge, with a veteran or child with life-changing challenges! www.paws4people.org/donate
Posted by paws4people foundation on 2015年7月14日
ヘンリー氏にとって、大学生ほどの年の若者たちが「無欲であるという経験」をしているところを見るのは、とても気持ちのよいことなのだそうです。
大好きで夢中で育てた犬たちを、その犬をもっと必要としている人たちの元へ送り出すのです。想像しただけで、胸が締め付けられる体験ですよね。学生は大きく成長することでしょうし、その成長は企業などにとっても魅力的に感じられるものなのでしょう。企業などからの学生の評判も、概ね良いもののようです。もちろん、学業上での成果にもつなげる学生もいます。
プログラムを通じて、無欲の献身的努力をすること、自分が誇りに感じられる集団の一員でいること。そうした経験は学生たちに自信を与え、何事にも前向きに挑戦する勇気を与えてくれるのではないかと思います。
入門クラスの募集人数は75名。今学期も満員御礼なのだそう。うらやましい。
h/t to College’s dog training program gives students far more than class credit | USA TODAY College , 翻訳:鹿子
[1] 中島義明 (Ed.). (2011). 『心理学辞典』. 有斐閣.
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