身体にポンッと手を置くと、クルリと身体の向きを変えお腹を見せてくるワンコたち。「腹見せは服従の意味」なんて言われるけれど、この解釈だけでは全ての意味を説明しきれないようです。
お腹を見せてくるワンコたちは、どんな気持ちでいるのでしょうか。
★トップ写真: お腹を見せつつお腹を隠すアンタレス嬢 ©mitsuki(U ・ˑ̫・)(@mitsuki029) / Instagram
特にメッセージ性のない腹見せ
あなたが意図なく行動するのと同じように、ワンコたちも特に意味なくお腹を見せることがあります。
例えばリラックスしている時。フカフカのクッションに寝転がって「あ〜、気持ち良い」とひっくり返っている時は、見た目そのままにリラックスしているのでしょう。動画のノエ君(@hiroalmanoe)はお腹を見せてムニャムニャ中。完全にリラックスしています^^
この他、ダニの咬傷や皮膚アレルギーで背中に不快感(かゆみ)を感じているときも、お腹を見せることがあります。この場合、お腹を見せるというより背中を擦り付けるという方が正しい表現ではありますが。
お腹に風を受けるため、ひっくり返る犬もいます。暑い!ただそれだけ。
気持ちを表す腹見せ
一方で、社交の中で見られる腹見せ(相互作用を求めるもの)も、もちろんあります。ここには、ワンコたちのどんな気持ちが現れているのでしょうか。
・喜びの気持ち「とっても嬉しいよ!」
腹見せの他に、耳が下がり目が細くなって、口元も緩んでいるのなら、愛犬は「とっても嬉しい!」と大喜びのキモチを表しています。尻尾がハタハタ動いていたら、幸せを感じているサインでしょう。
・学習の結果「撫でてくれる?笑ってくれる?」
お腹を見せると良い結果になることを学習したワンコさんは、あなたの行動に反応する形でお腹を見せることがあるでしょう。お腹を見せると撫でてくれる、怒っていたのに笑ってくれるなど、腹見せと報酬とが結びつけられた結果、あなたに対してお腹を見せるという行動に出るのです。動画の柴犬たび嬢(@uchi05)は、パパに懸命に甘えんぼ中。「ハウスはまだイヤ!もっと遊びたいです!」と言っているみたいです。
・服従「降参だ。もう攻めないで」
腹見せの意味として古くから言われるものが、この「服従」というものです。攻撃を軽減するために、自発的に見せる行動です。アメリカの動物学者シュンケル(Rudolf Schenkel)はこの服従行動を、「何らかの臆病心と無力さ」を表すものであると述べています[1]。白旗を上げるように、お腹を見せることで攻撃を防ごうとするのです。他の犬との直接的な関わり(遊び状況)がない状況下で腹見せがある場合には、多くは服従と解釈されるようです。
・遊びの中での戦術「有利な姿勢に持ち込みぞ!」
他のワンコと遊んでいるときに見られる腹見せ行動。これは長らく、服従の意味を持つと解釈されてきました。しかし2015年に発表された論文[2]によれば、この姿勢は「戦い遊びの中で有利なポジションを得るための戦術」である可能性があるとのこと。研究者らは犬の遊びを観察し、また動画の分析を行うことで、腹見せの姿勢が彼らに利点(咬みつきの防御や相手の喉に噛み付くこと)をもたらすことを発見しています。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Schenkel, R. (1967). Submission: its features and function in the wolf and dog. American Zoologist, 7(2), 319-329.
[2] Norman, K., Pellis, S., Barrett, L., & Henzi, S. P. (2015). Down but not out: Supine postures as facilitators of play in domestic dogs. Behavioural processes, 110, 88-95.
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