我らが犬猫は愉快な奴らで、いつでも元気で楽しくて、ときにヘンテコな行動で私たちを笑わせてくれます。
しかし、そうした犬猫たちの行動が思いもよらぬ奇妙な事故に繋がることも、少なくありません。アメリカのペット保険Nationwideは、毎年数十万件の保険請求を審査する中に、とんでもなく奇妙な請求があることに気がつきました。
そして、奇妙な保険請求の裏側には、多くのドラマが隠れていることにも気がつきます。愛犬愛猫を助けるために驚くべき行動に出る飼い主や、スーパー獣医師の存在など、ユニークかつドラマチックな保険請求に、担当者は魅了されたのです。
ハムボーン・アワードの誕生
そして2009年。もっとも珍妙な保険請求の原因をつくった犬猫を選定するハムボーン・アワード(Hambone Award®)が誕生します。賞の名前は、「冷蔵庫に閉じ込められ、助けを待つ間に感謝祭用のハムを完食してしまった被保険者(犬)」にちなんでハムボーンと名付けられました(ちなみにその犬は軽度の低体温症になり、治療を受け完治しています)。
従業員は毎年、その年のハムボーン賞候補犬を指名します。会社はその中から12匹の最終候補を絞り、優勝犬は投票により決定されます。優勝賞品は、ハム型ブロンズ像、好みのオモチャ&オヤツの詰め合わせ(巨大)ですが、真の栄誉は候補犬を治療した動物病院に与えられます。Nationwideは「病気の動物たちのために使って欲しい」と、1万ドルの賞金を動物病院に寄付されるのです。
ハムボーン賞は、ヘンテコな保険請求を笑うために誕生したのではありません。「いつでもペットに起こりうる事故に注意を喚起すること」を目的に行われているのです。そしてもちろん、思わぬ事故に遭ってしまったペットを救う動物医療の現場に、注目を喚起するという目的もあります。
ペットたちは、私たちが思いもよらない行動を起こし、びっくりするような事故の原因となることがあります。歴代のハムボーンたちが起こした珍妙な事故を見ると、「飼い主がどんなに注意をしても、力及ばないことも、まぁあるよね」ということを思い知らされます。
それでは、2009年から2017年に選ばれた”ハムボーン”たちのストーリーを、簡単に振り返ってみましょう。
歴代のハムボーン受賞犬の足跡
・2009年 ベラ(イングリッシュ・ブルドッグ)
第一回となる2009年の栄誉は、英国在住のブルドッグのルルに与えられました。彼女は15個のおしゃぶり、ボトルのキャップ、バスケットボールの一部を飲み込んでいました。食いしん坊ワンコには、いつでも注意が必要です。
・2010年 エリー(ラブラドール・レトリバー)
駆除薬をスプレーされたハチの巣を完食したエリーが、第二回の優勝犬。死んだ蜂を大量に嘔吐したことにより事故が発覚しました。嘔吐はすぐにおさまりましたが、エリーはその後もハチ入りのウンチをし続けたということです。飼い主は「ハチの数は数千」とコメントしていますが、一方で「一体いつそんなに大量のハチを食べたのかさっぱりわからない」「ハチの巣は、(何千もの蜂がいられるほどには)大きくはなかった」とも語っています。食いしん坊ラブには、特に注意が必要ですね。
・2011年 ハーレー(パグ)
この年の優勝犬は、100個以上の岩を食べたパグのハーレー。お散歩のときのウンチが「完全に岩」だったことから、犬の異食が発覚しました。「子犬時代を振り返っても、岩を食べたことなんてなかった」ことから発見が遅れたそうです。以前はしないような行動を突然はじめるコもいるので、油断なりません。
・2012年 ピーナッツ(ダックスフンド・テリア・ミックス)
庭に侵入したスカンクを追いかけ、共に穴に入り生き埋めになったピーナッツが、2012年の優勝犬です。消防署員に救出されましたが、低体温症と酸素欠乏により救急搬送され、2日間死線をさまようこととなりました。犬には、抑えきれない衝動に負けてしまうことがたくさんあるのです。
・2013年 ウィニー(ミックス)
2013年の勝者は、大量の冷凍タマネギを平らげたウィニー。飼い主がキッチンカウンターに放置してしまった1kgほどの冷凍タマネギをペロリと完食。貧血の初期症状が現れていたものの、動物病院での迅速な処置が功を奏して、身体への長期的ダメージは回避できたということです。迅速な対応、ほんとうに大事!
・2014年 チャーリー(ラブラドール・レトリバー)
この年の勝者は、トラクターから滑り落ちて大怪我をしたラブラドールのチャーリー。いつものようにトラクターに乗っていたチャーリーですが、ある日車両から滑り落ち、大型の農機具に押しつぶされてしまいました。動物病院で調べたところ、骨折や損傷した腎臓からの内出血など、外からはわからない大怪我をしていました。パッと見で問題ないときでも、身体の中では大きな変化が起こっていることがあるので、注意です!
・2015年 カーティス(ボクサー)
バーベキューの串を1年以上、お腹の中におさめていたボクサーのカーティスが、この年の優勝犬。動物病院での摘出手術の結果、串だけでなく、なにやら色々なものを飲み込んでいたことも発覚しました。変なものを食べても、すぐに症状として現れないワンコがいるというのは、なかなかに悩ましいですね。
・2016年 キスメット(ジャック・ラッセル・テリア)
強盗と戦った勇敢なJRTが、2016年のハムボーン。愛する飼い主と強盗の間に割って入り、ナイフの大きな刺し傷を受けたのです。飼い主も、キスメットも、大きな傷を負いましたが、動物病院スタッフと地域住民、そしてもちろんペット保険の支えもあって、両者とも完全に回復しています。
・2017年 ルースター(ミックス)
ハイキング中に小動物を追いかけ、自らの身体に長い枝を突き刺すことになってしまったルースターが2017年の勝者。脚の長さ以上の枝が身体を貫いており、もう少しで肺に届くところでしたが、臓器には致命的な傷はなく、取り除く際にも傷が広がることはなかったそうです。
Featured image creditNationwide Pet / facebook