愛犬の歯のケア、頑張ってますか?
お口の健康を守るためには、毎日の歯磨きに勝るものはありません。でも、どんなに頑張っても細かい場所の汚れはどうしても残ってしまうものです。
ぜひ、獣医師による歯のケアを活用してください。私たちが定期的に歯のケアを必要とするように犬たちにもプロのケアは必要です。
[icon name=”comments” class=”” unprefixed_class=””] この記事の監修者
ゼファー動物病院 上條圭司(かみじょう けいじ)院長
麻布大学獣医学部卒業後、横浜市内の動物病院にて研修。1990年に東京都八王子市にて動物病院開業、現在に至る。Team HOPE 副代表。
獣医師による歯のケアはなぜ必要なの?
飼い主の皆さんならご存知のとおり、ペットの85%が3歳までに歯周病になると推定されるほど、ペットとお口のトラブルは切ってもきれない関係にあります。
歯周病などの歯科疾患は、口臭、咀嚼時の痛み、および歯の損失をもたらし得ますし、そればかりか心臓、腎臓、および肝臓の疾患の原因にもなり得ます。
愛犬の健康を守るためには、お口のケアがとても大切です。飼い主による毎日のケアでも効果的はありますが、それだけでは十分ではありません。歯や歯茎の健康を守るためには、獣医師によるクリーニングと治療が必要です。
- 歯垢や歯石を除去し、お口の健康評価を行うためには、専門家による徹底的な歯のクリーニングと治療が必要です
- 獣医師による歯のクリーニングや治療では、表面にみえる歯垢や歯石だけでなく、歯茎の下の細菌も除去されます
- 歯石を取り除くようなクリーニングにおいては、ペットが麻酔下に置かれていることが推奨されています。麻酔治療を行えるのは獣医師のみです
- 歯肉炎は獣医師の治療とフォローアップケアにより回復が可能です。歯周病は完治には至りませんが、プロのクリーニングと家でのケアを並行することにより、進行を遅らせることができます
- 無麻酔による治療も、歯肉炎/軽度の歯石の犬を治療する場合には一定の効果が見込めます。これを安全に効果的に行うためには、患者となる犬にどんな治療が必要であるかを適切に評価できる知識・経験・機材をもつ専門家を選んでください
- 獣医師による診察やクリーニングによって、さらなる治療が必要だと見込まれる場合は、より高度な治療や別の病院に紹介するなど次のステップにスムーズに移行することができます
動物病院で行われる歯科治療とは
獣医師による歯科治療では、歯垢と歯石を除去し、口全体(舌、歯肉、唇、歯)の状態を診断します。
歯科治療では一般的に、以下のような処置が行われます。
- 麻酔前検査(血液検査およびその他の検査。手術予定日の1週間以内)
- 歯科用レントゲン、および歯周プローブ(ポケット、動揺度、根分岐部病変)による評価
- スケーリング(表面についた歯垢および歯石の除去)
- スケーリング(歯肉の中の歯垢および歯石の除去)
- 歯周病重症度のステージを確認(歯肉の腫れや退行、出血、歯の脱落、病変など)
- 必要に応じて抜歯(折れた歯または感染した歯の除去)
- 歯の表面のエナメル傷を滑らかにするための研磨
- フッ化物などの塗布
- 唇や舌を含む口全体の検査
どのタイミングで獣医師の治療を受けるべき?
動物病院での歯科治療というと、なにやら大仰で治療費も高そうだし、ちょっと二の足を踏んでしまいますよね。
どのタイミングで治療を受けるべきかは、かかりつけ獣医師と相談して決めるのが王道です。定期検診やワクチン接種、お薬をもらいにいくタイミングで歯のことも相談してみてください。
愛犬に以下のような兆候がみられる場合には、ぜひ獣医師に相談してください。無理な、あるいは無駄な治療を勧められることはありませんので、まずは気軽に訊ねてみてください。
- 歯茎近辺に茶褐色の歯石がくっきりわかる
- 歯茎に発赤または出血
- 口臭
- よだれ
- 噛むときに苦労している
- 歯の緩み、歯の脱落
全身麻酔は安全なの?
麻酔は、歯科治療に必要な手順を速やかに確実に終えるために必要なものです。
しかし、犬に全身麻酔をほどこすことに抵抗感をもつ飼い主さんは少なくはありません。小さな身体が麻酔によってぐったりしている姿は想像するだけでも恐ろしく、できれば避けたいと思うのも無理はありません。
しかし、全身麻酔(の合併症)のリスクは、慢性的な口腔感染、およびそこから派生する全身疾患のリスクに比べれば、はるかに小さいものです。疾患を放置するのは、犬の健康にとっては最大のリスクです。
麻酔は愛犬を処置の痛みから守り、獣医師の徹底した検査とクリーニングを可能にします。
現代の全身麻酔は、麻酔前検査(血液検査およびその他の検査)、適切な薬剤の選択と組み合わせ、最新のモニタリングシステムを使用した絶え間ない監視により、かつてに比べ格段に安全なものになっています。患畜の多くは、処置終了の15〜20分以内に起きて立ち、同日に帰宅することもできます。
もちろん、全身麻酔にもリスクがあり、誰も100%の安全を保証することはできません。しかし、徹底した処置を行い、日々のケアを続けていれば、その後の全身麻酔による歯科処置の必要回数は格段に少ないものになるでしょう。
全身麻酔への恐怖が歯科処置をやめる理由になっているなら、一度獣医師に懸念点をぶつけてみてください。効果とリスクを十分に理解できるまで、何度訊ねてもまったく問題はありません。
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