いつもよりお留守番の時間が長かったときや、他の犬の匂いをプンプンさせて帰宅するとき、「あぁ、うちのコ怒るだろうなぁ」と思うことはありませんか?
愛犬は、あなたのしたことに怒りを感じているのでしょうか?
動物に怒りの感情はあるか?
かつては「動物には感情がない」と考えられていましたが、今では専門家を含め多くの人が「動物も基本的な感情がある」という考えを受け入れています。
心理学者のコレン博士によれば、「今日の研究者は犬の心はおおよそ2歳から2歳半の人間のそれに相当すると信じるようになった」のだそう。興奮を呼び起こす感情しか持たずに生まれてきた新生児は、数週間でポジティブやネガティブな感情を経験し、次の数ヶ月で嫌悪、恐れ、怒りを、さらに喜び、疑いや恥ずかしさ、愛情を経験します。犬にもあると考えられている感情はここまでで、人間だと3歳以降になってようやく現れる恥、誇り、罪悪感、軽蔑は犬にはないと考えられているとのことです。
犬も私たちと同様に、怒りの感情を持つことはあると考えて差し支えないでしょう。しかし、なぜどのようなきっかけで”怒る”のかは、私たちとちょっと異なっているのす。
犬は感情に動機を割り当てる能力がない
私たちは通常、怒りを覚えたときに、その原因を説明することができます(ここでは「なぜ怒ったのかわからなくなった」というケースは除きます)。例えば、「夫が連絡なしに夕飯の時間に遅れた」場合は、怒りの感情と「夫」や「連絡なし」や「遅れた」などの要素を紐づけて考えることができます。
しかし、犬には怒りの感情と要素を紐づける能力がないと考えられています(=「能力がある」とするエビデンスがない)[2]。もし愛犬が怒っていたとしても、それが「留守番の時間が長かった」や「他の犬の匂いをプンプンさせている」ことが原因ではないというのが、科学的な見解です。
また、犬は記憶を掘り起こして「過去5時間、とっても悲しい思いをしていたのに、あなたは他の犬の匂いをプンプンさせて一体どういう了見なの!」と怒ることはしません。「イマココ」で起きていることに対して、唸ったり飛びついたりする”怒っているように見える”行動をするのです。このときの感情は、怒りというより欲求不満や恐怖、失望、あるいは不快感を示している可能性の方が高いでしょう。
それでも怒っているように見えるなら
それでも「うちのコは怒っているように見える」という場合は、以下が原因である可能性があります。
- あなたの行動が”怒り”を助長している:唸ったり飛びついたりした時に、抱っこしたりあやしたりするため、犬が「報酬をもらうためには唸ればいいんだ!」と覚えてしまった
- 犬が不安を抱えている:いつもより留守番が長かったため、いつもより大きな不安を感じたということが考えられます
- あなたが本当に犬が嫌がることをした:例えば大声で説教をしたり、お散歩に連れて行かなかったり、体罰を与えたなどで犬がフラストレーションを抱えると、犬がうつ状態になったり攻撃的になることがあります
- 痛みを抱えている:”怒り”行動は、身体的な問題(痛み)から生じることがあります。筋肉が疲れたり緊張していると、犬が怒っているように見えることがあります
幸か不幸か、あなたの帰宅が遅れても犬があなたに怒りを覚えることはなさそうです。しかし「遅くなると、うちのコ、怒っちゃうなぁ」と想像して帰宅時間を早めることは、とっても良いことです(犬が喜びます)。
もし本当に犬が”怒っている”ように行動するのなら、心身に問題を抱えている可能性があります。早めに専門家に相談してみることをおすすめします。
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◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Which Emotions Do Dogs Actually Experience? | Modern Dog magazine
[2] Is My Dog Mad at Me? | petMD
犬もストレスでドカ食いする〜食欲と感情の切っても切れない関係 | the WOOF イヌメディア
食欲と感情は、しばしば密接に絡み合っています。イライラしたときなどに、ストレス発散のために食べる行動は、健康やウエストまわりを気にする私たちを悩ませるものです。 どうやらこの行動、人間だけではなく動物にもあるようです。最近発表された研究によれば、飼い主の80%がペットに情動的摂食があると回答しています。 …