食欲と感情は、しばしば密接に絡み合っています。イライラしたときなどに、ストレス発散のために食べる行動は、健康やウエストまわりを気にする私たちを悩ませるものです。
どうやらこの行動、人間だけではなく動物にもあるようです。最近発表された研究によれば、飼い主の80%がペットに情動的摂食があると回答しています。
動物と情動的摂食
人間に関しては、感情と食行動は、様々に関係していることがわかっています。たとえば1940年代半ばの半飢餓実験では、半飢餓の状態では感情が不安定になりうつ症状をもたらす可能性があることが示されていますし、Wansinkは一連の実験を通じて、食行動の開始と停止には心理的制御が主要な役割を果たすと主張しています[1]。
ネガティブな気分にあるとき、食べる量が増加したり、甘いものやスナック菓子への渇望が高まることはよくあります。
ネガティブ感情や気分によって起こる食行動を情動的摂食(emotional eating:感情的摂食あるいはストレス誘発性摂食ともいう)といい、食べ過ぎや、食べ過ぎによる不安や抑うつ感情の生起などの問題を引き起こします。この情動的摂食は、ネガティブ感情を消すことや少なくするために行われる学習行動とみなされています。
過食の原因と言われる情動的摂食は、人間だけでなく動物にもみられることがわかっています。2013年に発表されたレビュー論文には、ペットは精神的苦痛に対処するためのメカニズムとして食べ物を使うことや、情動的摂食が肥満に繋がる例は少なくないことが述べられています。論文では情動的摂食の誘引は、退屈、不安、うつとされています[2]。
ぽっちゃりはストレスを反映しているのかも
そして今年に入り、犬の情動的摂食に関する新しい論文がJournal of Veterinary Behaviorに掲載されました。1099人の犬の飼い主の認識を調査したもので、研究者らは質問紙を使い、飼い主の習慣、犬の摂食習慣、食行動、気質や感情などを評価しました。
研究の目的は、犬に情動的摂食が存在するかについての飼い主の認識を明らかにすることにありました。調査によれば、飼い主の80%以上が犬に「情動的摂食がある」と感じており、うち40%以上は「かなり感情に影響される」と評価しました。
情動的摂食だと認識された犬は、「依存」と「不幸」であると認識されていました。そしてこれらの犬には、飼い主がいないときに食事を拒否する、病気である、問題行動があるなどの特徴があることがわかりました。また、犬の情動的接触と飼い主による特定の給餌行動(一日一食にする、手作り食など)には相関関係があることが明らかにされました。
論文の主張は以下の2つです。
- 精神的な健康が損なわれることは、犬の肥満に繋がる可能性がある。犬が太り過ぎだというのは、精神状態があまりよくない兆候かもしれない
- 犬の肥満治療は、感情の役割を考慮して行う必要がある。食餌量の制限は、ストレス増から食欲増加に繋がる可能性があるため、理想的な戦略とは言えないかもしれない
仕事や遊びでエネルギーを使い果たして食欲旺盛なら問題はありませんが、ストレス発散のためにドカ食いしているようならば、対策を考えなければなりません。愛犬の食事は心身の健康のバロメーターです。食べ物と犬との関係をしっかり観察し、心に引っかかることがあるときは獣医師に相談するようにしましょうね。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] 今田純雄. (2009). 感情と食行動. 感情心理学研究, 17(2), 120-128.
[2] McMillan, F. D. (2013). Stress-induced and emotional eating in animals: a review of the experimental evidence and implications for companion animal obesity. Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, 8(5), 376-385.
[3] Luño, I., Palacio, J., García-Belenguer, S., González-Martínez, Á., & Rosado, B. (2018). Emotional eating in companion dogs: owners’ perception and relation with feeding habits, eating behavior and emotional state. Journal of Veterinary Behavior.
[4] Is Your Dog a Stress-Eater? | Psychology Today
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