人間のおとうさんと同じく、ワンコだって前立腺ガンになってしまうって、ご存知でした?
「前立腺がん」ってどんなもの?
国立研究開発法人 国立がん研究センターの発表によれば、2015年の前立腺がんの罹患数予測は98,400例で男性では最多だそう。これは、病気になった人が急激に増えたというより、がん登録の精度向上と前立腺がんのPSA検診の普及が要因と考えられるということですが、それでも多いことに変わりはありません。
一方、ワンコさんの前立腺がん(腫瘍)は、比較的まれな疾患ですが、発生した場合には極めて悪性度の高いがんだそうです。治療として外科手術が行われますが、転移しやすいがんであり、完全切除ができたとしても転移により死亡することが多いと言われています[1]。
犬の前立腺がんと闘う獣医師と犬
この恐ろしい病に立ち向かった獣医師とワンコさんが、米カリフォルニアにいるそうです。
犬の前立腺がんに対する治療を研究をすすめているカルプ博士(Dr. Bill Culp, VMD, DACVS)とベルジアン・マリノアのコパー(Kopper, 14歳)さんが、その人(と犬)。彼らはカリフォルニア大学デービス校獣医学大学院(UC Davis School of Veterinary Medicineで、「人間と同じ治療を行う」という革新的なやり方でがんと闘いました。
カルプ博士が行ったのは、数年前に確立された人間の非がん性前立性肥大(non-cancerous prostate enlargement)の治療とほぼ同じものが行われたそうです。Prostatic transarterial embolizationとして知られるこの治療法は、他の前立腺がんの治療法に代わる、健康的な組織を冒すのを最小限に抑える治療(低侵襲医療)なのだとか。
カルプ博士は、同僚のグレイバーマン医学博士(Dr. Craig Glaiberman, MD、ニンゲンのお医者さん)とともに、この手術を成功させました。なんと、コパーさんは数日で退院、いまのところコパーの前立腺は元のサイズに戻り、元気に過ごしているそうです。
コパーを支えたのは、家族の愛
Kopper with Matt and Heather at UC Davis.http://www.vetmed.ucdavis.edu/whatsnew/article.cfm?id=3210
Posted by UC Davis School of Veterinary Medicine on 2015年6月16日
コパーさんは、長いあいだK-9(訓練された警察犬)として、テネシー州で地域を守るお仕事をしていました。しかし、前立腺がんが発症してしまい、警察犬を引退することになります。診断をした獣医さんがカルプ博士の臨床試験に詳しく、コパーの家族であるトンプソン夫妻にこれを紹介。夫妻はすぐさまカリフォルニアへ向かい、革新的治療にチャレンジしたのだそうです。
コパーと医師たちの努力も素晴らしいですが、家族の愛にも心を動かされちゃいますね。みんなの支えがあったから、コパーも頑張れたのだと思います。
公認の標準治療法としての有効性評価のためには、さらに多くの前立腺がんの臨床例が必要であり、カルプ博士は引き続き臨床試験を行っているそうです。
前立腺がんに限らず、こうした侵襲の少ない治療技術が発達することで、病の苦しみから解放される犬が増えるといいですね。
h/t to Innovative Canine Prostate Cancer Clinical Treatments | The Bark, 翻訳:吉川ろっこ
[1] 田中茂男. (2011). 『犬の医学』. 時事通信社. Retrieved from http://www.amazon.co.jp/犬の医学-田中-茂男/dp/4788711605
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