米ウィスコンシン州に住む48歳の男性が、感染症から敗血症に至り、手足の切断を余儀なくされました。血液検査の結果、男性が犬の唾液中にみられる細菌に感染したことが明らかになっています。
犬が感染させたかどうかは不明ですが、発症当時男性の周りには、少なくとも8匹の犬がいたことがわかっています。
専門家は、こうしたケースは極めて稀としながらも、犬に噛まれた場合などで感染症の兆候がみられるときは、早めに医師に相談する推奨しています。
最初はインフルエンザのような症状だった
6月26日、グレッグ・マンテュフェルは、インフルエンザのような症状にみまわれました。
翌早朝、グレッグは精神錯乱の状態で、歩くのがやっとという状態になっていました。病院についたときには、全身が「誰かに野球のバットで殴られたような」あざや傷で覆われており、医師は敗血症と判断。設備の整った別の病院に移送されましたが、その時点で手足の筋肉および鼻は壊死しており、切断する以外の選択肢はありませんでした。
1週間後、医師はグレッグの手足を切断、鼻の一部も除去される予定です。
検査の結果、グレッグの血液中に、犬の唾液中に見出される細菌、カプノサイトファーガ-カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)が発見されました。犬の関与はわかっていませんが、発症したころグレッグの周りには、自分たちの犬を含めた8匹の犬がいたとのことです。
カプノサイトファーガ-カニモルサスと敗血症
カプノサイトファーガ-カニモルサスとは、犬や猫の口に存在する細菌です。研究によれば、健康な犬の70%は唾液中にこの細菌を有しています。人間は、犬に咬まれたり舐められたり引っかかれたりすることで感染することがあります。
厚生労働省によれば、この感染症で見られる症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などで、発病まで期間は1-8日。重症化した場合には、敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行して死に至ることがあります。
日本でも、2002年から2009年までに14例が報告されており、うち6例が死亡しています。いずれも原因は犬猫に咬傷や掻傷でした。
舐められることでの感染とみられる症例もあります。2007年には48歳の女性が、(オーストラリア)や、2016年に70歳の女性が、いずれも敗血症を起こしています。
なお、敗血症とは、「細菌感染によって全身反応が起こり、これによって重要な臓器の障害が引き起こされること」をいいます。重篤な症例では、血圧が低下し複数の臓器が機能しなくなり、死に至ることもあります。
「99%はこの問題を抱えることはないだろう」
「犬に舐められて手足を失う可能性がある」というのは非常にショッキングですが、パニックになる必要はありません。唾液中のカプノサイトファーガ-カニモルサスが感染を引き起こす可能性はゼロではありませんが、専門家によれば「極めて稀」。カプノサイトファーガ-カニモルサスをきっかけとする敗血症も「極めて稀」と報告されています(2009年発表の論文)。
一方で、犬に咬まれた場合は病気感染および発症の可能性が大きく跳ね上がるので注意が必要です。咬傷事故の際は、必ず医師の診断を受けるとともに、保健所などに届け出なければなりません。
無邪気な犬のキスは、重い病気につながる可能性がある危険なもの。犬と過剰に接触したり、傷を舐めさせることはやめましょう。なお、厚生労働省サイトには「脾臓摘出者、アルコール中毒、糖尿病などの慢性疾患、免疫異常疾患、悪性腫瘍にかかっている方、高齢者など、免疫機能が低下している方は、重症化しやすいと考えられますので特に注意してください」とあります。覚えておきましょう。
Featured image creditHyunwon Jang/ unsplash
ワンコのキスは危険な香り(3)〜サルモネラ、大腸菌、カンピロバクター… 犬のマズルは菌のデパート | the WOOF イヌメディア
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