犬とのお散歩は、飼い主としての楽しみの一つ。季節の移り変わりを楽しみ、愛犬の笑顔を見て幸せ気分に浸るという飼い主は少なくありません。
とはいえ皆がみな、お散歩をするわけではありません。中には「ほとんど散歩をしない」「犬は全く外に出さない」という飼い主さんもいるようです。
3割程度の飼い主が散歩しない
散歩をしない犬の飼い主は、どのくらいいるのでしょう？2012年発表の論文によれば、日本の犬の飼い主930人のうち「散歩をする」と回答した者は64.4%。3割から4割程度の人が散歩をしていないと、ざっくり捉えることができそうです。
飼い主たちはなぜ犬の散歩をしないのでしょうか。ヒントになりそうな研究[2]が2012年に発表されています。リバプール大学の研究者らは先行研究を統合して分析し、犬の散歩をするか否かは（1）飼い主と犬との関係、（2）近所に散歩に適した場所があるなどの物理的環境、の2つの要素に密接に関係するとの結論を導き出しました。
犬との絆が強い飼い主は定期的に散歩する
論文によれば、飼い主を散歩に向かわせる最も強い要因は、犬と飼い主との関係性にあるとのこと。犬に強い愛着を感じる人や、犬が歩く意欲をくれる（例えば「犬の喜ぶ顔をみたい」）と感じる人は、定期的に犬と散歩する傾向にあります。また、散歩意欲が高まるのは、飼い主の中に義務感や”親の誇り”を感じるときだということです。
一方で論文には、飼い主を散歩から遠ざける要因についての記述もあります。混雑した環境や、子供や他の犬の存在、他者との接触、他の犬の排泄物の存在といった物理的障壁は、犬の散歩を躊躇させる原因になるようです。これに加えて、自分の犬が外で適切に行動できないのではないかという心配も、飼い主を散歩から遠ざけているようです。
散歩を通じて犬と仲良く
犬との関係が構築できず、散歩に行かない。散歩に行かないと問題行動が増え、さらに外に出すことを躊躇する、という悪循環が見えてくるこの結果。これを防ぐために論文は（1）飼い主の義務感を刺激すると共に、散歩によるメリットに光をあてる、（2）物理的環境を整備する、という2つの提言を行っています。
ドッグパークを作るのは無理そうですが、犬との散歩のメリットを語り続けることなら私たちにもできそうですね。ほんのちょっとでも良いので、犬を連れて外に出る飼い主さんが増えてくれることを願います。
ところでこのリバプール大学の研究者らによる論文は、メタ分析という手法によって行われたものです。これは、統計的に処理された複数の研究を収集・統合・分析し改めて新たな知見を導き出すというもので、ここでは日、米、英、豪で行われた31の研究が統合の対象になりました。統合的な結論を導き出した一方で、（a）調査国が異なる（b）いずれの論文もサンプル数が小さい、（c）研究手法がバラバラという弱点を持つものになっています。
そんなバラバラの論文ですが、一つだけ共通点が。それは、どの論文の著者も犬を飼っているという点です。やっぱり犬の飼い主は、犬に関連する研究をしたくなっちゃうのでしょうか。そうかもなぁ。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Oka, K., & Shibata, A. (2012). Prevalence and correlates of dog walking among Japanese dog owners. Journal of Physical Activity and Health, 9(6), 786-793.
[2] Westgarth, C., Christley, R. M., & Christian, H. E. (2014). How might we increase physical activity through dog walking?: A comprehensive review of dog walking correlates. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 11(1), 83.
[3] Cutt, H., Giles-Corti, B., & Knuiman, M. (2008). Encouraging physical activity through dog walking: why don’t some owners walk with their dog?. Preventive medicine, 46(2), 120-126.
Featured image credit – EMR – / Flickr
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