今年もカンヌ国際映画祭の季節がやってまいりました!
これから連日、素敵な女優さんやイケメン俳優陣の姿が報じられることでしょうウキウキ。パルムドールはどの作品に贈られるのでしょうね?
とはいえ、the WOOFの注目はやっぱり「パルムドッグ賞(The Palm Dog Awards)」。カンヌ国際映画祭で優秀な演技を披露したワンコさんに贈られる賞なのです。映画祭で上映された映画の中で演技をした1匹、あるいはグループ、もしくはアニメーションの犬に”PALM DOG”と記された革の首輪が贈られるのだそう[1]。すごいっす。
昨年の受賞犬は、『ホワイト・ゴッド』の出演犬
2014年にパルムドッグ賞の栄誉に輝いたのは、リードキャラクター「ハーゲン」を演じたラブラドールミックスの兄弟犬「ボディ」と「ルーク」(二匹一役)。テレサ・アン・ミラーさんというアニマルトレーナーの指導を受け、撮影に臨んだそう[2]。「血統ある犬を優遇する政策が実施され、多くの雑種犬が捨てられ、野良犬と化す。虐げられた犬たちが、仲間と一緒に人間を襲う・・・」という胸が痛くなるようなストーリー。すごく観たくてIMDbで頻繁にスケジュールをチェックしているのだけれど、日本での公開はいまだ決まっていないのはなんでやねん。
作品も2014年の「ある視点」部門で賞を獲得しています。200匹以上のワンコさんたちが演技する姿は圧巻です。
さてさて、2015年のパルムドッグ発表まであと少し。この機会に、これまでの受賞犬を振り返ってみることにいたしましょう。出演作はいずれも面白そうですよ!
『恋するリベラーチェ」(2013年)のベビー・ボーイ
スティーブン・ソダーバーグ監督による『恋するリベラーチェ』は、米人ピアニストであり、世界に名だたるエンタティナー、リベラーチェの伝記映画。元恋人、スコット・ソーソンとの愛を描いています。「ベビー・ボーイ」は、弱視の白いプードル犬で、二人の関係のカギになる重要な役を演じました。
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『サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド』(2012年)のバンジョー/ポピー
英国のベン・ウィートリー監督作品『サイトシアーズ 』は、1組のカップルが旅を続ける中で、とんでもない事態に追い込まれていくブラックコメディ映画です。「バンジョー」と「ポピー」を熱演したテリア犬、「スマーフ」と「ゲド」に贈られました。この年は例年になく犬が殺されるなどの暗いストーリーが多かったようで、トビー・ローズ審査委員長は「今年は、犬のR.I.P※年。芸術の犠牲になる伝統は続いている」と述べています。
※”Rest in peace(安らかに眠れ)”の略。ここでは”Rest in peace”に引っ掛けて”Rover in peace”の略として使われている。ちなみにRoverは英語圏では代表的な犬の名前。
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『アーティスト』(2011年)のアギー
アカデミー賞を受賞したことで、日本でもとっても話題になった作品です。また、ジャックラッセルテリアの「アギー」にも注目が集まりました。アギーは、『恋人たちのパレード』(2011年)にも出演した売れっ子俳優犬でしたが、2012年に引退を決意。トレーナーを通じて「そろそろ引退して、自宅にあるプールのそばでゴロゴロしていたい」と引退の理由を明かしました。
犬としては初めて、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムに手形(肉球)を残しています。また、イギリス人作家ウェンディ・ホールデンと共著(?)で自叙伝「Uggie: The Artist: My Story」を出版、スターになるまでの道のりを明かしています。芸能界に興味があるワンコさんはご一読を。
『タマラ・ドゥルー 恋のさや当て』(2010年)のボス
スティーブン・フリアーズ監督のコメディ映画、『タマラ・ドゥルー』の出演犬、ボクサーの「ボス」がパルムドッグ賞に輝きました。画面狭しと大暴れするボブですがが、とても愛すべきワンコさん。アンディ・コッブ(ルーク・エバンス)がオープンカーでドライブに出かける時、助手席にいるのは常にボスです。審査員長のトビー・ローズは「幾つものシーン、そして結末で重要な役割を担う犬だ」と評しています。
『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年)のダグ
有名すぎるアニメ犬の登場です。「エリザベスカラー」を検索語として画像検索をすると、このコばかりが登場するので困ったこともありました・・・。
ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン監督作品、ディズニー&ピクサーのアニメ映画、『カールじいさんの空飛ぶ家』に登場するダグは、まんまるとした瞳を持つ、ゴールデン・レトリバーっぽい犬。冒険家、チャールズ・マンツの犬軍団の一匹で、首輪につけた犬語翻訳機を通して、人の言葉を話せるという設定です。「(エリザベスカラーを着けさせられて)そんなの、あんまりだ(I do not like the Cone of Shame)」などのセリフが観客に大ウケしました。ほんとうにかわいい。
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『ウェンディ&ルーシー』(2008年)のルーシー
カンヌ国際映画のある視点部門に出品された、ケリー・ライヒャルト監督作品、『ウェンディ&ルーシー』に出演した雑種犬「ルーシー」が、満場一致でパルムドッグ賞の栄誉に輝きました。ルーシーは狩猟犬とレトリバーとの雑種とのこと。ミシェル・ウィリアムズ演じるウェンディとアラスカを目指して旅をしますが、その途中でウェンディがドッグフードを盗んだ罪で逮捕されてしまうというストーリー。トビー・ローズ氏は 「この映画にはパルムドッグ賞にふさわしい全てのものが盛り込まれていた。ドッグフード、野犬収容所、さらに、「ルーシー」の名が何度も繰り返されていた」と評しています。
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『ペルセポリス』(2007年)のユキ、『捨て犬マッカムの大冒険』(2007年)の出演犬
「パルムドッグ賞』史上初の2作品受賞。1作品めは、タイ映画、『捨て犬マッカムの大冒険』に出演した犬すべてに贈られました。訓練犬に加え、保護された野良犬たちが訓練を受けて出演したそうです。もう1作品は、漫画家マルジャン・サトラピがイスラム革命以後の体験を描いたアニメ映画、『ペルセポリス』に出演したいたずら好きの犬に贈られました。
『マリー・アントワネット』(2006年)のモップス
日本でも大ヒットした『マリー・アントワネット』の出演犬「モップス」がこの年の受賞犬です。たくさんのものを所有していたマリー・アントワネっトですが、彼女が本当に心から愛したものはごく僅か。その一つが、愛犬のモップス(パグ犬)でした。マリーがオーストリアの国境を越える寸前まで抱いていた犬がこのモップスです。引き離されるときにマリーが「モップス!」と叫ぶシーンでは、犬好きさんなら誰でも泣いてしまいそうになるのでは。
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『天空の草原のナンサ』(2005年)のブルーノ
2005年は、モンゴルの雑種犬に注目が集まりました。ビャンバスレン・ダバー監督作品、『天空の草原のナンサ』に登場する牧羊犬。少女はある日、ほら穴にいた子犬を拾いますが、父親に飼うことを許されず、家族には内緒で可愛がります。その少女との熱い絆が描かれた映画です。ビャンバスレン・ダバー監督は犬の演技について「実際、子供より犬の方が扱いやすかったです。子供は気分によるけれど、犬はおいしそうなハムを置けば、そこへ走っていくので、その姿を撮影しました」と語っています[3]。
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『モンドヴィーノ』(2004年)のエドガーとフーバー
2004年の賞レースはとても白熱!ジョナサン・ノシター監督作品の、ワイン業界を描いたドキュメンタリー映画『モンドヴィーノ』の出演犬と、エミール・クストリッツァ監督作品、『ライフ・イズ・ミラクル』の出演犬が最後まで競り合いました。最終的に『モンドヴィーノ』の出演犬である陽気なブルドッグ「エドガー」とバセットハウンドの「フーバー」が受賞という結果に。2匹とも有名なワイン評論家、ロバート・パーカーの飼い犬たちだそうですが、ワインについてはあまり興味がないようです。
このほか、2003には『ドッグヴィル』のモーゼス、2002年には『過去のない男』のタハティ(役名;ハンニバル)が、そして2001年の初代パルムドッグには『アニバーサリーの夜に』のオーティスが、見事受賞しています。素晴らしいですね。
スクリーン上でその才能をいかんなく発揮してくれるワンコさんたち。わたしより演技うまいかも、と少しジェラシーすら感じます。今年はどのコが受賞するのでしょうか?注目の発表は例年、閉幕の2日前ごろに行われています。
h/t to The Telegraph | Palm Dog: the Cannes prize for cinema’s Nouvelle Wag , 翻訳:Akinaga
[1] パルム・ドッグ賞 – Wikipedia
[2] 200匹の犬が魅せる名演 『ホワイト・ゴッド』のアニマル・トレーナーに聞く 動物演技指導の秘訣 | The Creators Project
[3] 『天空の草原のナンサ』ビャンバスレン・ダバー来日会見 [映画] All About
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