こんにちは。東京で暮らしているパグ犬の「ぐり」です。今日も僕が大好きな本を紹介しますね。今回は、絵本です。
次々に訪れる「なぜ?」
『アンジュール―ある犬の物語』(ガブリエル・バンサン作 ブックローン出版 1986年)は、字のない絵本です。鉛筆のみで描かれるデッサンの世界。この絵を描いたガブリエル・バンサンは、ベルギー生まれの女性です。デッサンによる絵本を何作も世に出している作家さんですが、この『アンジュール』は彼女の最初の作品。鉛筆一本で、ここまで多彩な表現ができるとは驚きです。
一匹の犬が、車から捨てられてしまう場面から物語は始まります。のっけから衝撃的なシーンです。でもそこには、文章がありませんから、読者はその悲しい状況を見て「なぜ?」と思います。答えがわからないままにページをめくると、犬の身にはたたみかけるように「なぜ?」と思う出来事が起こります。
でも、めくる手を止められない
では、読み手はページがめくりたくなくなるのでしょうか。いいえ、そうではありません。なぜなら、絵が躍動感にあふれていて、まるでそこを本物の犬が走り、飛び回り、喜び、悲しんでいるかのように錯覚してしまうから。時には、読み手自身も犬になったような気持ちにさせられるのです。
そして、ああ悲しい、こんなことまで起こったのか・・・と思いつつページをめくり続けると、最後に一筋の光が差し込みます。どんな光なのか、その内容はぜひ本をめくって確かめてみてくださいね。
大人も子どもも読める本
この作品は絵本ですから、小さな子どもから大人まで、みんなが読む(見る)ことができます。僕の家の飼い主さんには、5歳と3歳の娘さんがいるのですが、ある夜、寝る前にこの本を見ていた3歳の子が何度も「どうして~?」とお母さんに聞いていました。そして「もしかして、わるいことしたから、くるまからおろされちゃったのかなあ」と話していました。このように、つくり出される物語は人によって違うでしょう。犬の名前も、舞台となる場所も。そういう意味で、文章がなくても、とても内容の濃い本だと思います。シンプルな中に、びっくりするほどたくさんの驚きを秘めた1冊。ぜひ手に取ってみてくださいね。
次回はどの本をご紹介しようかな。犬って、人にとっても近い存在だから、本にもたくさん登場していますよね。またこれぞと思うものを選んでおきます。では今日はこの辺で。読んでくださってありがとう。
ブックローン出版
売り上げランキング: 9,733
Featured image by ileana_bt via Shutterstock