読書犬「ぐり」はこれを読む!『いつも一緒に~犬と作家のものがたり』〜作家と犬の強い強い絆

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こんにちは!すっかり空が高くなりましたね~ 空気もだんだん冷たくなり、散歩がうきうきの読書犬・ぐりです。今回は、忙しい人でも読みやすい、エッセイ集をご紹介しますね。

いつも一緒に―犬と作家のものがたり』(新潮文庫編集部編 新潮文庫2013年)は、その副題どおり、いろいろな作家さんによる犬についてのエッセイ集です。どんな人たちって? それがすごいんです。壇ふみ、遠藤周作、小川洋子、糸井重里、小沢征良、江國香織…総勢19名の方の作品が収録されています。書下ろしのもあれば、亡くなった方については以前に執筆された作品を収録するという形をとっています。こういう構成の本もあるのかと、編集者でもある飼い主さんは感心していましたヨ。

大きくて、優しいドン

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真っ黒な秋田犬の「ドン」って、こんなコかな〜? image by Alden Chadwick / Flickr

どれも読んでいて楽しい内容なのですが、特に面白いと思った作品をいくつかご紹介しますね。まずトップバッター、檀ふみさんの「日本一の犬」。締め切りが迫った頃、原稿依頼の書籍のタイトルを見て、自分は女優なんだから、断る理由があったのに!と歯噛みしたらしい。

しかし、いったんお引き受けした以上は、なんとか「犬と作家の物語」にしていかなければならない。となると私の父のことを書くしかない。(p.11―12)

というわけで、父である作家・檀一雄氏が登場するのです。坂口安吾さんとお友だちだった一雄さんは、坂口さんが秋田犬保存会の会長さんと知り合いだと聞いて、その伝手で日本一の秋田犬を飼いたいのでよろしくお願いします、という手紙を坂口さんから出してもらったそうです。そしてその後、檀家には秋田犬がやってきます。真っ黒で、首のところだけ白い「ドン」と名付けられたその雄犬は、散歩ではよくツキノワグマに間違われたくらい大柄で、でもとても心優しい犬だったとか。

ふみさんが生まれた時にはすでに家にいたドンは、彼女の兄、妹と三きょうだいの面倒をよくみてくれたそうです。小さい子どもが何をしても怒らず、吠えず、ただただそこにいてくれたとのこと。ふみさんが小学校へ上がるころに亡くなったドン。でも檀家のメンバーにはたくさんの思い出をのこしてくれたようで、三きょうだいは大人になっても大きな犬に憧れるとのこと。その理由が最後に書かれていますが、クスっと笑えます。

犬を幸せにするって?

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ブイヨンさんのお写真ではなく、イメージです image by Cj Hughson / Flickr

糸井重里さんは、ブイヨンというジャック・ラッセル・テリアを飼っています(「犬と暮らしたり、犬を幸せにできるという自信なんてなかった。」)。このコ、実は、以前このコーナーでご紹介した本『Say Hello! あのこによろしく。』に登場する「ニコ」ちゃんなのです。

意外だったのは、犬を飼うということについて、糸井さんが元々は反対だったということ。その理由は、タイトルにあるとおり、犬を幸せにできる自信がなかったためといいます。

犬は飼い主の意思や生活に合わせて生きるしかできません。それをよくよくわかって、犬の気持ちを思いやりながらいっしょに暮らせるようになったら、それは飼っていいということなのだと思います。(p.129)

確かにそうだなと思いました。先日ご紹介した原田マハさんの小説『一分間だけ』でもそれはよく描かれていたと思います。犬はかなり昔から人間と共に暮らしてきましたが、人に寄り添っているということは、人のライフスタイルに合わせているということでもあるんですね。

糸井さんは、こうしたことも含め、家族とかなり議論を重ねたそうです。そして”「この犬」を不幸にしない生活をイメージできてから、プロポーズをしたつもり(p.130)“なのだとか。ブイヨンは本当に幸せだなあと感じました。

このエッセイの最期の2行は心にズンと響きます。ぜひ本書にあたってくださいね。

あの小説の種明かし

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穏やかなゴールデンは人気のワンコだね image by Gerard Koudenburg / Shutterstock

最後に、原田マハさんの「ただいま。おかえり」を。このエッセイを読んで、前にご紹介した『一分間だけ』という小説が、原田さんご自身の体験がベースになって書かれたものであったことがわかりました。原田さんご夫婦は、マチェックというゴールデンレトリバーを飼っていたのです。なるほど、『一分間だけ』の冒頭に「マチェックへ」と書かれていたのも納得です。そして、あれだけの目に浮かぶような描写ができたのは、やはり作家の実体験があったからなのかもしれません。

ちなみに、江國香織さんの「アメリカンな雨のこと」には、雨という名のアメリカン・コッカー・スパニエルのことが書かれているのですが、その最後に、江國さんが12歳から9年間飼った犬のことが少しだけ出てきます。12歳から9年間飼ったということは、21歳の時にその犬は亡くなっている。あ!『デューク』だ!って僕は気が付いたよ。


このように、『いつも一緒に―犬と作家のものがたり』を読むと、今まで読んだ小説の種明かしというか、「そうだったのか」ということにも出合えます。小説も大好きだけれど、エッセイ集も、こうした思わぬ発見があるから好きです。またいろんな分野の本をご紹介できたらいいな。

ではまた今度。さようなら。


いつも一緒に―犬と作家のものがたり (新潮文庫)
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Featured image from Kichigin / Shutterstock

読書犬「ぐり」はこれを読む!〜『デューク』挿絵も美しい大人の絵本 | the WOOF

by 菅原然子 皆さんいかがお過ごしですか? 読書犬・パグのぐりです。すっかり秋めいてきましたね。今回も、読書の秋!にぴったりな一冊をご紹介します。 『 デューク』(文・江國香織 画・山本容子)です。これは、江國さんの『 つめたいよるに 』(理論社)に所収された「デューク」をもとに、山本さんが素敵な銅版画をつけて文庫サイズで出版された本です。


 

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