読書犬「ぐり」はこれを読む!『近所の犬』〜たとえ自分で飼えなくても、犬が好きでたまらないあなたへ

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皆さんこんにちは!読書犬・パグのぐりです。お元気ですか?

表紙を見ただけでノックアウト!

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Featured image from Amazon.co.jp『近所の犬』

さて今日は、しょっぱな、表紙でノックアウトされてしまう本『近所の犬』(姫野カオルコ著 幻冬舎 2014年)をご紹介します。

ころころっとした柴犬の仔犬の口から「近所の犬」というタイトルが吐き出されているというかなんというか・・・。この装丁は、犬好きにはたまらないと思いますよ。僕の飼い主さん、この表紙からしばらく目が離せなくなっていましたから(笑)。

姫野カオルコさんは『昭和の犬』で直木賞を受賞された作家さんです。『昭和の犬』もタイトル通り、犬が出てくる小説でしたが、彼女は前書に、「前作『昭和の犬』は自伝的要素の強い小説、『近所の犬』は私小説である。(p.9)」と書いています。本作はおそらく、かなりノンフィクションも含まれたフィクションなのだと思います。

自分では犬を飼えない主人公

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あ、こんにちは © m-louis .® / Shutterstock

中年にさしかかっている女性小説家が主人公で、彼女の視点からのこの小説は描かれます。彼女は、無類の犬好きなのですが、自分は犬が飼えない家を借りているため、もっぱら近所で出会う犬たちを溺愛しています。

散歩で通りがかる犬たちにどう声掛けをするか。飼い主に、いかにさりげなく挨拶をして、犬を撫でてもよいか聞くか、など。この主人公、相当、かなり、というか、びっくりするほど、犬が好きなのだなということが随所から伝わってきます。

そして、僕たち犬を本当によく観察しているの。それは驚くほどに。登場犬の中に「マロン」という雑種犬がいるのですが、主人公にとってこのマロンはかわいい犬に類別されるそうです。なぜかわいいのか。いろいろ要素があるのですが、一つはその耳にあるといいます。マロンは垂れ耳なのですが、彼女曰く、

垂れ耳の犬は、なにかに注意したり興味を示したりするとき、耳の動きがわかりやすいので、表情が豊か――といっても、はなはだ人間が勝手に思い入れした見え方なのだが――なので惹かれる。

バセットハウンドやコッカ―スパニエルほど大きくベターッと垂れてしまっていると、この特徴は減るが、半分立って半分垂れているくらいの垂れ耳だと、この特性がよく出る。(p.143-144)

だそうです。すごーく詳しい描写ですよね。ここでも2種類の犬が比較対象として登場していますが、この本、ほかにもたくさんの犬種が登場しいます。犬好きの人が読むと「あ~なるほど、確かにそうかもね」と思える場面が頻出ですよ。

尋常ならざるハスキーへの愛

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あ、こんにちは! © winoxxxx / Shutterstock

物語は、1章につき1匹の犬、または猫が主人公(猫は1章のみ)。種類はウェルシュ・コーギー、洋犬雑種、ピレニアン・マンテン・ドッグ、スピッツ、三毛猫、ゴールデン・レトリバー&サバトラ白猫、雑種、シベリアン・ハスキー、ラブラドール・レトリバー。あれ?トイプードルは?チワワは出てこないの?と思われる方、出てきますよ、チョイ役で。ただ、この目次だけ見ても、この主人公の好きな犬種というのがなんとなくわかるかと・・・。

主人公というか、著者の犬への愛が炸裂するのが、ロボという名前のシベリアン・ハスキーを描いた章だと思います。

ロボはやはり主人公が近所で散歩中に出くわして知り合った犬。出会ったころはまだまだ子どもですが、その後再会したとき、ロボは成犬の大きさになっていました。再会の喜びを描写した場面がまた面白いのです。「あれはロボだ!」と気づいた主人公が小声で名前を呼ぶと、ロボはくるっとふりむきました。そして、

ロボは私に突撃してきた。がばっとジャンプして前肢を私の肩にかけて、抱きついてきた。
 ゴングン、ゴングン。これははげしくゆすられるしっぽがガードレールの金属を打って共鳴する音。(p.161)

ね、すごいと思いません? 特にしっぽの威力を表す、ガードレールが打たれたときの音。でもシベリアン・ハスキーの様子がよくあらわされていて、主人公のハスキーへの愛の大きさを感じる部分です。
ロボは、この章の後、違う犬の章をはさんでもう一度最後に登場します。それくらい主人公の愛は強い(笑)。終章はほろっとさせられますよ。


犬好きの著者が、犬好きの読者のために、犬愛をおしげもなく語った作品。犬が好きなあなたにはきっと大好きになってもらえる小説だと思います。


近所の犬
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