読書犬「ぐり」はこれを読む!『フランダースの犬』信じ合うこと、つながり合うこと〜ネロとパトラシエ

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こんにちは。読書犬・ぐりです。

今回ご紹介するのは、皆さんもよくご存じ『フランダースの犬』(ウィーダ著 村岡花子訳 新潮社 1954年)。とてもとても、悲しい物語です。僕も昔からストーリーはよく知っていたのですが、再読してみて、また思うところがありました。


あまりにも有名な悲しい物語

主人公はネロという男の子と、パトラシエ[1]という名の大型犬。この犬種はフランダース地方で昔から飼われていて[2]、主に人の労働の助けをしているようですが、パトラシエも最初の飼い主からはかなり過酷な労働を強いられて、辛い思いをしていました。この部分を読むと、僕たち犬にだって心はあるのに、って、悲しくなります。

貧しくても正直な人たち

でも、パトラシエはその心をしっかり受け留めてくれる新しい飼い主に出会います。ネロと、その祖父のダースです。彼らはとても貧しい暮らしをしているのですが、人や動物に思いを寄せ、正直に生きている人たちです。農家から牛乳を集めて運ぶ仕事をしていますが、命を救ってくれたお礼にと、パトラシエはその荷車を引く役割を自ら志願。「いいから」というネロたちの言葉には耳を貸さずに、この仕事を始めました。

ネロは絵が大好きです。描くのも、観るのも。
大聖堂に行っては、お金を払わなければ見ることのできない絵を、「今日は幕が誤っておりているのでは」と期待しながら見上げるのですが、そういうことは残念ながら起こりません。パトラシエもそんなネロの残念そうな様子を敏感に感じ取っていますが、どうすることもできないのでした。

ネロにはアロアという女の子の友だちがいました。街でも裕福な粉屋の娘で、父親のコゼツは、彼に気に入られようと、村中の人々がご機嫌取りをするような人。コゼツは貧しいネロがアロアと親しくしていることが気に入らず、彼らを引き離します。そんな中、ダース老人が亡くなり、ネロとパトラシエは住む家も追われ…。

翻訳ということを感じさせない名訳

クライマックスの悲しいシーンはあまりにも有名です。この物語はアニメーションにもなり、テレビで見た人も多いかと思います。僕の飼い主さんのお母さん(現在62歳!)も、新婚当時テレビでこのアニメを見て号泣したって言っていました。

僕もストーリーは何か子ども向けの本で読んで知っていたのですが、今回改めて、翻訳本でちゃんと読んでみました。いくつかの翻訳があるようですが、今回読んだ、村岡花子さんの訳は日本語がとても美しくて、翻訳しているけれど、それを感じさせない読みやすさがありました。犬の気持ちも、本当に上手に表現してくれています。最後の解説も村岡さんが書かれています。作者のことがよくわかる、名解説です。


「フランダースの犬」は、悲しい物語ではあるけれど、ネロとパトラシエの関係を見れば、人と犬はこんなにも分かり合える、素晴らしいパートナーシップを築けるということを再確認させてくれる物語でもあります。

そんなことも頭に置きながら、もうストーリーを知っている、という方にもぜひ再読していただきたい一冊。そしてストーリーを知らない、という方にはぜひぜひ、村岡さんの訳で読んでいただきたいな〜と思います。


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(1) ネロの忠実な友はパトラッシュの名で有名ですが、ここでは村岡花子さんの訳にあわせて「パトラシエ」と表記しています。
(2) ブービエ・デ・フランダース(Bouvier des Flandres)がこの犬種。藤田りか子著『最新 世界の犬種大図鑑: 原産国に受け継がれた420犬種の姿形』(2014)では「フランスのフランダース地方で家畜を追っていた犬が、この犬種だ」と紹介されています。アニメの「パトラッシュ」と大きく異なる外貌に驚く方も多いのかもしれませんね。

 

Featured image by Eric Isselee via shutterstock

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