広がる介助犬活躍の場〜小児歯科で働くのセラピードッグ(米国の事例)

お仕事ワンコ
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歯医者さんが苦手というお子さん、とても多いですよね。

痛いし怖い音がする歯科医院は、小さなお子さんにとっては恐怖そのもの。絶対に行きたくない場所の一つでしょう。

でも、そこに可愛いワンコスタッフがいたら?すごく行きたい場所になってしまうかもしれません。アメリカンケネルクラブ(AKC)のWebに、小児歯科でセラピードッグを導入した事例が紹介されていました。

※ トップの画像はイメージで記事の内容とは関係ありません。

小児歯科で働くセラピー・ドッグのフロッシー


Golden Pediatric Dentistry and Orthodontics Commerical #1 / YouTube

米バージニア州にあるゴールデン小児歯科矯正医院には、患者をリラックスさせるだけでなく、決して欠勤しないスタッフがいます。

「歯科セラピー・ドッグ」の職務に従事するフロッシー(3歳、雑種)がそのスタッフ。正式な職員として勤務しています。同僚のゴールデン医師(Dr. Alan Golden)は彼女について「とても楽しく、ただただ喜ばしい存在」だと語っています。勤務開始は2012年で、8週齢から地道にキャリアを重ねてきたそうです。

歯科医院の敷地面積は930平米(10000平方フィート)と、日本では考えられない広さを誇ります。普段は自由に施設内を駆け回っているフロッシーですが、ひとたび「仕事に戻りなさい」と声をかけられると、患者さんのケアに集中することができるのだとか。子供の膝の上で座ったり、一緒に遊んだりが得意のお仕事です。

米国におけるセラピー・ドッグ導入

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画像はキリリと働くセラピー・ドッグのイメージ © Arctic Warrior / Flickr

伴侶動物の存在は、医療診察を受ける子供のストレスを和らげ、生理学的覚醒(どきどきしたり呼吸が早くなること、physiological arousal)苦痛を抑える効果があると言われています[1]。これらの効果を期待して、欧米諸国の病院や介護施設、歯科医院など様々な医療等の現場では、セラピー・ドッグ導入がすすめられています。AKCによると、動物を使ったセラピーや、セラピー犬の導入が本格的に進んできたのは1980年代から。セラピードッグの団体が、教育ツールや保険契約にあたってのサポートなど、継続的に手を差し伸べ、導入しようとする人たちを支えてきたのだといいます。

環境が整うまで導入しなかったゴールデン医師

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はいしゃさん、こわいよね © Fly_dragonfly / Shutterstock

ゴールデン医師がセラピー・ドッグの導入を検討しはじめたのは、なんと1976年の開業時のことだといいます。ただ、そのときは広さが十分ではなく断念。それから36年が経過して、医院は拡大(施設だけで560平米(6000平方フィート)の広さ!)。ようやくセラピー・ドッグの導入の日を迎えることになりました。フロッシーの登場です。

フロッシ—は6ヶ月齢から訓練を開始。現在は、Alliance of Therapy Dogsという団体から許可を受けて働くプロのセラピー犬です。いまは余裕でなんでもこなすように見える彼女は、かなり厳しい訓練を乗り越えてきたようで、「絶対いうことを聞く」いつもの訓練士に加え、セラピー犬受験の際には特別な家庭教師ならぬ訓練士による指導も受けたのだとか。英才教育を受けた偉いコなんですね。

ニンゲンの側にも成長は必要なようです。ゴールデン医師は、犬との信頼関係が必要と強調します。「信頼関係を作り上げるため、犬にたくさんの時間を割く必要があります。フロッシーは私を、以前よりも親切で穏やかな人間にしました」

試験に合格して以来、フロッシーは医院に常勤の職員となりました。

犬が苦手な患者さんもいる〜それでも苦情はなし

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ベッドでゆったり待っている犬のイメージ © Cryber / Shutterstock

多くの患者さんは、フロッシーの存在を歓迎します。一方で、犬が怖いと思うお子さんや親御さん、アレルギーがある方ももちろんいます。

そんなときフロッシーは、ベッドがある小さなスペースでお休みをとるそうです。患者さん対応が叶わないときだけでなく、疲れたときやお昼寝のためにも、ここで一休みの時間をとるのだとか。アレルギーや喘息のお子さんが少なくない中、これまでに一度も問題が起きたことはないということです。

フロッシーは定期的な訓練を続けるなど、お仕事スキルのブラッシュアップに余念がないといいます。ただ、「テレビに向かって怒鳴り散らす」こともあるそうで、まだまだ訓練の必要はあるようです。


犬への行動制限が少ないという、最高の環境下で働くことができるフロッシーさん。犬が苦手(NG)な患者さんへの対応にも今のところの問題はないといいますから、かなり成功しているケースなのでしょう。

ただこれは、ゴールデン医師の情熱と長年にわたる準備があって得られた成功ですから、そう簡単に真似できる代物ではないとも思います。でもな〜。

歯医者さんでワンコがナデナデできたら、行くのが楽しみになっちゃうよね。

 

h/t to Pediatric Dentist Shares Therapy Dog Success Story |Canine Partner spotlight by AKC , 翻訳:鹿子


[1] Nagengast, S. L., Baun, M. M., Megel, M., & Leibowitz, J. M. (1997). The effects of the presence of a companion animal on physiological arousal and behavioral distress in children during a physical examination. Journal of Pediatric Nursing, 12(6), 323–330.

 
Featured image by Arctic Warrior via Flickr

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