元気にはしゃぎまわる犬にお鼻でツンツンされると、ヒヤッと冷たく濡れていることがわかります。寝ているときなどは乾きがちなこともありますが、だいたいの犬の鼻はヒンヤリと冷たく湿っているようです。
なぜ犬たちの鼻は濡れているのでしょうか?
なぜ濡れる?〜よりよく嗅ぐため、体温を保つため
・よりよく匂いを嗅ぐため
犬の鼻は湿っているときにより効率的に匂いをキャッチすることができます。
濡れていると空気上の匂い分子を閉じ込めることができるので、よりよく匂いを嗅ぐことができます。
また、濡れた鼻は匂いを選別するうえでも役に立っているようです。2008年に発表された研究によれば、湿っている犬の鼻はいくつかの匂い粒子の通過を妨げるそうです。匂い分子が受容体に到達する前に”事前選別”されることで、より効率的に匂い嗅ぎができるのではないかと考えられています[1]。
・体温調節をするため
もうひとつの考えられる理由には、湿った鼻が犬の体温調節に役立というからというものがあります。
私たちのように体のいたるところに汗腺を持っているわけではない犬たちは、体内温度を維持するために、鼻の湿らせ熱を蒸発させて身体を冷やすのです。犬は鼻を、肉球から出る汗やパンティングのような冷却機能として使っているんですね。
どうやって濡れる?〜分泌と舐めによって濡れる
犬の鼻の湿り気の正体は、唾液と粘液です[2]。
犬の鼻の内側には、鼻腔にある粘液を生成する特別な腺があります。ここで生成された粘液が唾液とまざることであのヒンヤリとした”犬の鼻”がつくられているのです。
犬は鼻をペロリと舐められる伸びると長い舌をもっています。多くの犬はみんな器用に鼻をペロリンチョしますが、短頭犬種(ブルドッグやパグのような鼻ぺちゃの犬)は鼻を舐めるのが容易ではないために、少し乾きがちだと言われます。
犬が鼻を舐めるのには、よりよく匂いを嗅ぐため、清潔さを保つため、自分の気持ちを落ち着かせようとするためなどの理由があります。鼻を湿らせることで匂い嗅ぎ機能をアップさせるほか、舌に香り粒子をつけて口の中の鋤鼻器に運ぶことで、より効率的に匂いを嗅ぐことができるのです。
自分で湿らせる以外に、犬の鼻は”仕事”によっても濡れることがあります。湿った草むらや水たまりに鼻を突っ込んだすることで、さまざまな場所で鼻を濡らします。
乾いた鼻の犬は不健康?
かつてはよく「濡れて湿った鼻は、犬の健康のバロメーター」と言われましたが、これは単なる迷信です。鼻の温度と湿り気は、全体的な健康状態の良い指標にはなりません。
健康な犬でも寝ているとき、寝起き時、脱水を伴うような激しい運動のあとには鼻の温度が上がり乾くこともあります。
シニアになると健康でも乾きがちになります。逆に病気の犬の鼻は湿り気が多いこともあります。鼻が乾燥しているからといって、必ずしも健康問題が発生していることにはなりません。
乾燥した鼻が他の病気の徴候、例えば、元気がないとか食欲不振などを伴う場合は、少し心配した方が良いかもしれません。鼻の周りの皮膚が赤くなる、鼻のひび割れ、出血、マズルや鼻の周りのシコリや隆起、痛みを感じている様子がみられる場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
過度に濡れた鼻の犬は病気?
犬も寒さなどの刺激により鼻水をタラリとすることがありますので、少しくらい鼻水が出ていても心配しすぎる必要はないでしょう。しかし、量が多すぎる場合、粘度の高い場合や色がおかしい場合には、呼吸器感染症または鼻腔内の異物などの恐れもあります。これも出来るだけ早めに獣医師に相談した方が良いでしょう。
◼︎以下の資料を参考に執筆しました。
[1] Dogs’ amazing sense of smell down to a wet nose | New Scientist
[2] Why Do Dogs Have Wet Noses? | petMD
[3] Why Do Dogs Have Wet Noses? | VCA Animal Hospital
Featured image creditbimka/ shutterstock