犬は人間と異なる方法で言葉を学ぶ〜「オヤツ」も「ボール」もわかってるわんわんお!
この記事をシェアする |
「おさんぽ」「オヤツ」「ベッド」「とってこい」などなど。
ワンコと生活していると、「人間の言葉、よくわかってんな〜(好きなものは特に)」と思うこと、たくさんありますよね。
イヌだってヒトの言葉を聞き分けているんだよ
イヌは人の話す言葉を識別する能力をもっている[1]といわれ、訓練を受けたイヌなら人の話から単語を聞き分けることもできるといいます。ただし、イヌがその言葉の意味をわかっているのかといえば恐らくそうではなく、「特定の音に特定の行為を結合させ[2]」ているものと考えられています。
ところで人間は、どのように言葉とモノを関連づけて覚えていくのでしょうか。
2歳から3歳の人間の子供はモノと言葉を、大きさや感触ではなく、その形と関連付けて覚えていくそうです[3]。例えば、「ボール」が何かを知っている幼児に、似た形、大きさ、感触の別の物を見せると、幼児は、大きさや感触の似た物ではなく、形の似た物を「ボール」と認識することがわかっています。
一方、ワンコさんはといえば、言葉とモノのカテゴリー(例えば「おもちゃ」のような区分)を関連付けることは、どうやらできているらしいのです。でも、「どうやって関連づけるのか?」というところは、わかっていませんでした。
彼らは、人間と同じように「形」でモノと言葉を関連づけているのでしょうか!?
イヌは大きさと感触でモノと言葉を関連づけるらしい
これをテストしてみたよ!というのが、Emile van der Zee、Helen Zulch、そしてDaniel Millsの3氏による実験です(2012年に論文発表[4]。研究者たちは5歳のボーダーコリー「ゲーブル」に似通ったモノを与え、それらに対する行動を観察することで、人間にみられる「カタチによるバイアス(shape bias)」が犬にもみられるのかを調べました。短期間の訓練を終えたのち、ゲーブルは物の大きさと言葉(=名前)を結びつけて覚えていき、他の物でも同じような大きさの物は同じ名前と認識するようになりました。
さらに長い期間の訓練を終えた後には、ゲーブルはモノの感触と名前を結び付けるようになったそうです。でも、「形」と名前を結びつけることは出来ませんでした。
この実験により研究者たちは、「ワンコさんたち(もしかしたらゲーブルだけかもしれないけど)は、人間とは異なった方法で言葉を処理し、物と関連付けているのかもしれない」という問題を提示しています。さらに、「(ヒトとイヌとが異なった方法をとるのは)進化過程の違いが形、感触、大きさの認知を方向付けことによるのではないか」と述べています[3]。
ワンコさんに「新聞とってきて」と言ったときのことを考えてみてください。玄関から靴ではなく「新聞」を持ってきてくれるデキるコは、新聞がなんであるかをわかっているのでしょう。でも、わたしたちが思い浮かべる「新聞=紙でできていてこんな形をしているアレ」とワンコさんが知覚している「シンブン」は、異なるのかもしれません。このくらいの大きさの、噛むとくにゃっとするもの、というふうに思い浮かべているのでしょうか。
言葉によるコミュニケーションをするときに、「うちのコ、どんなことを思い浮かべてんのかな〜」なんて考えてみると面白いですよね。新しいオモチャを買うとき、感触を確かめてみるのも良いのかもしれません。ワンコたちとしっかりコミュニケーションできているような気がしますよね!
翻訳協力:coro
[1] アダム・ミクロシ(2014)『イヌの動物行動学: 行動、進化、認知』東海大学出版部
[2] スティーブン・ブディアンスキー(2004)『犬の科学―ほんとうの性格・行動・歴史を知る』築地出版
[3] Call that a ball? Dogs learn to associate words with objects differently than humans do — ScienceDaily
[4] van der Zee E, Zulch H, Mills D (2012) Word Generalization by a Dog (Canis familiaris): Is Shape Important? PLoS ONE 7(11): e49382. doi:10.1371/journal.pone.0049382
Featured image by oneinchpunch via shutterstock